アルツハイマー病の予防について(1)

アルツハイマー病の元になるβ-タンパク
(NHKテレビ「試してガッテン」より引用させて頂きました)

私が親戚のKさんのアルツハイマー症状に気付いたのはKさんが73歳の時の3年前でした。たまたま、その時、Kさん宅でお互いに家族ぐるみで食事をしていた時のことでした。Kさんと隣り合わせになりましたので、日頃の無沙汰を詫びるつもりで声を掛けたのですが全く返事が返って来ないのです。

お互いに気まずくなるような事情は全く有りませんでしたから、何か心配ごとでも有って返事をする気になれなかったのではと思い、更に声を掛けるのを控え、結局その後も一言も声を交わすことなくKさん宅を去りました。去る時、それまではKさん夫妻が玄関まで見送りに来られて別れの挨拶を交わしていたのですが、その日は奥さんだけが玄関に来られ、Kさんは来られませんでした。

それから、間もなくしてKさんがアルツハイマー病に罹っていることを知り、あの日のKさんの不可解な行動を理解できました。Kさんは温厚で優しい方ですが、控えめで無口な方でした。同席している時など、こちらから声を掛けないと話題が途切れて沈黙が続くことが多いので、共通の話題作りに苦慮することが常でした。

現在は、息子さんに家業を譲って引退し、悠々自適の生活を送っておられるのですが、息子さんにそれとなく聞いたところ、既に5年ほど前からアルツハイマーの兆しが現われて年々その症状が顕在化し、周囲に迷惑を掛ける恐れが出てきたことから、3年前から家の中で保護する状態にして人前には出さないようにしているとのことでした。

まだ、家族で介護できる病状ですが、いずれ症状が重くなると入所、入院等を考えざるを得なくなるとのことでした。周りにこのような方が居られることから、私も周囲から心配されることが多くなり、日本唯一のアルツハイマー病の治療薬として話題を呼んでいる、アリセプト錠を薦められる有様です。物忘れしたり、緩慢な動作をするたびに女房殿から注意を受けることが多くなり、アルツハイマーへの関心は高まるばかりでした。

そんな折の今晩、NHKテレビの「試してガッテン」で、「予防効果8倍 アルツハイマー病制圧3原則」と題してアルツハイマー病の予防のしかたを解説するとのことでしたので、録画スタンバイで視聴しました。その内容は、これまでおぼろげながらもアルツハイマー病の予防に効果有るのではとの私の考えが科学的に実証されたことになり私としては大満足でした。そこで、防備録にすべく、この内容を以下に整理しておきたいと思います。

アルツハイマー病の患者の脳を顕微鏡で観察したのが上の画像で、NHKのサイトから引用させて頂きました。この画像の中に茶色いシミのようなものが2ケ所観られます。これは「アミロイドβ(ベータ)タンパク」という物質が溜まったもので、脳の神経細胞が作るいわば「ゴミ」のようなもので、この増加がアルツハイマー病の主な原因になるとの説が世界中の学会で主流となっており、治療薬の開発もこの説に基づいて行われています。

通常は、このβタンパクは脳の中にある酵素によって分解されて掃除されますが、ある要因でこの酵素が減少すると、分解・掃除されないまま脳の中に蓄積され脳細胞を壊死させることでアルツハイマーが発症されるとされております。その最大の要因が加齢であることから高齢になるとアルツハイマー病が多くなると言われております。

蓄積されたβタンパクによって脳が壊死しますが、脳には、βタンパクによる影響を受けやすい場所と、受けにくい場所があると考えられ、影響を受けやすい場所が記憶を司る海馬(かいば)の周辺です。そのため、アルツハイマー病の最初の症状として、まず記憶障害が起きることが多いと言われております。その後、影響は脳の後ろ側に広がっていきます。ここは、「見たものが何であるか」を分析するなどの働きがあるため、そうした働きが衰えていき、症状が顕在化します。

その一方で、「行動の決定」や「会話」などを主に担当する脳の前の部分は、病気がある程度進行するまでβタンパクの影響を受けにくい傾向があります。そのため、「会話では異常を感じない」にもかかわらず、「普段なら見間違えるはずのないものを見間違えてしまう」などということが起きると言われております。

この番組を視聴して、ほっとしましたのは、βタンパクが脳に蓄積されはじめてからこのような症状が顕在化するまで、およそ20年かかると考えられるとの説明が有ったことでした。つまり、執行猶予期間が与えられることです。この期間中に、この番組の本題である三つの予防策を講ずれば執行猶予期間が延びてアルツハイマーの症状の顕在化を遅らすことができるはずです。(明日の日記に続く)
アルツハイマー病の予防について(2)

健常者とアルツハイマー患者の脳のMRI比較画像
入間ハート病院のサイトから引用させて頂きました)

テレビでは、83歳のBさんの事例が紹介されました。Bさんは3年前に受けた脳の検査で異常が見つかりました。脳の中をMRI検査 等によって画像診断をしたところ、Bさんの事例ではありませんが、例えば上の患者さんの画像に見られるように、同年代の健常者に比べて脳全体の萎縮(黒い部分)、特に丸の中の海馬の部分がが大幅に縮んでいることが判り、専門家ににより「明らかにアルツハイマー病の疑いがある」と診断されました。

ところが、本人の日常生活に問題ないばかりか、病院で記憶力などを調べるテストを受けた結果は満点だったのです。実は最近、脳の写真を見るとアルツハイマー病が強く疑われるのに、全く問題なく暮している人がたくさん見つかっているのです。Bさんに症状が出ていない理由は明確ではないとのことですが、この番組の本題の3つの予防術を全て守っていたことが判ったそうです。従ってこの番組では、このことが発病を食い止めている可能性があると結論しておりました。私も「ガッテン」しました。その3つの予防術は下記の3項です。

予防術1:3倍なりにくくする予防術「有酸素運動をする
予防術2:8倍なりにくくする予防術「話し相手を持つ
予防術3:6倍なりにくくする予防術「生活習慣病にならない食生活

番組では、有酸素運動がアルツハイマー病を予防する効果があることを、アメリカで3年前に行われたマウスの実験で運動しやすい環境に置かれたマウスにはβタンパクがたまりにくいことが判明したことと、欧州で3年前に1449人のモニターを20年にわたって追跡した結果、適度な運動をしている人は、していない人よりも、アルツハイマー病の危険度がおよそ3分の1になっていることが判明したことから説明しておりました。尚、予防効果が見られたのは、1回20分以上の、ちょっと汗ばむ程度の運動だそうです。

専門家によると、会話が減るとアルツハイマー病が進行してしまうことがあるとのことです。そこで、会話をしているときの脳を調べると、とても活性化していることが判ったとのことでした。 8年前にヨーロッパで発表された研究によると、1203人を3年間追跡した結果、家族や友達が多く社会的接触が多い人に比べ、乏しい人は認知症の発症率がおよそ8倍だったことを番組では紹介しておりました。

番組では、ヨーロッパで3年前に発表された、1449人を20年に渡って追跡した研究で、以下の項目があるとアルツハイマー病を中心とした認知症の危険度が増すことが判明したことを紹介しておりました。

・高血圧        危険度1.97倍
・高コレステロール  危険度1.89倍
・肥満          危険度2.09倍
・上の3つ全て      危険度6.21倍

番組で専門家の方が次のように解説されておりました。

「βタンパクがたまり始める時期には個人差があり、40代で20人に1人程度、50代で20人に3人程度、70代で半分程度の人にたまり始めると考えられています。しかしβタンパクがたまっても、今回番組で紹介した予防の3原則「有酸素運動」「話し相手」「生活習慣病にならない食生活」を守っていれば、発病するまでの期間をぐっと遅らせることができるらしいことがわかってきました。アルツハイマー病にならないようにすることは可能なのです。」 以上の三つのアルツハイマー予防策は、何もアルツハイマーだけでなく、こころとからだの健康にも大変役立つと考えられますので、私も直ぐにでも実行したいと思います。大変有意義な番組でした。ところで、私は物忘れが酷いので、家族からアルツハイマーの兆候が見られると言われのですが、次の自論を展開して私の物忘れは良性健忘症であると反発しております。これは絶対に正しいと私は信じております。第一、真にアルツハイマーに罹っていたら、いろいろと記憶を呼びこして編集するこのような日記を毎日更新できるでしょうか。

同じ物忘れでも、良性健忘症は出来事の一部を忘れるのに対し、アルツハイマー病は出来事の全てを忘れてしまう点で異なります。例えば,良性健忘症では昨晩何を食べたかを忘れることはあるが、ヒントを与えられると思い出すことが出来ます。一方、アルツハイマー病では朝食を食べたかどうかもすっかり忘れてしまっていて、ヒントを与えられても思い出せません。私はヒントさえ与えられれば3日前の夕食でも思い出すことができます。従って私はアルツハイマー病に罹っておりません。


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