アルツハイマーの予防について(3)

アルツハイマー治療薬「アリセプト」発明者の杉本京大客員教授
(同教授のHPから引用させて頂きました)

一昨日放映された「試してガッテン」で、脳内にゴミのように蓄積された老人斑のβアミロイドタンパクという物質が脳内の正常な神経細胞を破壊することにより脳が萎縮してアルツハイマーを発症するとの学説を取り上げておりました。そして、ある酵素がこのβアミロイドタンパクを分解することによりβアミロイドタンパクの蓄積が抑制されるため、アルツハイマーの発症が抑えられますが、ある要因によりこの酵素が減少することによりβアミロイドタンパクの蓄積を抑制出来ず、その結果アルツハイマーが発症するとしておりました。

そのある要因のひとつが加齢であることから、人間は基本的にはアルツハイマーから逃れることは出来ませんが、幸いなことにβアミロイドタンパクの蓄積がアルツハイマーを発症させるのに20年以上を要するので、この20年の言わば執行猶予期間の間に発症を遅らすことが出来れば、執行、つまり発症する前に死期を迎えることで、アルツハイマーにならずに生涯を終えること出来るとのことでした。そして、その遅らす方法が、有酸素運動して、対話して、生活習慣病に罹らないようにすることでした。

不幸にして発症してしまったら、残念ながら発症を止める方策はまだ確立されていないとのことです。ただ、1970年代の後半、アルツハイマー病の記憶障害や見当識障害は神経伝達物質のアセチルコリンの減少によるとのコリン仮説が脚光を浴びるようになってから、アセチルコリンを増やせば発症を止めることは出来ないまでも進行を遅らせることが出来るのではとの考えが芽生えました。

この考えに着目したのが、高卒でエーザイに入社した異色の研究者の杉本八郎氏(現京都大学・大学院薬学研究科客員教授)でした。彼はエーザイ入社後、中央大理工学部夜間部に入学・卒業したり、筑波で研究活動したり、労組活動したり、人事課で採用業務を担当したりするなど変わった経歴を経ながら、苦節20年、開発費200億円を使って、アセチルコリンを分解する酵素のアセチルコリンエステラーゼのアセチルコリン分解機能を阻害する物質、塩酸ドネペジルの合成に成功し1989年に臨床試験にこぎつけ、1999年にエーザイから「アリセプト」の商品名で発売され、現在に至っております。

アルツハイマー治療薬としては日本で唯一の薬で、世界91カ国で承認され、昨年度実績で全世界で約3,000億円の売り上げを達成し同社の主力製品となております。錠剤として発売されており、3mg、5mgが主体でしたが、その薬効が高度に認められて最近では10mgまで投与できるようになりました。ただ、アリセプト10mg錠で792.7(円/錠)と庶民には高価(但し、保健薬として認定されているので負担は軽減される)であること、対症療法の対象薬のため発症を止めることは出来ないこと、効果が軽症にのみ有効で重症には向かないことなどが難点のようです。

後年、杉本八郎氏は、30代を迎えて研究員として会社から認められるようになった時、9人兄弟の8番目だったことから八郎と名づけられたことからも判るように苦労を掛けた母親が病に倒れたので見舞いに行った時、「あんたさん・・・だれですか?」「お母さん、息子の八郎ですよ」「八郎?・・・私にも八郎っていう息子がいるんですよ」この時、流した無念の涙が世界的大発明へに繋がったと言っていいと思います。

杉本八郎氏が凄いのは、平成15年3月31日、エーザイ株式会社を定年退職した翌日から、同氏の偉大な功績を記念して京都大学大学院薬学研究科に創設されたエーザイによる寄附講座創薬神経科学講座の客員教授として赴任し、エーザイ入社時に誓った三つ目の新薬の開発を目指していることです。アリセプトは対症療法の薬ですからアルツハイマーを根本的に治すことは出来ません。

アルツハイマーを根本的に治す原因療法は、βアミロイドタンパクの蓄積を抑制することにあります。杉本八郎氏は京都大学で、創薬神経科学講座を担当しながら、三つ目の新薬として、このアルツハイマー原因療法の薬の研究・開発を行なっております。もし、成功すれば、既に受賞済みの薬学のノーベル賞と言われる英国ガリアン賞特別賞の上をいくノーベル化学賞受賞は間違いないでしょう。私のアルツハイマーの発症に間に合うことをこころから願っております。

アルツハイマー病の予防について(4)



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