ビール四方山ばなし(3)
(飲み方)

また昨日の話しの続きになりますが、ビールの注ぎ方を教えて頂いたついでに、飲み方を教えて頂きました。その方はそのビール会社でも有名な酒豪で通っている方だけあって、ビールの飲み方は実に見事でした。豪快と言うよりも華麗と言った感じでした。グラスの持ち方、顔の傾け方、飲み干した後の顔の表情、手つき・・・・いわゆる一気の飲みではなく、静かに、爽やかに、楽しそうに、そしてこれが一番大切なことですが美味しそうな飲み方なのです。

彼によると、その秘訣は舌の上で飲むこととのことでした。上唇で泡を止めて舌の上にビールを流し込むのだそうですが、これが意外に難しいのです。この飲み方ですと舌を下あごに付けていないとビールがが口からこぼれてしまいますので一気に飲まざるを得ないのです。従って、私のようにそれほどお酒に強くない者には飲み辛い飲み方に思われましたので、そのように言ってみたところ、それなら一気に飲める分だけ飲めばいいのでは、と言われました。

30年以上も前のことでしたが、札幌市内のとある有名な料亭での宴席でのことでした。若くて綺麗な芸者さんがビールをグラスに注いでくれました。半分ぐらい飲んでグラスをテーブルに置いた私に、「お客様、ビールは飲み干して下さいね。もし飲み干せないようでしたら、こちらのグラスをお使い下さい。」と言って小さなグラスを差し出してくれました。お客に注文をつけるとは何事かと思って無言でいると、札幌在住の方が「札幌はビールどころなので、こういうところではビールの飲み方にも作法のようなもの有りまして・・・・」と言われたなるほどと思ったことが有りました。

飲み残しのビールは既に酸化が始まり、温度も上がっており、炭酸ガスも抜けているので味が落ちておりますので、ここに美味しいフレッシュなビールを注ぎ足すと味の落ちた飲み残しのビールが混じってしまい、注ぎ足したビールまで味が落ちてしまいますので、飲み残しや注ぎ足しはビールを美味しく頂くためにはしてはいけない行為と言えます。ただ、日本の宴席ではビールは、美味しく飲むと言うよりも、歓談の間をつなぎながら酔いがまわっていくのを楽しむために飲む傾向が有りますので、あまり気にしないようです。

  ビールは高温に曝されるとホップの苦味だけが強調され、うまみや、まろやかさに欠ける味になり、いわゆる、老化現象を起こしてしまいますので、夏場は必要な量だけを購入して冷蔵庫で保存し、冷蔵庫以外のところで保存する場合は家の中でも出来るだけ室温の低いところを選ぶ必要が有ります。

また冷蔵庫せ保存する場合でも、冷凍室に入れて凍らせるのは瓶の破損を招くだけでなく、寒冷混濁という濁りが生じ、味が変わってしまいますので厳禁行為で、6〜8度程度が適温とされております。ビールに振動や衝撃を与えると、ビールの中に溶け込んでいる炭酸ガスが気化して「噴き」という現象を起こしてして風味が落ちてしまいます。

従って、冷蔵庫のドア側のポケットには入れたり、王冠を栓抜きで叩いたりすることも厳禁行為です。また、海水浴場の店先でビール瓶を日光の当たるところに置いてあるのを見かけますがこれも厳禁行為です。日光にに曝されると苦味成分(イソフムロン等)が分解され、独特の香りと共に日光臭のするビールになってしまうからです。

ビールは食前酒としてもいいのですが、やはり喉ごしの爽快感を味あうのが本来の目的と思いますので、私のようにスナックなどで注ぎ足しされながら、鈍ったビールを飲むのは邪道そのものですが、ウイスキーを水で割るよりはまだましだと割り切っております。そんな私にはビールを論ずる資格はないかもしれません。


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