2004年度・中日優勝特集(5)
(中日、一安打で勝利)

今晩のナゴヤドームでの中日、阪神戦は野球の勝負は必ずしもデータだけではないことを物語るいい例だったと思います。阪神の下柳投手は8回まで投げて許したヒットは荒木の二塁打、一本のみに対して阪神は9回までに7本のヒットを放ち、4個の四死球を得ておりますから、データからみる限り、阪神が圧倒的に有利で、僅差ながらシャットアウト勝ちするのが当然の成り行きでした。

ところが、この試合9回裏に中日はノーヒットで1点取ってサヨナラ勝ちしたのです。その勝機は、4番、福留のバントにありました。この回、先頭打者の井端が四球で出た後、立浪が右飛に倒れての一死一塁の場面、当然4番福留に長打を期待するところです。ところが、こともあろうに、その福留は投手前にバントしたのです。慌てたウイリアムス投手は一塁に暴投してしまい、一死、二、三塁のピンチを自らのミスで作ってしまいました。

次は5番、アレックスですから当然、そのまま打席に入るものとばかり思っていたところ、何と代打、大西ときました。これまた驚きです。大西はこのところ、いい場面で代打で起用されるのですが期待に応えておりませんでしたが、アレックスはこの試合こそ振れておりませんでしたが、このところ3割をキープして本塁打も福留に次ぐ10本を記録するなど、安定した成績を残しておりますので、ここで代えられることはまず有り得ないことでした。

そして、その不安は的中して、大西は簡単にツーストライクノーボールと追い込まれてしまいました。 もう打つしかありません。そして、次の瞬間大西は何と高々と手を上げて一塁に駆け込んでいきました。平凡なライトフライですから必ずしも犠牲フライになるとも限りませんが、大西が三塁走者、井端の足を信じていたのでしょうか、井端は本塁に滑り込みましたが、大西の目算どおり悠々セーフでした。外野手の大西は打った瞬間にこの場面を見抜いて手を挙げたのだと思います。

中日の勝機は、先発のバルガス、中継ぎの遠藤、岡本の好投も見逃せませんが、やはり福留の好判断と落合監督の代打策の2点に絞られると思います。福留の打席の場面では、阪神・守備陣は福留の長打を警戒して一、三塁手は塁を詰めて近くに守っておりました。つまり、中日側からみればバントし易い守備体系でした。そこを福留は見抜いて、投手ウイリアムスに取らせるようにバントしました。これが奏功してウイリアムスのエラーを誘うことになりました。

そして、落合監督がアレックスに代えて大西を代打に出したのが凄い判断だと思います。投手は左の横手投げのウイリアムスですから、大西もアレックスも右打者ですから条件は同じですが、落合監督は横手からくり出されるウイリアムスのスライダーにアレックスは対応しきれないと判断したのだと思います。こうして、巨人のように派手なホームランではなく、意表をつく心理作戦で勝つのも野球の醍醐味かもしれません。


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