エジプト古代史を変えた男性たち(1)
(古代エジプト王国の開祖・ナルメル王)

カイロ博物館所蔵ナルメル王のパレット(表面)カイロ博物館所蔵ナルメル王のパレット(裏面)

昨年暮れにエジプト旅行を終えての感想として、「エジプト古代史を彩る5人の女性たち」を5回に渡って掲載しましたが、今度は私の目からみて、エジプト古代史を変えるほどの影響力を発揮したファラオ(国王)を10人選んで上記のタイトルで10回に渡って掲載していきたいと思います。 古代エジプト王国は31代に渡る王朝にグレコローマン王朝を加えると3100年間もの長きに渡り、その間に異民族のヒクソス、リビア、ヌビア、アッシリア、ペルシアの一時的な支配を受けながらも300人以上のファラオが在位しました。このように2000年Kら5100年以上も前のことなのに、これだけ王名や在位期間などが判るようになったのは次の三つの理由によります。

1.ヒエログリフの象形文字で書かれた王名表の存在(マネトーなど)
2.ヒエログリフの解読(ロゼッタストーンの偶然の発見により)
3.ヒエログリフでカルトーシュ(楕円形の枠)に王名記載の慣習

そうしたファラオの中から歴史を動かしたかあるいはその節目に在位した10人のファラオを私の独断で選びリストアップしてみました。今日は、その第一回としてナルメル王を取り上げます。


ファラオ名王 朝 名在位(BC)歴史を変えた理由
ナルメル第1王朝3100年頃 エジプト王朝の開祖
ク   フ第4王朝2589-2566 ピラミッド絶頂期を築く
メンチュヘテプ2世第11王朝2060-2010 上下エジプトをはじめて統一
イアフメス1世第18王朝1550-1525 異民族追放し王国再統一
ホルエムホプ第18王朝 1323-1295異例の継承・譲位で王朝終焉
ラメセス2世第19王朝1279-1213 古代エジプト中興の祖
カンビュセス2世第27王朝525-522 ペルシャ王としてエジプト初征服
ネクタネボ2世第30王朝360-343 エジプト人として最後のファラオ
プトレマイオス1世グレコロ-マン305-285 グレコロ-マン王朝の始祖
プトレマイオス12世グレコロ-マン51- 30 王国を破滅の遠因を作った


最近、日本の高校教科書に、エジプト王国を初めて統一したファラオとしてナルメルの名前が掲載されるようになりましたが、この人物にはまだ判らないことが多くエジプト王朝の開祖とする決定的な証拠はまだ無いようです。プトレマイオス朝時代にのマネトーという神官が書いた「エジプト史」をはじめ、アビドスの王名表などで、初代王はメネス王としておりますし、最近はその200年も前に統一されていたとの新説も出ているのとナルメル王の肖像画や彫像が発見されていないのがその理由です。

エジプト考古学博物館(1F)にある「ナルメル王の勝利のパレット」(上の画像)が唯一ナルメル王の存在と上下エジプトの統一を裏付ける証拠と考えられております。このパレットは、ヒエラコンポリスのホルス神殿の発掘調査中に発見された奉納品のひとつで、孔雀石と言う日本画にも使われる柔らかい緑色の石で作られた奉納用化粧版で、その表面には上エジプトの王であるナルメル王が敵の下エジプトの象徴である赤冠を被って敵の死体検分に出かける場面が描かれており、裏面にはナルメル王が上エジプト王の象徴である白冠を被って敵の首長を打ちすえる場面が描かれております。このように上下エジプトを統一したことを二重冠が被ることでアピールしているものと考えられます。

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