藤枝東高物語(31)
(37年ぶりの優勝成らず (2008年1月14日の日記から)
藤枝東高物語(32)
(国立観戦記余話 (2008年1月15日の日記から)


藤枝東のシンボルカラー藤色に染まった国立競技場のスタンド

この日、国立競技場は満員札止めとなり、高校サッカーの歴史上初の48,000人を越える大観衆で埋め尽くされたたスタンドの聖火台の左側は藤色に染まり、試合前の応援団のエールの交換の後、競技場に「あゝ東海の 空遠く・・・♪」の母校の校歌が響き渡った時は目頭が熱くなる思いがしました。そして2時過ぎに試合が始まりました。試合は前半こそ1:0で終わりましたが、後半になってから驚くようなシーンが展開されていきました。

あれが高校生のサッカーか、と感嘆させられるほどに流経大柏の選手たちの動きは素晴らしく、殆どワントラップでボールをコントロールして素早く出すパスが正確で玉足が速いため流れるように繋がっていくパスワークで決定的なチャンスを作っていたのに対し、藤枝東の選手はトラップしてからパスを出すのに一呼吸置くため、柏のDFに直ぐに寄られシュートチャンスを封じられ藤枝東としては殆ど決定的なチャンスを作れませんでした。

藤枝東は、過去3回流経大柏と戦って3連敗しているだけに、相手の攻め方は心得ていたはずでした。素早いプレスをかけてくることを予想し、これを得意のサイドを使ったパスワークでかわす戦略にでたのですが、これが逆に裏目に出てしまった感が有りました。流経大柏のプレスによって藤枝東パスコースが封じられ、苦し紛れに出すパスは読まれてカットされてボールを奪われ、自陣に攻め込まれると、藤枝東より速くて正確なパスワークで決定的なチャンスを作られ失点を重ね、4:0という大差で流経大柏が圧勝しました。

この試合、目だった選手はやはり流経大柏の大前君でした。166センチ 64キロという小柄な体格ながらスピードあるドリブル、天性のポジショニング、確度の高いシュート等、FWに必要な能力を全て持ち合わせており、 通算7得点で、インターハイ、全日本ユースに続けて得点王に輝いたのは納得できます。特に、この試合後半3分にこの試合を決めた角度の無い位置から決めた2点目のゴールは実に見事でした。(下の画像)


大前君は、既に清水エスパルスへの入団が決まっており、明日静岡市で入団記者会見が行なわれることになっております。静岡の高校を破って日本一になって、静岡のチームに入団して日本一を狙うのも何かの因縁です。同じ、背番号10番で得点王を争った藤枝東の河井君も、大前君と同様に体格に恵まれていないのに、攻撃的MFとして見事でした。私は在学中に数学を河井先生に教えて頂きましたが東京教育大(現筑波大)出身のとても優秀な先生でした。河井君は推薦で慶応大法学部に入学が決まっているとのことですが、やはり河井先生の血筋を受け継いでいるだけのことは有ります。その河井君と大前君が試合終了直後に声を掛け合うシーンが有りました。敗戦のショックでピッチに倒れこんだFWの松田君を大前君が助け起こしながら河井君に声を掛けているところでした。


試合終了後は準優勝祝賀会と広域同窓会を兼ねて都内各所で打ち上げ会が行なわれたようです。こうして昼は国立に集い、夜は祝杯を重ねつつ卒業以来の再会を喜び合うことが出来たのも、後輩の選手たちの準優勝という素晴らしいプレゼントの賜物と思い、ここに選手諸君の健闘を讃え、こころから感謝します。我々も首都圏在住者を中心に15名ほどが新宿の高層ビル49階のレストランに集合し半世紀ぶりの再会を喜び合い夜の過ぎるのも忘れて痛飲し、私一人だけ新幹線終電に遅れ、都内のホテルに宿泊する羽目になりました。これもまた楽しからずや。

当日の国立競技場(手前に見える高層ビルはドコモタワー)

昨日の日記にありますように、昨日は母校の37年ぶりの優勝そして11年ぶりの国立での決勝戦進出に合わせて、久しぶりに上京し首都圏在住の同窓生たちとその感動を昼は霞ヶ丘で、夜は西新宿の高層ビルの一角で分かち合ってきました。西新宿は私が東京の商社に在職中、会社の帰りに甲州街道沿いに軒を連ねていた屋台に友人たちとよく寄った思い出もあって懐かしかったのですが、その面影は全く無く東京都庁、新宿住友ビルなどの超高層ビルがが林立している風景に世の移り変わりの激しさを感じました。

母校のある静岡県から離れていった同窓生たちは、離れて行った先々の地区ごとで同窓会を開くことはあっても地区を横断して開くことは有りませんでした。しかし、今回の母校の快挙に感動して、遠くは大阪、仙台から応援観戦に駆けつけた同窓生たちが多く見られました。今回は事前にメールでお互いに連絡しあって15名ほどの同級生を中心にほぼ同じ年代の同窓生たちが国立競技場のに集結して纏まって観戦しました。

ひとつ残念なことが有りました。試合開始前の午後1時頃、JR千駄ヶ谷駅に着いて、その人の多さに驚きました。駅から国立競技場への道は人波で思うように歩けません。それでも、入場券を持っていなかった一人の同窓生は入場券が売り切れてしまうことを恐れて人波をかき分けて正面ゲートに急ぎました。約20分かけて漸く正面ゲートに着いたらマイクで「只今、入場券は全て完売しました・・・・。」と告げられて愕然としました。

実は、1月6日の準決勝戦では空席の方が多かったことから当日券で入場可能との情報連絡が有りましたので、私もそのつもりでいたとろ、ある同級生から完売の恐れが有るので前売り券を購入しておいた方が無難との情報が有り、数日前にセブンイレブンで購入しておりました。殆どの同級生たちもその情報によって前売り券を購入しておりましたので無事入場できました。しかし、購入してなかった二人の同級生のうち一人は、たまたま居合わせた、母校後輩でバルセロナ五輪の日本代表監督で昨年殿堂入りした山口芳忠さんから入場券を譲ってもらい入場できたのですが、千葉から来た同窓生は断念して自宅でテレビ観戦したのでした。

困ったことがひとつ有りました。JR千駄ヶ谷駅から新宿まで行こうと思い、乗車券を買おうとしたら、何と全ての窓口に20メートル近い行列が出来ているのです。首都圏在住の同窓生たちは全員、地下鉄、私鉄、バス、JRの全ての交通機関を1枚のカードで乗り継げるPASMOカードを持っているので自動改札にカードを差し込めばいいのですが、私と大阪からきたA君は持っておりませんので、20分間並んで買わざるを得なくなったからです。

同窓会は、新宿住友ビル49Fの「どんと」で開かれ、私としては卒業以来の旧交を温めることができました。中には元日本代表の経験を持つN君をはじめサッカーに詳しい同窓生が数人おりましたので、準優勝の祝賀会ではありましたが、彼等を中心にその敗因を分析してみました。結局、今回は両校のサッカー環境の違いが敗因ということでみおんなの意見が一致しました。

最大の違いは練習場でした。流通経済大柏には、人工芝の専用練習場で130人の部員が練習に汗を流して一体感を強め、更に系列校のサッカー関東大学王者流通経済大と毎週練習試合が出来るサッカー環境が有ります。一方の藤枝東は、その殆どが静岡県でも有数の進学校のため難関の入学試験を経て入学した50人の部員が、デコボコの他の運動部と共通の校内の運動場で練習するのが精一杯です。また、流通経済大柏の監督、コーチは専任ですが、藤枝東は、監督は同校教師との兼任、コーチは手弁当です。

この差は、公立校と私立校の差に基づいておりますから本質的には縮めることは出来ません。しかし、人工芝グランドの建設構想が浮上しており、更にJリーグの指導経験を持つコーチを臨時で招聘できれば、かなりのところまで縮めることは出来るのではないかと思います。そのために寄付金を募るならば出来る限り協力しようではとの意見が纏まり、来年も県代表にになったらまた同窓会を開くことを約束して散会しましたが、私にとって時すでに新幹線最終に間に合わないタイミングでした。


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