藤枝東高物語(51)
母校 藤枝東、常葉橘破り連覇 2008年11月16日の日記から
藤枝東高物語(52)
藤枝東の今年の戦いを振り返って 2008年11月22日の日記から


優勝記念写真に納まった藤枝東の全選手
(「がんばれ藤枝東」から転載させて頂きました)

先週の11月9日の静岡学園との準決勝戦と同様、今日の常葉橘との決勝戦は藤枝東のサッカー史に残る試合だったと思います。これまでの藤枝東のサッカーは、個人技を基に華麗なパスワークで代表されてきました。静岡学園も同様に個人技を基にしているのですが、最近の選手権では3試合続けて有利に展開しながらいずれも1:2のスコアで連敗を続けております。

その違いが問題で、その違いを見せ付けられたのが、私も現地観戦した今年の国立での流経大柏との決勝戦での惨敗でした。試合開始早々から柏のプレスに藤枝東のパスワークが封じ込まれ、こぼれ球への寄りの速さで相手にボールを奪われ、手も足も出ない状態で0:4で大敗しました。ところが、準々決勝の浜松開誠館から試合のスタイルが変わってスピードがでてきたと言われます。

そして準決勝の静岡学園戦と決勝の常葉橘戦で、そのスタイルがチームに根付いてきたと言われております。私はこの3試合をいずれも現地で観戦しておりませんので、具体的に何が変わったのかは判りませんが、何かが変わったことは事実です。確かに2次リーグ最終戦の磐田東に1:3で惨敗した藤枝東と準々決勝以降の藤枝東は様変わりしております。

この試合を観戦していない私には観戦記を書く資格は有りませんので、掲示板、新聞での記事を引用させて頂いて以下に纏めてみたいと思います。情報は試合速報のみでしたので、「がんばれ藤枝東」の「試合速報」をハラハラしながら更新ボタンをクリックしていました。そして、現地のゆうさんから次の速報が投稿され た時は、思わず大声を上げてしまました。


この時の状況を掲示板、新聞での記事を引用して再現してみたいと思います。前半立ち上がりからの常葉橘の波状攻撃を藤枝東は懸命に守りきり、漸く前半15分頃からリズムを掴みだした前半22分、初めて掴んだ左からのCKで、DF大井淳がゴール前にあげたボールを常葉橘がクリアできず、ボールはネットの前で大きく上がります。 そこで。185センチの長身のFW新井がすかさず頭で合わせるとボールはゴール右隅に決まって先制ゴール!その瞬間のシ−ンが下の画像です。


1点リードして勢いに乗った藤枝東は、前半35分、再び左からのCKを常葉橘がクリアミスしてオウンゴールを招き、藤枝東が2点目を奪い、 前半2対0で終えて後半戦に進みました。 結局、常葉橘の攻撃をしのいだ藤枝東がそののまま2:0で勝利し、2年連続で全国大会に出場することになりました。 今日は、選手権が始まってから彗星のごとく光を放ち出し、この試合で先制ゴールを決めた期待の長身 FW 新井成明君にスポットを当ててみたいと思います。

新井君は中学は常葉橘でしたので、今日はかっての僚友たちを相手にプレーしたことになります。ただ、彼は中学では3年間を通して補欠でしたから、金監督や僚友たちは成長した彼を驚きの目で見たことと思います。彼は、橘中学からそのままトコロテン式に橘高校に進学するコースを選ばずに、敢えて難関の藤枝東を浪人覚悟で受験し見事に合格しました。

彼は、進学校としての藤枝東ではなく、あの藤色のユニフォームを着て、エコバ、そして国立のピッチでプレーすることに憧れたのでした。しかし、DFとして登録された彼の名前は2年生までは選手権の登録メンバーには有りませんでした。そのため、母校が昨年優勝し、国立まで行きましたが彼は国立のピッチでプレーすることは出来ませんでした。

しかし、今年FWに転向してから長身を生かして登録メンバーに載るようになり、村松君と2トップを組むようになりました。そして、1次トーナメント2回戦の星陵戦、3回戦の浜松東戦で連続してハットトリックして頭角をあらわし、2次リーグ1回戦の清水東戦では貴重な決勝ゴールをあげて全国的にも注目を浴びるようになりました。

しかし、持病の椎間板ヘルニアによる痛みが出るようになり、途中交代する場面もみられるようになりました。準決勝の静岡学園戦を控えて痛みはピークに達し、まともに出られる状態ではありませんでした。しかし、この試合に勝って、昨年立てなかった国立のピッチに立ちたいとの思いは誰にも増して強く、主治医にお願いして何本かの痛み止めの注射を打ってもらい、痛みを堪えながらも静岡学園戦に出場し、監督の指示で途中交代するまでプレーを続けたのでした。

そして、今日の決勝戦では歴史に残る決勝ゴールを決めた後も最後まで出場し続けたのでした。こんな事情を知っていただけに、彼がゴールを決めたプレーは生で観ることは出来ませんでしたが、速報欄に彼の名前が記された時は、喜びとともに涙を抑え切れませんでした。
新井君、ゆっくり休んで腰の痛みを癒してから1月2日の試合に備えて下さい。そして、悔いの残らないように動き回って下さい。例え勝運に恵まれなくても、君たちがベストを尽くしての結果なら、私たちは惜しみない拍手を送ります。がんばれ!選手諸君


優勝が決まって喜び合う藤枝東イレブン
(「がんばれ藤枝東」から転載させて頂きました)

高校サッカーは、新春早々の新人戦、春から夏にかけての総体、プリンスリーグを経て、秋から冬にかけての仕上げの選手権に進んでいきますが、母校、藤枝東は新人戦、総体は早々に敗退し、プリンスリーグもグランパスユースに大敗、更には藤枝明誠にも負けて全国大会出場権を逸し、選手権も2次リーグで磐田東に完敗し、決勝トーナメント出場の8校中最下位でした。

私も、グランパスユースに大敗した試合を豊田で観戦し、今年の選手権優勝は無理であることを実感し半ば諦めの心境でした。ところが、決勝トーナメント準々決勝でトップ通過の浜松開誠館を今季ベストの試合内容で1:0で破って調子をあげ、選手権で常に苦杯を舐めさせられてきた宿敵静岡学園を1:0で下し、上り調子の余勢をかって常葉学園橘を新井の劇的ゴールで下して優勝しました。

「華麗なパスワーク」という言葉は私は大嫌いです。藤枝東にはこれまで常にこの言葉が纏わりついていました。今年の国立での決勝戦で流経大柏のプレスと早い寄りにパスワークは封じられ惨敗しました。しかし、今年は、上述の決勝トーナメント での3試合の戦いぶりには、その「華麗なパスワーク」という印象は全く無かったと言われております。

私は3試合とも観戦しておりませんので、確かなことは言えませんが、観戦した友人たちの感想やメディアのコメントから、 華麗さよりも泥臭さ、個人技よりも結束力という印象を強く受けました。これを合わせれば、「泥臭さいまでの結束力」と言えるような気がします。

藤枝東イレブンには傑出た選手は1人もいないと思います。ただ、ひたむきにゴールに突き進み、身体をはって相手ゴールを阻止し、コンマ何秒速くボールに触る、こんな泥臭いプレーが2次リーグを最下位で通過した藤枝東に奇跡の連覇をもたらした原動力であると思います。

奇しくも先日、初めてカタールに勝った一戦についても「華麗なパスワーク」ではなく「泥臭さいまでの結束力」で勝利したとメディアは報道しておりました。共通しているのは相手側のミスでした。確かに藤枝東の三戦での決勝点はいずれも相手のミス、カタール戦での決勝点も、藤枝東出身のMF長谷部の囮とも思える走りに気を取られた一瞬のミスを突いての田中達の狭い角度からの股抜きシュートによるものでした。

しかし、実力が拮抗しているチーム間の試合でのゴールはミスが起点となるのが常です。相手にミスをさせるのも実力のうちで、それが泥臭いと表現されるのだと思います。その泥臭いプレーをみんなでするから「泥臭さいまでの結束力」と言われるのだと思います。とは言え、泥臭いだけではダメで、最後の仕上げが一瞬の判断による田中達の狭い角度からの絶妙な股抜きシュートであり、新井の長身を利用しての高い位置からの絶妙のヘッディングシュート(下の画像)でした。

高い位置からヘッディングシュートを決める新井選手
(静岡新聞の「高校サッカー」から転載させて頂きました)

あの高さでヘディングできる高校の選手は身長188センチの新井選手以外に、少なくとも静岡県にはいません。泥臭い中、結束力の中、それでもキラリと光る個性を持つ選手が最後を決める、これが藤枝東のサッカーのような気がします。昨年は河井選手がそんな存在でした。

ここ数試合、藤枝東には目の覚めるような美しいゴールシーンは有りません。みんなで力を合わせて、身体を張って相手のゴールを阻止し、コンマ何秒早くボールに追いついて奪い、そして運動量豊かな村松選手や背の高い新井選手のような個性有る選手が締めくる、このようなサッカーを大石監督が志向しているのだと思います。私は、そんなサッカーが好きです。

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