講座集 第8章 北朝鮮と原爆
−(8)北朝鮮の核保有について−

韓国と北朝鮮、同じ朝鮮民族だったのにどうしてこうも違った国に分かれてしまったのだろうか。何か独裁者を生むような土壌が北に有ったような気がしてならないのです。朝鮮半島は高句麗、新羅、百済の三つの国に分かれていた時代が有りました。大雑把に言えば高句麗が北朝鮮、新羅、百済が韓国に位置的には相当します。 高句麗はその当時、常に中国と新羅・百済双方からの侵略の脅威に晒されておりましたし、イラクもまた常に東西から侵略を受けていました。そうした共通の歴史的背景がサダムや金親子のような独裁者を生んだように思えてならないのです。

こうした独裁国家が軍事国家を目指すのは世の常で、お隣の韓国が世界第六位の16基(1372万Kw)の原発を稼働させているのにしているのに対し、北朝鮮は軍事力強化に資金を投入してきたたため原発の開発は遅れ、 昨年末現在、1基の原発も稼働しておりませんでした。

しかし、その後慢性的な電力不足を解消するためにも原発が必要となり、寧辺に0.5万Kwの実験炉を建設して実験開始、更に5万Kwの原発、泰川に20万Kwの原発の建設を計画しました。しかし、いずれの3基とも減速材に黒鉛を使用する黒鉛炉のためプルトニウムの発生量が日本など欧米で採用されている水を減速材に使用する軽水炉に較べて多いことが問題視され、94年の米朝枠組み合意によりこの3基の原子炉の凍結と3ケ所の核開発・研究施設の合計6ケ所の核関連施設が封印されることになりました。

1.0.5万Kw実験用原子炉(寧辺)
2.5万Kw原発(寧辺)
3.20万Kw原発(泰川)
4.使用済み核燃料棒の貯蔵プール(寧辺)
5.核燃料棒製造工場(寧辺)
6.放射科学研究所(寧辺)

その枠組み合意とは、100万kW級の軽水炉(PWR)2基を東部沿岸のクムホサイトに無償で建設することとし、その建設までの間米国から重油が無償供与することでしたが、昨年末に北朝鮮が核開発を継続していたとの発表がこの枠組み合意に違反しているとして米国は重油の供与を停止しました。

これに対し、北朝鮮はあくまでも平和目的の核開発であるとして反論し、上記の6施設の封印を解除して使用済核燃料を取り出し再処理してプルトニウムを抽出することも辞さないとの態度を表明し、最近は既に原爆を保有していることを仄めかして米国に譲歩を引き出す作戦を取り始めるに到り、一気に北朝鮮の核保有がイラク戦争終結後の最大の国際問題になりました。

果たして北朝鮮は真に日本にとって脅威となり得る原爆を保有し続けるのだろうか。私は日本にとって脅威ではあるが、そのために外交上で譲歩する必要は全く無く、あくまでも次の平壌宣言の3、4項を遵守することを要求すべきと思います。

3.双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないこと
  を確認した。また、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題に
 ついては、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係
 にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがな
 いよう適切な措置をとることを確認した。

4.双方は、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、
  互いに協力していくことを確認した。

その理由は次の通りです。

(1)原爆は保有出来たたとしてもプルトニウム型で1、2発程度
(2)プルトニウム型に必要な高度の爆縮技術の保有は考難い
(3)保有したとしてもその検証に核実験が絶対に必要
(4)核実験可能な場所がなく強行すれば住民に被害及ぶ恐れ大
(5)核実験すれば即感知されて中・露も含めて国際世論の反発
(6)検証出来ても目的地に確実に投下する手段が無い
(7)ウランの自給、輸入が望めずプルトニウム抽出には限界有り

ウラン型原爆製造に必要なウラン235の分離には莫大な費用と高度の技術が必要で北朝鮮には有り得ないことから、使用済核燃料の再処理によって得られるプルトニウムを原爆材料にするしか方法はないと考えられます。その再処理にも高度の技術が必要ですがこれは何とかなりますが、爆縮技術を完成させるには少なくとも1年以上の年月が必要で実規模の核実験をしないと使用するのは困難。

もし、核実験しないで、ぶっつけ本番で強行すれば自爆の恐れも有り極めて危険な行為となります。核実験も地下で行えば住民への被害を最小限に留めることが出来ますが、最初であるだけに正確な情報に欠けるように思われます。核実験を強行すれば同盟国や国交の有る国からも非難されて完全に国際的に孤立してしまう。

仮に爆弾として完成したとしてこれを確実に目的地に迎撃されることなく投下する手段は現在の北朝鮮には無いと思われます。旅客機に原爆を搭載して空から爆撃することは出来たとしても途中で日米の監視システムで捕捉され迎撃ミサイルで打ち落とされる可能性大。ミサイル搭載するには1トン以下に軽量化する必要が有りますが技術的に難しく事前にミサイル試射を繰り返ささない限り不可能と思われます。

核実験をすれば国際的に孤立し、経済封鎖されるはずですので、同盟国からのウラン鉱石や濃縮ウランの輸入も出来なくなりますので、プルトニウム抽出は既存の使用済核燃料を使うしかないので直ぐにも尽きてしまうものと思われます。

一応、既存の3基の原発及び実験用の原子炉が1年間稼動すれば275Kgのプルトニウム239の回収が出来ると試算されることから最大で60発前後の原爆の製造が可能とみられますが、実際はその1/5の10発程度と思われます。以上は私の勝手な推測ですが、当たらずとも遠からずと思います。北朝鮮が原爆で攻撃を仕掛けたらその時点で、この国は滅びる運命にあることを知っている以上例え保有しているとしても脅しには使えても実際には使えない代物です。また、原爆を保有しているとしても点火装置の無い爆薬のような代物かもしれません。 マスコミはこのことを充分踏まえて国民に必要以上に恐怖感を与えないように冷静に報道して欲しいものです。


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