トリインフルエンザの恐怖(2)
(インフルエンザに関する解説(5))

昨日、述べたようにインフルエンザウイルスは、通常は正確にコピーしますので、生き物の間の垣根を越えて感染することは有り得ませんが、偶発的にコピーにミスが発生して、他の生物の細胞にも侵入できるようなタイプに変わることが有り、それが新種のヒトインフルエンザとして、ほぼ40年毎に大流行するとの学説が有ります。 1918-19年に世界中で2000万人以上が死去したスペイン風邪はA(H1N1)型、1957-58年に世界中で10万人近くが死去したアジア風邪はA(H2N2)型、そして現在はそれから40年以上経っておりますので大流行が起こっても不思議ではないということになります。

これがトリインフルエンザの最大の恐怖となります。何故なら、偶発的にできたウイルスのため人間には抗体が無く、感染が広まりだすともの凄い勢いで全世界に蔓延し、その死亡率も高いと言われているからです。そして、このコピーミスが豚を経由して起こ得るとの学説が有力になってきました。

昨日、述べましたように、1918年に新種ウィルスA(H1N1)によってスペイン風邪が大流行しましたが、実はその大流行の前に、同じタイプの豚インフルエンザA(H1N1)が流行したと言われているのです。 そして、後の研究によって、この時の新種ウィルスの型が、1800年代前半に豚から検出され、保存されているウィルスと酷似していることが判明したことから、この豚経由説が有力視されるようになったわけです。

つまり、トリインフルエンザは、豚にもうつり、人間のインフルエンザも豚にうつります。 すると、両方のウイルスが、豚の体内で交じり合って人間と鳥のウイルスの遺伝子の一部が置き換わる(交雑)により、先ほどのコピーミスが起こる確率が高くなると言われております。

現在のところ、豚インフルエンザが大流行しているとの情報は有りませんので、この交雑により人から人にうつる新種のインフルエンザウイルスが発生する確率はさほど高くないとも言われておりますが、 今年になってトリインフルエンザで死者が出ているベトナムのハノイ近郷の養豚場で、豚インフルエンザA(H1N1)が流行しているといわれ、これらブタからトリインフルエンザA(H5N1)も検出されたとのニュースが気になります。

しかし、スペイン風邪が大流行した1918年当時に較べれば各国の検疫体制は比較にならないほど充実しており、ワクチンの製造も可能であることから、万一交雑によって人から人にうつる新種が現れても、ニューカッスル病(鳥に感染するウイルスですが現在ではワクチンの接種により、完全に防ぐことが可能)や人のインフルエンザのようにワクチン接種により感染防止できるものと思われますので必要以上に不安視して大騒ぎすることは避けるべきと思います。

従って、現在流行しているトリインフルエンザに関しては人から人にうつる恐れは無く、交雑による新種ウイルスの出現とその検疫体制、ワクチンの製造について国際協力していけば、スペイン風邪のような悲惨なことにはならないと思います。従って、1.についても大騒ぎして怖がる必要はないと私は達観しております。


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