北朝鮮のロケット発射に思う(1) (ロケットからの落下は事実上、心配不要) |
北朝鮮のロケット発射に思う(2) (ロケットからの落下より怖い宇宙ゴミ) |
地球を周回中の人工衛星による宇宙ゴミ(デブリ)のモデル図 |
昨日の日記で、北朝鮮が打ち上げたロケットによる落下物は大気圏再突入により摩擦熱で燃え尽きるか、バラバラに分解して落下してくるので、その危害、損害の程度も甚大ではなく、また何時、何処に落下してくるかの情報も事前に判っておりますので対策を打つことも出来ることから事実上心配無いと解説しました。 心配無いとする、もう一つの理由は有史以来、宇宙から落下してくる隕石によって人類が死傷したとの記録が残されていないことにあります。隕石は、小惑星や彗星、更には大気との摩擦で燃え尽きなかった流星が地上に落下したもので、ある人の計算では、有史以来全世界に落下した100g以上の隕石は2万個以上に達しており、地球上の人間に当たる確率は、約200年に1回だそうです。 しかし、100年ほど前の1908年6月30日朝7時2分にシベリアの奥地、ツングースカ地方に落下した隕石は、空中で大爆発を起したのか明確なクレーターは形成されておりませんが、約2150平方kmの範囲の樹木がなぎ倒され、爆風で1000km離れた家のガラスが割れ、キノコ雲は数百km離れた地点からも見え、ロンドンなど欧州各地で白夜のような現象が起きたことが記録され20世紀最大の謎として今に語り継がれております。 この時の爆発エネルギーは、TNT火薬にして100メガトンで広島級原爆の1000倍ほどと言われ、クレーターも無い上、爆発時の状況が原爆に酷似していたことから、異星人による核攻撃だったとの説も出て、謎に包まれておりましたが、昨年、イタリアのボローニャ大学の研究者たちの調査により、ツングースカ地方にあるcheko湖がクレーターの跡であるとの可能性が高まってきました。下の画像は、その証拠として作成されたCheko湖を3D画像です。 |
隕石が上空で爆発して発生したと推測されるCheko湖の3D画像 |
当時のツングースカ地方は人が住んで居なかったので、死傷者が出たとの記録は残されておりませんが、もしこの隕石が日本列島に落下していたら、500〜1,000万人の人々が死傷するという有史以来最大の災害をもたらしていたと思われます。月面に見られる無数のクレーターも隕石落下によるものとされておりますが、地球上にも多くの隕石落下によるクレーターが存在していることが最近、人工衛星や航空機からの観察で判ってきました。 上述のツングースカ級の隕石が落下する確率は数世紀に1回程度ですが、人口密集地域に落下すれば想像を絶する大災害になります。ところが、人工衛星が打ち上げられるようになってから、人工隕石とも言うべきスペースデブリと言われる無数の宇宙ゴミが地球を彷徨いながら周回し失速して次々に落下するようになってきました。 積んできた人工衛星を切り離して軌道に乗せることで役目を終えて人工衛星になった最終段エンジンは他の人工衛星との衝突を避けるため、故障したり寿命が切れた軍事偵察衛星は他国に落下するのを避けるため、地上からの指令で爆破されることが有ります。 2007年1月12日、中国は地上約850kmの上空にある中国の気象衛星「風雲1号C」に中距離弾道ミサイルを使った衛星攻撃兵器(ASAT)による破壊実験に成功した結果、高度約200kmから同約3,500kmの楕円軌道上に10cm以上の破片が少なくとも517個がデブリとなって周回するようになりました。 米国のリベラル系団体「憂慮する科学者連盟」(UCS)は、この事態を受けて、他の衛星に当たれば損傷を与える1ミリ以上の大きさのデブリが200万個を超える公表し国際宇宙ステーション(ISS)を含む低軌道上の衛星と衝突する可能性を指摘しました。ISSの機体側面にはデブリの衝突痕が無数に有り、昨年8月にはロシアの軍事偵察衛星と思われる巨大なデブリとの衝突を避けるため、逆噴射をかけて高度を一時的に下げるという非常事態が発生しております。 現在、地球を周回中の人工衛星と10cm以上のデブリの数は、およそ次のように推定されております。 ・運用中の人工衛星 3,000 ・ロケット(主に最終段エンジン) 7,000 ・運用停止の人工衛星 10,000 ・ロケット、人工衛星からの放出物 6,000 ・衝突、爆破によって生じた破片 44,000 計 70,000 その分布状況を、NASAはモデル図(この頁の冒頭の画像)として公表しております。発展途上国も人工衛星保有を目指しておりますので、その数は更に増加していくことが予想されます。従って、落下の時刻と場所が特定されないという点では、その確率は低くても 今回、北朝鮮が打ち上げたロケットからの落下物より怖いとも考えられます。 従って、打ち上げられるロケットからの落下物を恐れるなら、同時に隕石やデブリの落下物をも恐れることに繋がります。そうなると、一生涯家に閉じこもっているしかありません。しかし、これらの落下物によって命を落とす確率よりも、交通事故やガンや脳梗塞、心筋梗塞などの病気で死亡する確率の方が遥かに大きいのですから、落下物を恐れることはナンセンスと云わざるを得ません。 |
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