雑感記 第20章 ビン・ラディンの生い立ちから現在に至るまで 

5.ビン・ラディン氏が関わったとされるテロ行為について

米国は次のテロ事件にビン・ラディン氏が関わった疑いが有るとしております。

・1992年12月 イエメン・アデンのホテル爆破。2人死亡。

・1993年 2月 米ニューヨークの世界貿易センタービル爆弾テロ。
         6人死亡、1000人以上負傷。
・1995年 6月 エチオピア訪問中のムバラク・エジプト大統領暗殺
         未遂。
      11月 サウジアラビア・リヤドの国家警備隊施設での
          自動車爆弾テロ。米軍事顧問ら7人死亡。
     11月 在パキスタンのエジプト大使館爆破。15人死亡。
・1996年 6月 サウジアラビア・ダーラン近郊の米軍基地宿舎爆弾
         テロ。米兵19人死亡、400人負傷。
・1998年 8月 ケニア、タンザニアの米大使館同時爆破テロ。
          257人死亡、約5000人負傷。

これ以外に、ビン・ラディン氏の直接関与は確認されておりませんが、同じイスラム原理主義過激派による「ルクソール観光客殺害事件 (エジプト)」、 「日本人鉱山技師拉致事件(キルギス等)」等、結果的に日本人 が対象となったテロ事件も発生しております。

イスラム原理主義過激派によるテロは米国だけでなく、チェチェンでイスラム原理主義過激派との対応に苦慮しているロシアをはじめ中央アジア諸国でも深刻な問題になっており、 今年6月に中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンの6カ国が「上海協力機構」を発足させ、アフガニスタンを実効支配するイスラム原理主義勢力タリバンの浸透などを視野に、(1)国際テロ(2)民族分裂主義(3)宗教過激主義に対し、共同で対処することを定めた「上海協定」に署名しております。

この時期、米国のマスコミが訪米中の田中外相を無視してこの「上海協定」を大々的に取り上げたのは、今にして思えば、同じ問題を共有する米国としては当然だったと思います。

また多数のイスラム系民族が住む英・独・仏等の欧州各国でもイスラム原理主義過激派のテロは大きな国内問題になっており、更に最近ビン・ラディン氏から秘密裏に送金された300万ドルで米国人誘拐事件を引き起こしたフィリピンのイスラム過激派(モロ解放戦線)の事例等、ビン・ラディン氏が関与した見られるテロ活動は米国だけでなく全世界に広まる傾向を示しております。

更に、同じイスラム民族のパレスチナ解放戦線(PLO)、サウジアラビア、イラン等でも今回の米国での同時多発テロを含む一連のテロ行為を非難しておりますので、こうしたテロ行為は全人類に対する敵対行為と考えるべきと思います。
このことを前提にして、ビン・ラディン氏、及び同氏を匿うタリバン政権について次の節で一考してみたいと思います。

6.予想される米国の報復攻撃について思うこと

@米国の対応:
アフガニスタン全土を対象とした無差別攻撃は、国連代表権を持ちタリバン政権に対抗する「北部同盟」のメンバーは勿論、歴史的な干魃で飢餓状態にあるタリバン政権に加担しない一般国民まで殺傷することになり、許される行為では有りませんので、「北部同盟」、「上海協力機構」と協調し、これにイラン、パキスタンの協力得てアフガニスタンを完全封鎖し、ビン・ラディン氏一人を逮捕するだけでなく、彼の組織、テロ基地、更にはタリバン政権そのものを壊滅させる作戦を行うべきと思います。
また、報復攻撃で世界の協力を得ようとするならば、京都議定書や核兵器削減等で示した大国のエゴとも言うべき傲慢な態度を改めて協調すべきと思います。

A日本の対応:
日本はテロに対して常に話し合いによる解決を全面に出して処理してきました。その是非はとにかく少なくとも解決を先延ばししたことは事実と思います。しかし、「アメリカ人とその同盟者は軍民問わずに殺害するよう」呼びかけるビン・ラディンとそのためには死をも厭わないその一派、女性を蔑視・虐待し、麻薬を密造・密売し、世界遺産を破壊することを国家の方針とするタリバン政権と話し合いで解決できるとは考えられず、先延ばしすることで第2、第3のテロが起こる 恐れが有るならば国連承認を前提とした米軍を主体とする多国籍軍による武力行使は止むを得ないと思います。 全人類の敵は日本の敵ですから武力行使できない日本が米国をはじめ行使できる国々に協力するのは当然と思われますので、現行の憲法の枠内でどのような形で協力できるかを国会の場などを通して早急に決めるべきと思います。
湾岸戦争、パレスチナ問題、イスラム過激派によるテロの背景には、有史以来続いている、イスラム、ユダヤ、キリストの宗教対立が有りますが、日本は先進国の中では唯一この対立に関わっていない国です。 もし事態が軟化して第三者を通して話し合う場合が到来した時は日本は率先してその役を果たすべきと思います。 そして、米国が日本に期待しているのは自衛隊の後方支援ではなく、不良債権を処理して1日も早く日本経済を立て直して凋落しつつある米国経済を後方支援することであることを小泉首相は充分認識して欲しいものです。

B各国の対応:。
米国は3年前に米大使館同時爆破テロの首謀者をビン・ラディン氏と断定しながらアフガニスタンに巡航ミサイルによる単発的報復攻撃に止めただけで、問題を先送りした結果が今回の同時テロを招いたと反省して次のテロを未然に防止するために対策を急いでいる米国を理解し了承していいと思います。 アフガニスタンでの戦争経験を持つロシアをはじめ同国に隣接する諸国の軍事基地・情報の提供、ビン・ラディン氏の海外秘密口座の凍結、「アルカイダ」組織の徹底的解明等は自国の安全のために行うべきで、米国への盲目的な追従は避けるべきと思います。

2年前に米・タイム紙記者に語ったビン・ラディン氏の言葉を抄訳して再掲し終章とします。お読み頂き有り難うございました。
「米国を打倒することは宗教的な義務であり、神のお力によりそれが報われることを願っている。イスラムの民はその義務を遂行することと確信している。米国という名の超大国の架空の伝説にイスラム教徒が終止符を打つ日が来ることを私は堅く信じている。」


前 頁 へ 目次に戻る
P−3
  inserted by FC2 system