−日記帳(N0.1976)2007年05月17日−
景気動向の尺度GDPについて
−日記帳(N0.1977)2007年05月18日−
2007年度1〜3月期GDP速報値


景気がいいのか、悪いのかを表わす尺度にはいろいろな資料が有ります。株価や会社の業績などもそうした資料のひとつです。私は、名古屋の繁華街や飲食街に出向いてその混雑振り、スナックのママさんやタクシーの運転手さんの話、スナックの客の入りやタクシー待ちの時間などからそれとなく景気動向を推し量っておりますが、それによると株価や業績の割には、どうしてもマスコミが言うほど景気がいいとは思えないのです。

株価や会社の業績、そして私が見聞する巷の雰囲気などは、景気活動の結果系と言えますが、景気活動の原因系とも言えるデータが有ります。それが、次に示す経済五大指標です。

1.鉱工業指数(経済産業省:毎月)
2.失業率(総務省・統計局:毎月)
3.消費者物価指数(総務省・統計局:毎月)
4.日銀短観(日本銀行:4半期毎)
5. GDP速報(内閣府:4半期毎)

  そして、この中でGDP速報が最も景気動向を正しく表わす資料と言われておりますので、この日記でも随時、この指標を取上げてきました。一国の経済の大きさはその国民が生産活動を通してどれだけ所得を得たかで推し量ることが出来ますが、その尺度として、下に示しますように、GNPとGDPが有ります。

・国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)
・国民総生産(GNP:Gross National Product)
・GNP=GDP+(海外からの所得−海外への所得支払)

GNPやGDPは、国民が生産活動を通してどれだけの利益を上げたかを示しておりますから、景気の原因系そのものと言えます。以前は、GNPが使われておりましたが、GNPは日本人が外国で稼いだ利益が含まれているため、国内の動向を正しく反映しないとの理由で現在はGDPが使われております。利益を生むこの生産の対象は有形のモノだけでなく、サービスのような無形のモノも含み、次の8項目の総和で示されます。

(1)個人消費(主に家計最終消費支出
(2)民間住宅(民間の法人・個人の住宅建築費支出)
(3)設備投資(民間企業の設備投資支出
(4)民間在庫(企業所有の製品、仕掛品、原材料等の増減)
(5)政府支出(国営法人等によるサービスの生産額)
(6)公共投資(用地費、補償費を除いた公共事業費)
(7)公的在庫(政府所有の米・林等の原材料、資材等の増減
(8)財貨・サービス(モノ、サービス、金融所得の輸・出入収支)

このGDP速報値は、1〜3月期、4〜6月期、7〜9月期、10〜12月期の四半期毎に5月、8月、11月、2月の中旬に内閣府から、株式市場への影響を配慮して市場が始まる9時直前に発表されます。そのGDPの今年、最初の1〜3月期速報値が今朝9時前に内閣府から発表されました。その内容については明日の日記で取上げてみたいと思います。


                   2007年度1〜3月分 2006年度
                     速報値 年率   年率
(1)個人消費           0.9    3.5    0.8    
(2)住宅投資           -0.3   -1.2    0.4        
(3)設備投資          -0.9   -3.7    7.2         
(4)民間在庫          -0.1    0.4    -0.0         
以上小計(民間需要) = -0.3    1.2     1.9
  
(5)政府支出           -0.1   -0.4     0.9
(6)公共投資           -0.1   -0.4    -9.2
(7)公的在庫           -0.0   -0.0    -0.0
以上小計(公的需要) = -0.1   -0.4    -1.3

以上総計(国内需要) =  0.2   0.8    1.2
(8)内外収支(海外需 =  0.4   1.6    0.8

(1)〜(8)計=実質GDP =  0.6   2.4    1.9

2007年度1〜3月期の実質GDP速報値は、上表に示しますように、
前期比0.6%、年率で2.4%となり、民間調査機関が事前に予想し
ていた2.5%から3%(平均2.6%)の水準を若干下回りました。
内需では、個人消費が前期比0.9%増(年率3.5%増)と、前年
2006度10〜12月期に引き続いて堅調な伸びを示しました。

その一方で、これまで高い伸びが続いていた設備投資が0.9%減
(年率3.7%減)と2005年10〜12月期以来のマイナスとなったほか、
前期2.2%増だった住宅投資も、0.3%減と再びマイナスとなりま
した。また、外需は、輸出が3.3%増(年率13.9%増)と高い伸び
が続いており、輸入の伸び0.9%(同3.8%)を控除してなお0.4%と
成長に寄与しました。

昨日の東京株式市場は、16日の米国株高や好決算を反映して朝
方は高く始まったものの後場にはいると、このGDP速報値の中味
、特に設備投資が大幅にマイナスになったことから失望売りが
進み、結局終値は前日比30円安い1万7498円60銭となりました。 

政府は、2007年度実質GDPの成長率を2.0%としておりますので、
一応、政府目標はクリアしていることになります。また、その
前提として、個人消費が0.9%から1.6%に急増するものとしてお
りますが、この点でも政府の目標を充分満たしております。
それにもかかわらず、市場がこれを評価していないのは、今回
の個人消費の0.9%増が、暖冬の影響でビール・発泡酒の新製品
などが好調だったこと、1月の大型ソフトウエアの切り替えを
控えて前年10〜12月期にパソコンの買い控えがあった反動等に
よる一時的な要因によるものしていることにあるようです。

従って、8月中旬に発表される4〜6月期の速報値で、個人消費
が定年後の団塊世代の旺盛な消費動向によりプラスを維持でき
るか否か、設備投資が素材産業、夏物家電を中心にプラスに転
ずることができるか否かが注目されることになりそうです。

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