−日記帳(N0.2020)2007年07月07日−
中国への旅を終えて思うこと(1)
−日記帳(N0.2021)2007年07月08日−
中国への旅を終えて思うこと(2)


今度の旅行で最も美しい景色と思った九賽溝の五彩池

今回の旅行は、過去20回近い海外旅行の中で、私にとっては最も体力的に厳しいものでした。それは加齢による体力の衰えに加えて高度4,000mにも及ぶ九賽溝・黄龍地域の高地での歩行が心臓の弱い私にとって厳しく、特に黄龍の五彩池に向かう上り坂は女房殿を含めて同行のツアー客にとっては何でもなかったのに、私は途中、休憩ばかりとって一行から何回も脱落する有様でした。

しかし、6日目の旅行最終日の帰国にあたって、重慶の空港で現地ガイドさんが「私の数十回に及ぶ九賽溝・黄龍の観光ガイドで、一人も高山病に罹らず、一人も酸素ボンベを使わずに最高点の五彩池もで行かれたのはこのグループだけです。」と別れの挨拶をされた時に、ジーンとくるものがありました。そして、中部国際空港から我が家まで20km足らずの経路を走るバスの座席に座った時に、安心感と開放感が一気に出て疲れがピークに達しましたが、それは達成感が加わって快いものでした。ところで、今回の中国旅行にはいくつかの共通点が有りました。 例えば、思いつくままに挙げると次のようなものが有りました。

・搭乗した航空機が全て中国国際航空(CA)のB737機
・旅行中の食事は全て中国料理で朝食以外は回転円卓式
・中華思想に満ち満ちた中国人の接客態度に不満
・上海、重慶、成都等大都市の上空は大気汚染で霞んでました
・旅行中、雨具着用は一度も有りませんでした

中国の航空業界は、北京を拠点とする中国国際航空、上海を拠点とする中国東方航空、広州を拠点とする中国南方航空の三大航空会社によって寡占されており、今回の旅行は国内線も含めて全て中国国際航空の短距離双発旅客機の代表機種のB737でした。型式が古くてテレビモニターが各座席に無い上、機内に飛行情報表示モニターも無いというサービスの悪さに少々、苛立ちを覚えました。

ホテルでの朝食のバイキングはいいのですが、また昼食、夕食が全て回転円卓上に出されるのもいいのですが、毎度毎度同じような料理が出てくるのには、癖壁としてしまい、下の画像は成都での夕食が終わった時点での円卓の様子です。半分以上食べられているのは、右奥のチンゲン菜、右横の麻婆豆腐ぐらいで、あとは一口食べて殆ど箸が進まなかった料理が寂しげに残っておりました。


残念ながら、中国の人たちの我々外国人観光客に対する応対には、時折不満を感ずることが有りました。例えば、毎回出されるビールが冷えていないので、冷えているのをオーダーしても取りあってくれません。理由は「冷えた飲み物は体によくない」との中国人の考えを我々にも強要するからです。夕食に得体の知れない料理が出てきたので、中国通のツアー客に聞いたら鶏の爪の付いた足の揚げ物とのことでした。中国の人たちに言わせればこんなに旨い料理は滅多に無いとして、日本で廃棄処分されるものを輸入までして食べているとのことでした。

成都の本格的四川料理店の麻婆豆腐を楽しみにしていたのですが、出されたのはただただ辛いだけで全く味気ないものだったので、殆どの人は一口食べただけで二度と箸を進めませんでした。確かに、中国に来たのですから本格的な中国料理が出されるのは当然のことで歓迎こそすれ文句は有りません。しかし、泡だらけの鈍ったビール、殆どの日本人が忌み嫌う鶏の爪の付いた足などを出すことには中国側も一定の配慮をすべきであるし、日本側も毎食同じようなメニューの中国料理を出されたら癖壁するのは判っているはずですから、日本人好みのラーメン、チャーハン、ギョーザなどを出す配慮をしてくれたらと思ったものでした。

中国の人たちが自分たちの嗜好が世界に通ずると考えて、それを何の配慮もせずにそのまま外国人向けの食卓に出して「食べないのは食が貧しい」と蔑むとすれば、中華思想の発露としか私に思えません。有毒物混入の歯磨きや欠陥タイヤの輸出してクレームされると、「中国では問題になっていないから騒ぎ過ぎだ」とか「騒ぐことで自社製品の宣伝に利用している」と反論するに至っては、まさに悪しき中華思想の発露としか思えません。


上の画像は、旅行先の重慶の風景です。これでも晴れの日なのです。重慶は長江とその支流の嘉陵江が合流する半島状の丘に作られているため霧が発生しやすく昔から「霧の都」と言われておりますので、ガイドさんはこのもやった空は霧だと説明されましたが、郊外の人口を含めれば世界最大の都市の重慶は重工業都市の上、市街に溢れる車からの排ガス規制が甘いため明らかに大気汚染が進んでおり、霧とスモッグが相乗しているとしか私は思えませんでした。

中国には日本の梅雨に相当する定期的な雨季こそ無いと言われておりますが、旅行先の九賽溝・黄龍地域は雨が多いことで知られており、確率50%ぐらいで雨に遭うと事前に説明を受け、雨具を常に携帯していたのですが、重慶、成都も含め旅行中6日間、ぱらつくことは有りましたが雨具を使うまでには至らず、黄龍では晴れ間が出て暑いほどでした。これが、我々にとって最大のプレゼントでした。冒頭の画像に見られるように、九賽溝・黄龍のエメラルドグリーンとコバルトブルーは世にも素晴らしい光景でした。


異常が発見されて離陸待ちの列から離れたCAの同型機

今回の旅行では、滅多にお目にかかれない交通機関でのトラブルが2件有りました。このトラブルに対して当事者がどのような対応をするのかを興味深く見守ってみました。その対応には中国人気質とこの国の事情が見事に反映されており、この国を語る材料になると思いましたので、ここでは、航空機のトラブルの一件を取り上げてみたいと思います。尚、他のバスでのトラブルの一件は後日取り上げる予定にしております。

航空機に異常が発見された時の中国機の対応

旅行6日目の重慶空港から中部国際空港への帰国便の中国国際航空(CA)のB737機が定刻どおり、重慶空港の離陸専用滑走路に出る誘導路をゆっくり走行しながら順番待ちしておりました。やがて前を走行していた他社機が滑走路の方向に向けて右折しましたので、当然我々が搭乗しているCA機のその後を追って右折するものと思っていたところ、逆に左折したのです。しかし、乗客たちはそれが異常であることに誰も気付いておりませんでした。

航空機と空港に常々興味を抱いている私には、CA機のその行動が明らかに異常であることが判っておりましたので、隣席の女房殿に「何か有ったらしいよ、多分整備場に引き返すのでは」と小声で話すと、周囲の乗客たちも私の声を聞きつけて、不安な面持ちを見せるようになりました。CA機はややスピードを速めて更に左折していきますが機内アナウンスは何もありません。

順番待ちの列から離れてから10分ぐたして漸くCA機は整備場に着いて停止しました。ここで、乗客たちも異常に気付いて機内は騒然となりました。そして、漸く中国語に次いで英語で簡単なアナウンスが有りました。乗客の90%は日本人客ですから、このような非常時には日本語アナウンスを追加すべきと思われたのですが全くその気配は有りません。英語アナウンスは簡単な内容でしたので英会話に弱い私でも理解出来ましたので、翻訳して女房殿に伝える形で周囲の同行ツアー客のみなさんにも聞こえるように「メカニカルアクシデントが発見されたので、点検のために整備場に引き返したみたい」と話しました。

問題は、この時のFA(Flifht Attendant)お対応でした。心配になった乗客たちが彼女たちに日本語で尋ねるのですが日本語が判らないため全く反応が無いのです。そこで、英語にして再び尋ねてもやはり反応が有りません。そう言えば、私がビールが鈍って美味しくないので代わりにワインを求めて、あるFAさんに「Wine white please!」と言っても彼女は判らないため同僚に中国語で何やら聞いてから、手をクロスして無いことを告げられたことが有りましたから、やはり英語を話せない FAさんが居たことは確かなようです。

すると、男性の声で機内アナウンスが流れてきました。「メカニカルアクシデントが発見されました。飛行に影響を与えるほどではないようですが、念のために点検のために整備場に引き返しておりますので、離陸まで今しばらくお待ち下さい。」何と、我々のツアーグループの添乗員のOさんの声でした。Oさんは英語の判らない乗客を気遣って乗務員に日本語アナウンスをお願いしたところ、日本語を話せる乗務員が居ないので代わりに彼に話してくれるよう頼まれて日本語アナウンス代行したとのことでした。

この旅客機は中国の国内便ではなく、その乗客が殆ど日本人の日本向けの海外定期便です。にもかかわらず、日本語をまともに話せる乗務員が一人もいないのに驚きを感じました。少なくとも、機長は英語が判るはずですから、英語でもいいから機長自らメカニカルアクシデントの具体的な内容をアナウンスするのが通例のはずです。乗客によっては、異常が発見された飛行機でそのまま飛行するのに抵抗してパニック騒ぎにならないとも限らないからです。

このCA機は係員たちによって点検・整備されていたようですが、彼等の行動はのんびりとしており全く緊張感は感じられませんでした。やがて、燃料補給車が来て地下の給油孔とCA機の翼の給油孔をホースで結んで給油を行いました。「燃料不足ではみっともないからメカニカルアクシデントとしたのか」と勘ぐる乗客の声も聞こえてきました。そして、駐機して30分ほど経過してからFAさんの英語による機内アナウンスに続けて、Oさんの声で「当機は点検整備の結果、正常であることが確認されましたのでこれから離陸します。」期せずして、機内から拍手が起こりました。

こうして、CA機は重慶空港を離陸して定刻に対し約40分遅れで中部国際空港上空に達し、高度を下げて最小限の左旋回で空港島に向けて機首を下げ見事なソフトランディングで無事着陸しました。結局、メカニカルアクシデントの内容は判らないままでしたが、機長の操縦技術は確かでこれが救いでした。異常の一連の中国機の乗員たちの対応にも、自分たちの対応が世界に通ずると思い込む悪しき中華思想が垣間見られる思いがしたのは、果たして私だけだったでしょうか。


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