−日記帳(N0.2044)2007年07月31日−
美しい日本に思うこと(4)
−日記帳(N0.2045)2007年08月01日−
自民党の参院選惨敗に思う


「傘かしげ」をしている中学生の姿

上の画像は、学校の登下校の途上で「江戸しぐさ」の「傘かしげ」をしている中学生の姿で、ある新聞の夕刊で紹介され評判になりました。昨日も「傘かしげ」をテーマにした作文がコンクールで最優秀賞をとった話題を取り上げましたが、最近、中学生前後の世代で「江戸しぐさ」の類の行動を自然に行うとニュースになるようです。かっては、日常茶飯事に行われていただけに、素直に受け止められない思いがします。現在の日本ではこのような風景に接するのはごく稀で、逆の風景に接することの方が遥かに多いように思われます。

例えば、混雑した乗り物の中で荷物を座席の横に置いて憚らない人、間違い電話して一言も話さずに切る人、登山道などで声をかけても無言で行き去る人、往来で肩が接触したので謝っても無言で行き去る人、狭い道を並列で自転車走行している学生たち、・・・・・。こんな風景は日常茶飯事のように日本で見られます。むしろ、外国、特に欧米などに旅行すると、エレベーターで乗り合わせると言葉を掛けられたり、往来で肩が触れるとすかさず謝りの言葉を掛けられたりすることがしばしば有ります。

「江戸しぐさ」が江戸以外の日本全国に普及していたかどうかは判りませんが、少なくとも、私の故郷の焼津では母から 「傘かしげ」など「江戸しぐさ」の一端を教えられた覚えが有ります。確かに、明治政府によって「江戸しぐさ」の伝承システムは解体させられましたが、「江戸しぐさ」は親から子へ、子から孫へと伝えられ、また学校でも道徳教育の場で公衆道徳という形で教えられていたものと思われます。しかし、当時の道徳教育は個人尊重ではなく国家に尽くすことにあり、滅私奉公の色彩が強く、「江戸しぐさ」の本来の精神とはかけ離れていたように思われます。

そして、戦後になって日教組はこれを理由に道徳教育も反対してきたために学校教育の場で、思いやりのこころを育む機会は殆ど無く、そのようにして育った子が親になるとその傾向は益々強くなり、上述のような「江戸しぐさ」を逆なでするような風景が日常茶飯事に見られるようになったことから政府は、教育基本法を制定し、安倍首相が「美しい日本」をスローガンにするようになったものと私は理解しております。

三日連続で「美しい日本」を小泉八雲の対日観と「江戸しぐさ」の観点から見つめ直し、安倍首相の提唱する「美しい日本」とダブらせてみました。本来なら、既に「美しい日本」の土台が有り、更にそれを磨き上げていくことで世界に誇れる「美しい日本」にしていく、という前向きのスローガンと思っていたのですが、実はそうではなくて、その土台が無くなってしまったから、改めてそれを築き上げていこうという、どちらかと言えば後ろ向きのスローガンであることに気付いた次第です。

中国に旅行して、何時も思うのは「汚い中国」でした。空は工場や車から出る排ガスの影響でスモッグに覆われ、晴れの日でも太陽はぼやけて見えます。そして、アパート周辺の公道にはゴミが散乱しているのに、アパートの中に入ると綺麗に整理・整頓されていると言われます。つまり、自分のスペースを綺麗にするために公道にゴミや不要物を放り出すことも厭わない風潮が見られ、物心両面で「汚い中国」の印象が免れませんでした。その点では、「江戸しぐさ」の欠如を嘆く日本は、美しくはないかもしれませんが、中国ほど汚くはありません。

しかし、日本もこのまま野放しにしていくと、「汚い日本」になりかねません。安倍首相の提唱する「美しい日本」は人によって解釈が違うと思いますが、共通しているのは「思いやり」だと思います。その「思いやり」のひとつに、かって日本に根付いていた「江戸しぐさ」が有ることに思いをいたし、家庭で、学校で、職場で、そして公の場で自然に実践できるように草の根運動を展開していきたいものです。


参院選で大敗し、森元首相と会談した安倍首相

自民党の今回の参院選での惨敗は、野球で言えば中盤まではリードしていたのに、終盤になって毎回エラーと四死球の続出でノーヒットで大量点を奪われ大敗したようなものです。まず、エラーは年金問題でした。元々、年金問題は社保庁のずさんな対応に端を発しておりました。従って、社保庁を所轄する政府・与党の自民党に責任が有る一方で、社保庁労組の横断組織の自治労が属する連合を最大の支持母体としていた民主党にも責任が有りました。

現に、社保庁労組は「オンライン端末の1日のキータッチは平均5,000タッチ以内。最高10,000タッチとする」「端末の連続操作時間は50分以内とし、50分ごとに15分の操作しない時間(休憩)を設ける」「端末の運用時間は、勤務時間内とする」などという呆れた覚書が社保庁との間で取り交わされており、これが年金問題を引き起こした大きな要因になりました。5,000タッチは、1行12字の新聞記事にあてはめると、ローマ字入力の場合は200行(2,400文字)程度、かな入力では400行(4,800文字)程度でしかありません。

例えば、タッチタイピングの代表的な資格である「ワープロ検定」の最もやさしい4級の合格基準が1時間に2,000文字ですから、現在では少し馴れた人なら2時間も有れば楽々できる仕事量ですから、残りの6時間は遊んでることになります。 現に、自民党からは「単純な打ち込み作業なら、数十分もあれば終わる」と批判しておりました。実は、私はタッチタイピングが出来なくて「雨垂れ式タイピング」ですが、その私でも1日に10,000タッチ以上、3,000文字以上は楽々できますから、如何に社保庁労組の覚書がいい加減なものかよく判ります。そのいい加減な覚書を結果として、支持母体の手前、民主党は容認した形になっておりますから民主党にも当然、その責任の一端が有ったわけです。

従って、本来ならこのずさんな覚書を含めウソをつき不正を働いた社保庁職員が責められるべきなのに、社保庁の村瀬長官が「「払えるのに払わない人から、ちゃんと納めてもらいなさい」と言ったことから、逆に民主党から「払ったのに払ってもらえない人をどうしてくれるのか」との異議が出されこれを契機に、自民党側が一方的に民主党から攻められる破目になってしまいました。そして、消えたのは記録で年金自体は消えたわけではないのに民主党に「5,000万人分の」「消えた年金」という言葉を乱用されたため国民が誤解するケースも有りました。覚書の追求不足、村瀬長官の不用意な発言、消えてないことのPR不足等、自民党側のミスが相次いでエラーを犯してしまいました。

更に、閣僚の重なる不適切な発言が相次いで四球を連発し、更に不透明な事務所経費で集中砲火を浴びた松岡農相の自殺、後任の赤城農相もまた事務所経費の不透明さが発覚したのに、安倍首相はいずれも「適切に処理されていると本人から聞いている」とこれまた、不透明な答弁を繰り返し、時あたかも年金では1円たりとも領収書が無いと受け付けないのに、赤城農相は領収書の公開を拒否しこれを安倍首相が容認したことで、国民の不満を買い、四球を通り越して死球を与えたことになり、この時点で自民党の敗北は決定的なものになっておりました。しかし、それでも安倍首相はその事実に気付かず赤城農相を擁護し続けたために、国民の不満は怒りに増幅し、敗北は大敗北になってしまいました。

民主党は実力で勝ったのではなく、このように自民党の重なるミスで勝たしてもらったに過ぎないのに、鬼の首を取ったかのように、政権交代を迫っております。民主党はかっての社会党、民社党、自由党からなる雑居集団の上、最大の支持母体は連合であることから、政権をとっても挙党一致にはなり得ないまま、労組を主体とする圧力団体の要求を受け入れざるを得なくなり、やがて国民無視の「労働組合至上主義」の政治になっていく恐れは充分有ると思います。ただ、民主党には支持母体に拘らない優秀な若手議員が多くおりますので彼等が党の中心的な役割を担うようになれば、むしろ現在の自民党よりも真に国民よりの政権を実現することが出来ると思われます。

私が自民党に1票を投じたのは、自民党を支持するというよりも、現在のような民主党に政権を取らせたくないからです。多くの国民もこのことは承知しているはずで、今回は安倍政権の国民感情を無視した対応に不満を抱き懲罰の意味で民主党に投じただけのことで、安倍首相がこれを正しさえすれば、次回の衆院選で勝利を収めることは可能と思います。例え、3年後の参院選までは参院で野党に甘んじても衆院選に勝てば、国民はやはり自民党の政権を望んでいることが明白となり、民主党も声高に政権交代を唱えても空しさが残るだけのことです。安倍首相は、なぜ国民が怒ったのかをもう一度じっくり考えて解散を決断すべきでしょう。このままでは、自民党の地方基盤が崩壊し、自民党内が分裂する恐れも有りますから伝家の宝刀を振りかざすタイミングを見極めるべきと思います。


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