−日記帳(N0.1249)2008年05月04日−
硫化水素自殺事件多発に思う(3)
−日記帳(N0.1250)2008年05月05日−
ミャンマーのサイクロン災害に思う


警察庁がある中央合同庁舎

警察庁は4月30日、硫化水素を洗浄剤等の日常品を使って発生させる方法を示したウエブサイトの書き込みは、周囲を巻き添えにする傷害事件を誘発する危険な情報と判断し「有害情報」に指定し、ネット接続事業者(プロバイダー)などに書き込みの削除を要請することを決定しました。

麻薬や売春の広告など書き込み自体が犯罪になるものは、その削除を要請ではなく指令することができますし、ネット接続事業者も削除する義務が有りますが、硫化水素の発生方法を記述するだけなら、何ら犯罪行為ではありませんので、場合によっては表現の自由を侵害することにもなりかねません。

通常、この種の当局の取り締まりについては、メディアは表現の自由を盾にして反論するものですが、今回の警察庁の対応を理解し、硫化水素の発生方法に関する解説は勿論のこと、硫化水素の発生に使われる洗浄剤や入浴剤等の商品名や製造業者すら公表せずに、警察庁に協力的な姿勢を取り続け、一切の反論もしてないように思われます。

そのような背景から、この日記でも同様の姿勢をとり、中国産餃子事件の時のように詳細に解説することは差し控えさせて頂きました。しかし、問題となった硫化水素の発生方法の原理は中学生レベルの化学知識で理解できますので、その原理さえ理解してしまえば同類の洗浄剤や入浴剤を探し、もしそれが無ければそれらに含まれる有効成分、もしくはその同等品を他の商品から入手したり、場合によっては不法な手段で入手することも考えられます。

今回の警察庁の処置は、自殺防止もさることながら、巻き添えによる傷害防止を重視しております。しかし、巻き添えを回避するには、硫化水素の発生方法、毒性等に関する知識を持っていたほうが有利ですから、今回の警察庁の処置はこの点では逆効果になります。そして、問題の洗浄剤と入浴剤は我が家にも有りました。妻には絶対にこれを混ぜないように強く言いふくめておきましたが、もしこのことを知らない人が誤って混ぜたらたいへんなことになります。

その点では、今回の警察庁の処置には、表現の自由の侵害とともに、上述のように善意の罪の無い人たちの安全を脅かしかねないという問題点をはらんでおります。硫化水素の発生の化学実験は中学の理科の時間に行なわれることがしばしば有りますが、生徒からその方法について質問を受けた教師はどのように答えるのでしょうか。私は、「きれいに死ぬことができる」とか「苦しまずに死ぬことが出来る」などの自殺幇助とも受け取られるような記述は「有害情報」と見做すべきですが、むしろ不測の事故を防止するために学問的に、硫化水素の発生方法も含めて硫化水素について解説する書き込みまでも「「有害情報」として削除を求めるのは、それこそ「有害処置」と思います。


サイクロンの直撃を受けたエーヤワディー川(イラワジ川) 流域の街


同じ自然現象を、その現象が発生する場所によってその呼び方が変わる事例として、太平洋北部や南シナ海で発生するタイフーン(Typhoon)が有ります。同じこのタイフーンが大西洋南・北部、太平洋北東・北中部で発生するとハリケーン(Hurricane)、インド洋南・北部、太平洋南部で発生するとサイクロン(Cyclone)と名前が変わります。このタイフーンのうち、最大風速が17.2m/sの熱帯性低気圧を日本では台風と呼んでおります。このように呼び方が変わる様子を世界地図で示すと下図にようになります。



日本時間で5月2日の夕方から翌3日の朝方にかけて、最大風速50m/sを超える猛烈なサイクロンが下図に示すルートでミャンマーの中央部を流れるアジアで8番目の大河、エーヤワディー川(イラワジ川) の下流デルタ地帯からミャンマーの最大都市ヤンゴンにかけて 直撃しました。その結果、エーヤワディー川下流地域やアンダマン海の島に被害が集中し、住宅約2万戸が倒壊、約9万人が家を失なったと報道されております。


外電によれば、既に2万人以上死亡したとされておりますが、国民の救済より政権維持を優先するミャンマー軍事政権は外国に救援を求めるなど積極的に救援活動を行なっておりません。このままでは、10万を超える死者が出る恐れが有るとして、国連をはじめ、日米欧、中国など世界各国から救援の申し出が出されておりますが、ミャンマー軍事政権は今のところこれを拒否し続けております。 それは、昨年9月に僧侶たちの反政府デモを武力鎮圧鎮圧した際にも見られたように外国の政府代表団やメディアが入国すると軍事政権が批判の的になることを危惧したものと思われます。

ところで今回のサイクロンが甚大な被害をもたらした理由は、サイクロンの勢力が大きかったこともありますが、直撃した地域の地理的な事情が大きく影響していると私は見ております。アンダマン海に面するミャンマーの沿岸地域には、マラヤ山脈の南端を源泉とする雪解けの水が9本に分かれて北から南に縦断して流れ広大なデルタ地帯を形作りマルタバン湾に流れ込んでおります。従って、この地域は川の氾濫に高潮による水位の上昇が加わって広い地域が水没する危険をはらんでおります。その状況は下の衛星写真から 確認することができます。上の写真はサイクロン直撃前、下の写真はサイクロン直撃後です。川の氾濫でデルタ地帯が水没している様子がよく判ります。早い救援が必要です。




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