−日記帳(N0.1275)2008年05月30日−
ガソリン代高騰に思うこと(1)
−日記帳(N0.1276)2008年05月31日−
ガソリン代高騰に思うこと(2)


原油の先物相場WTIが取引されるNYマーカンタイル取引所

明後日からガソリン代がリッター当たり10円以上値上げされるとのことでしたので、スタンドに出向いたところ予想通り混み合っておりました。
多分、明日から10円以上、上がって170円前後になるものと思われます。私の車は満タンで60リッター入りますので、600円以上の差が出ることになり無視できない額ですから当然の自衛行動です。

物の値段は需要供給による市場原理によって決まることは、古今東西、今も昔も変わらない普遍の原則であることは理解できますが、2001年に1バレル=17ドル程度だった原油が7年間で8倍近い130ドルまで高騰するのは、如何に中国、インド等の新興国の需要が急増しているとは言え、理解に苦しみます。

低迷する株式・債券等の金融市場から原油等のエネルギー資源、、鉄鋼・希土類等の原材料資源の市場に資金が流れるという世界的な時流の中で特に原油市場に米国の年金資金等が大量に投機目的で投入されていることが、この異常な原油の高騰を招いているとの見解がどうやら正しいようです。

もし、これが事実なら、米国は住宅市場へ資金投入しないでサブプライムローン問題を引き起こして世界同時株安等世界経済を揺るがせ、その一方で原油市場に資金投入して原油の高騰を招いて全世界の人たちの生活を圧迫するなど、全くはた迷惑なことをしてくれます。

ところで、原油の価額は原油市場での取引で決まりますが、その原油市場は消費地ごとにアジア、北米および欧州という三つの市場がで形成されており、中でも北米市場のニューヨーク商業取引所(New York Mercantile Exchange:NYMEX:上の写真参照)で取引されているWTI原油先物の価格が指標価格となっており、域内で流通しているほとんどの原油はWTI価格に連動して決定されております。

WTIは、「西テキサス中部」を表す「West Texas Intermediate」の頭文字をとったもので、硫黄分が少なくガソリンに向いてる原油として知られております。ところが、この原油は一日に、世界総生産量の1%未満の40万バレルほどしか生産されていないのにもかかわらず、世界の原油市場の原油価格に大きな影響力を与えております。

その理由は、ここで取引されている原油先物の取引量が、世界の生産量をを大きく上回るため、現物のスポット市場に連動するからです。この取引に米国の年金資金やファンドの資金が投入されております。本来なら、庶民の老後を支えるはずの年金が現在の年金生活者の生活を圧迫し、本来なら祖国イスラエルを経済的に支援するはずのユダヤ系ファンドの資金が原油価額を高騰させることで逆に敵対するアラブ系産油国の経済を支援する結果を招いているのは皮肉な事実です。


2008年2月時点でのガソリン代の国際比較

日本では、来月からリッター170円になるとメディアで大騒ぎしておりますが海外、特に欧州などの先進国のメディアはこの騒ぎを冷ややかに観ております。私が、今年3月にイタリアに旅行した折に認識を改たにしたのは日本の物価の安さでした。特にコーヒー、ビール、パン等の飲食品はユーロ高にもかかわらず、160円/ユーロ換算で日本の1.5倍前後、そしてガソリンも13ユーロ(=210円)でしたので、やはり日本(当時はリッター140円)の1.5倍でした。

上の表は今年2月の時点でのガソリン代の国際比較ですが、この時点で既に英独仏ではリッター200円を越えております。原油価格はこの時点で1バレル95ドルでしたが、現在は130ドル前後ですから、英独仏では更に上がって恐らく現在248円の英国では300円近くになっているはずです。このように、既に300円を意識し始めている欧州各国から見れば、170円で大騒ぎしている日本を冷ややかに観るのも無理もありません。

専門家は、原油価格はバレル300ドルぐらいまで高騰すると推測しております。多分このレベルまで高騰すると代替エネルギー源の台頭、節約等による買い控えなどにより需要が一服してり高止まりし、サブプライムローン問題の収束等による金融不安の緩和などが進めば資金シフトが起って下落することも有り得ると思われます。

ところで、原油価格の過去何十年かの推移を見ると、1980年前後のオイルショックの最高値は、1バレル=約40ドルでした。現在は、130ドル前後ですから3倍ぐらいになっておりますので、一見大暴騰とも思えるのですが、インフレ率を加味して再評価する必要が有ります。現在は1980年当時よりも物価全体が2.5倍になっているとされていますのでインフレ率を2.5倍とすると、40ドル×2.5=100ドル となり、現在の130ドルは3割ほど高い水準との見方も有るようですが、私にはどうもピンときません。

日本は、先進国の中では税金、医療費が安い部類に入るのに、この事実を肯定すると野党としての立場が無くなることから、野党は国民の実感に便乗して税金、医療費が高いと主張し、マスコミも野党の主張の矛盾点を無視して同調して報道するため、国民が実感と現実を混同し本当に日本の税金、医療費が本質的に高いとの思い込み必要以上に自国、日本に悲観している現実は残念なことです。

マスコミは、ガソリン代が高いことを煽るだけでなく、ドライバーの自衛策、国としての対抗策に触れるとともに、原油の高騰にみられるような一部の投機筋による先物の相場取引は、資本主義の基本である需要供給の原則が崩壊し、ガソリンにとどまらず、食料など生活必需品まで高騰させる危険をはらんでいることを主張すべきと思います。


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