−日記帳(N0.1279)2008年06月03日−
三浦雄一郎さんの快挙を讃える(1)
(アネハツルのヒマラヤ越えと登山シ−ズン
−日記帳(N0.1280)2008年06月04日−
三浦雄一郎さんの快挙を讃える(2)
(三浦雄一郎さんの快挙と素晴らしい人間性)


カラパタールから望むエベレスト南壁(赤線は三浦さんらの登山ルート)

今年の5月26日に、三浦雄一郎さん(75)が、後期高齢かつ持病の心臓病の身でありながら、エベレスト登頂に成功するという快挙をなしとげました。このニュースは、高齢登山を志す方々だけでなく、後期高齢者と言われて肩身の狭い思いをされている方々、不整脈等の心臓病に悩む方々にとって嬉しいニュースでした。この快挙を機会に、エベレスト登山について勉強してみましたので、その内容を纏めてみました。

エベレスト登頂を目指す登山家は鶴がヒマラヤ山脈を越えるのを確認して登山日程を決めると言われます。真偽のほどは判りませんが、理にかなった考え方だと思います。暖かい南のインド洋目指して北のチベットから逆風に逆らいながら険しいヒマラヤの山々の上空をを越えていくアネハヅルの姿は、映画「アース」でも紹介され、当日記でも取り上げさせて頂きました。

その理由を、日本山岳会・松田氏は、ヒマラヤ地方のモンスーン明けの好天の頃に当たるからと説明しております。何故、少し遠回りして西側のイランか東側のブータンから飛べば楽なのにの敢えてこの苦難のコースをとるのは、アネハツルの始祖代々継承されていいる不思議な習性によるものと考えられております。

最初にツルがヒマラヤ越えをした頃はまだヒマラヤ山脈が形成されていなかったとの学説が唱えられるようになりました。鳥類の起源が1億年以前、ヒマラヤ山脈がインドプレートとユーラシアプレートの衝突により隆起し始めたのが4,000万年前であることは科学的に実証されていると言われますから、この学説も有り得るものと思われます。

そしてこの学説では、このヒマラヤ山脈の隆起は一気に起こったのではなく徐々に起こったとしております。そこで、仮に2,000万年で8,000m 隆起したとすれば1万年で4m 程度、つまり1年で0.1mm程度ですから、隆起を実感することのないままヒマラヤ越えしているうちに山越えに耐え得る体力が培われて進化し、始祖代々継承されて今日に到っていることが説明されることになり、私にはロマンに満ちた説得力の有る学説と思い、当日記でも取り上げさせて頂きました。

ヒマラヤの登山シ−ズンは、このアネハツルがヒマラヤ越えする5月とされており、1953年のヒラリー等による最初の登頂以来、延べ5,000人前後の登頂成功例の殆どはこの5月に集中しております。特に、今年は空前のエベレスト登山ブームで、5月25日朝までに200人以上が登頂に成功し、実に5月25日は成功したか否かは別にして過去最高と思われる80人以上が最終ベースキャンプから登頂を目指したと報道されております。

英国山岳会が1921年に、世界で初めてエベレスト登山を目指し、1953年にエドモンド・ヒラリーとシェルパのテンジン・ノルゲイが登頂に成功するまでの32年間、数多くの登山家が登頂を試みましたが、マロリー、アーヴィン、ウィルソン等のように非業の死を遂げた事例も多く、エベレストは容易に人を寄せ付けない魔の山でした。

それなのに今年のように、少なくとも200人以上が登頂に成功するようになったのは、登山者の体力が向上したわけでも、ヒマラヤの天候が地球温暖化などの影響で温暖になったわけでもなく、より安全な登山コースが開拓されたこと、GPS、携帯電話等で常に位置を確認しながら後方待機・支援Gと連絡を取れること、酸素ボンベや各種の高山病対策予防薬などが開発されたこと、更には危険な場所には全て固定ザイルが張られ、ユマール(登降器)で安全に登れるようになったことなどが挙げられると思われます。




私が遊覧飛行の折に撮ったエベレスト南壁(矢印の先)

昨日の日記で触れましたように、確かにエベレストの登頂は以前に較べれば楽になった事情はあるにせよ、5月26日に三浦雄一郎さん(75)がエベレスト登頂に、5年前に続けて成功されたことは素晴らしいことと思います。多分、この日は前日の25日に80人以上が登頂を目指していたことに加え、天候も良好だったことから、三浦さんの前後には数十人の登山者が列を作っていたことと思われます。

幼少の頃から不整脈を抱え、年齢を重ねるに連れて心房細動も慢性化していたのに2003年に当時世界最高齢記録となる70歳7カ月でエベレストに登頂後、2回に渡って心臓手術を経て今回は医師が帯同し、心電図を取るなど細心の注意を払っての挑戦だっただけに、三浦さんの凄さもさることながら、彼を支援した人たちの勝利でも有ったと思います。

私が感動したのは、三浦さんが登頂に成功し、ベースキャンプの長男の雄大さんからの「おめでとう」に対する次の答礼メッセージでした。「はい、本当に、涙が出るほどつらくて、苦しくて、厳しくて・・・・」 普通なら、これだけの偉業を達成したのですから「やったー!]と言ったような言葉が出るのですが、謙虚に「涙が出るほど・・・」でした。それもその後が「嬉しくて」で繋がるのが普通ですが、「涙が出るほどつらくて、苦しくて、厳しくて・・・」と表現されたところに、三浦さんの人間性が滲みでているように思えました。

更に素晴らしいと思ったのは、三浦さんが後日、前日の25日に76歳で登頂に成功して三浦さんの最高齢登頂記録達成を阻止したネパール人男性ミン・バハドゥール・シェルチャンさんを讃えるとともに、80歳に再度登頂を目指すと言われたことです。世は75歳以上を後期高齢者と称して半病人扱いにしようとしておりますが、その後期高齢者でしかも心臓疾患の持病持ちの三浦さんの快挙をこころから讃えたいと思います。是非、5年後に登頂に成功して後期高齢者のこころいきを見せつけて下さい。


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