−日記帳(N0.1300)2008年06月25日−
第58寿和丸の沈没事故に思う(2)
−日記帳(N0.1301)2008年06月26日−
第58寿和丸の沈没事故に思う(3)



海でボートする場合、アンカー(錨)を下ろしてボートを固定して釣る場合と、風と潮にまかせてボートを移動させて釣る場合の二通りの方法が有ります。前者を「かかり釣り」後者を「流し釣り」と呼んでおります。一般的に、海底に漁礁などが在ってポイントが特定している場合は、かかり釣り、ポイントが広く分散している場合は、流し釣りを採用します。私の場合、メバル釣りはかかり釣り、キスは流し釣りを採用しております。

ところで、流し釣りの場合、ボートが流されて遠くまで行き過ぎるとポイントから外れる上、戻るのが大変になりますので、ある程度のところでエンジンを掛けて元の場所に戻り、そこで再びエンジンを停めて流すことを繰り返します。しかし、風が強かったり、潮流がて早かったりしてボートが早く流れすぎる場合は、この繰り返しの頻度が激しすぎて釣りになりまん。そのような場合、ボートの流れにブレーキをかけることが必要になります。そのブレーキの役目を果たすのが上図のパラシュートアンカーです。

しかし、風の流れと潮の流れが同じ場合、このブレーキ効果は全く無くなります。つまり風と潮の方向が同じで向きが逆の場合にブレーキ効果は最大となりますが、そのようなことは実際にはまず起りませんから私は、方向は無視して潮と風の向きが90度以上開いておれば使うことにしております。その場合はブレーキ効果は最大の場合の半分以下で、潮と風の合成力の向きに流れていくことになります。

時化ている海で船が転覆や沈没の危険から免れるには横波を受けないことです。そのために、船を波が押し寄せてくる方向に向かって進むよう舵取りします。しかし、何らかの事情でエンジンを稼動させたり、舵取り出来ない場合は、上述の原理でパラシュートアンカーを下ろすことにより横波を受けないようにすることが出来ます。 つまり、上述の流し釣りの原理により、風と潮の方向が同じで向きが逆の場合は船は常に風の向き、つまり波が押し寄せてくる方向に船首を向けますので横波を受けないで済むからです。しかし、上述のように風の流れと潮の流れが同じ場合は、パラシュートアンカーの効果は無くなり、船は波と風と潮のなすがままのフラフラの状態になり、横波を受ける危険性が逆に増すことも有り得ます。

この海域は、親潮と黒潮が混ざることから潮流が複雑に変化し、三角波も発生しやすいことで知られておりますので、パラシュートアンカーを下ろすに際しては、風の流れと潮の流れを事前に充分チェックして、効果的であることを確かめることが必要だったはずです。第58寿和丸の船長さんは、この点どう判断されたのでしょうか。今後、同類の事故を防止するためにも救助された3人の方々からその間の事情を聞いておく必要が有ると思います。


第58寿和丸の沈没地点と同じ海域で沈没した「かりふおるにあ丸」

私が船外機付きボートを購入して間もない頃でした。海を航行することに不慣れな初心者ですから、海の天候のことも良く知りませんでした。三河湾で昼過ぎにのんびりとキス釣りをしていたところ、それまで青空だった空がにわかに掻き曇って鉛色の空に変わり風が吹出して大粒の雨が降り出してきました。

これでは、釣りにならないと思い、納竿してから後片付けして帰港準備を始めました。ところが波が高くなってきましたので、危険を感じアンカーを急いで上げてからエンジンを始動して港へ向かいました。しかし、波は益々高くなってきましたので不安になり近くの港の防波堤沿いに航行することにしました。

防波堤沿いに航行しようとしたのは、沖合いよりは少しでも陸に近いほうが安心という心理によるものでした。ところが、この判断がとんでもない間違いでした。防波堤に近づくとギザギザ状の大波がボートの横に防波堤から押し寄せてくるのです。ボートは木の葉のように揺れて波をかぶり極めて危険な状態になってしまいまいた。

その時、入射波が反射波と波長が合って増幅される三角波のことを思い出し、この防波堤から押し寄せる波がその三角波であることに気付きました。舵を左に大きく切って防波堤から離れていくと、三角波から通常の風波に変わりました。出来るだけ横波を受けないようにジグザグのコースを通って赤灯台と白灯台のほぼ中央に進路をとって無事港内に避難することが出来ました。

この天候の急変は寒冷前線の通過によるものでしたから、即座に釣りを中止して片付けなど後にしてアンカーを上げて帰港の行動に着手すべきであり、後片付けなどして時間をロスしたのが第一の誤り、そして防波堤沿いに航行して三角波を受けたことが第二の誤りでした。幸い、昼間で視界良好だったこと、三角波に気付いて早めに防波堤から離れたこと、そして横波を受けないようにジグザグコースを取ったことが適切な判断だったため、命拾いしたのでした。

しかし、2006年05月09日の日記「釣り友の訃報に接して」に掲載しましたように、釣り友のWさんは、防波堤横で夜間にメバル釣り中に寒冷前線通過に伴う荒天で避難が遅れ、防波堤からの三角波を受けてボートが転覆し帰らぬ人になってしまいました。実は、第58寿和丸沈没の原因がこの三角波だったのではないかとの説が有力視されております。救助された3人の方が船室内で休憩中に船体が横波を受けて傾くのを感じ、その数秒後、再び同方向からの横波で船体が大きく傾斜したと ことを証言しているからです。




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