−日記帳(N0.1448)2008年11月20日−
日本 アウエーでカタールに完勝(1)
−日記帳(N0.1449)2008年11月21日−
日本 アウエーでカタールに完勝(2)


狭い角度からGKの股間を抜いて先制ゴールをあげた田中達

「ヤッター!」の叫び声とともに拍手が深夜午前1時19分、部屋中にに響き渡りました。2階の寝室で寝ていた家族が何事が起ったのかと、飛び起きて声を掛けてきました。思えば、15年前に同じカタ−ルの首都、ドーハのアル・アルサッドスタジアムで行なわれたイラク戦でロスタイム終了直前に同点ゴールされ、W杯への初出場の夢破れドーハの悲劇が起った瞬間も深夜でした。あの時は、声も出ず、ただただ無言で画面を見つめるだけでした。

2010年W杯アジア最終予選A組の日本対カタール戦がアウエーのカタールで、日本時間の11月20日午前1時30分のキックオフで、日本のサッカーファンなら忘れることの出来ないドーハの悲劇の地、カタールで行なわれました。試合開始直後はカタールのリズムで進み、前半4分、右サイドからのFKからマジディがゴール前にクロスを入れ、マジドがフリーでヘディングシュートしたボールが川口の正面に飛び、危ない場面が有りましたが徐々に日本にリズムが出てきました。

そして、歓喜の瞬間の前半19分がきました。お膳立ては、玉田がドリブルで相手を交わしながら、右サイドの中村俊にパスしたのが起点でした。中村俊は更に右にいた内田にパスしましたが、問題は内田からのセンタリングでした。センタリングの対象は相手ゴール近くに居た田中達(内田から見て左側)と長谷部(内田から見て右側)の2人でした。

センタリングしたボールはこの2人のほぼ中間に落下し、結果としてこのボールを田中達が取って先制ゴールを決めております。この間の微妙な内田、長谷部、田中達3選手の駆け引きについては明日の日記で、その時の画像を交えながら分析するとして、今日は次に進めます。フリーになった田中達は相手GKサクルと向かい合った瞬間、シュートを放ちます。この時の、相手GKのサクルと田中達とゴールラインの位置関係の概略は次のとおりでした。


この図に示すように、田中達とゴールラインとの角度は10度ほどしかなく、相手GKのサクルの左右を狙えばゴールポスト外側に外す確率が極めて高いためサクルの股間を抜く以外に方策は有りませんでした。そのためには、より強く蹴ってサクルの一瞬のスキを狙うしかありません。田中達は、GKサクルと向かい合った瞬間のほんのコンマ何秒かの間にその決断をして左足で勢いよく蹴ったボールは見事にサクルの股間を抜いてゴールネットを揺らしたのでした。

こうして、前半を1:0で折り返し、日本優勢のまま、後半2分に長谷部からのパスを受けた玉田が鋭いミドルシュートで加点した時点で、カタール側に諦めムードが漂い、席を立つカタールサポーターの姿が目立ちはじめました。そして、後半23分に闘莉王のヘディングで加点して日本の勝利は不動のものとなり、あとは完封するか否かに興味が向かいました。結局、守備陣は相手エースのセバスティアンを完封し、3―0で完勝しました。


狭い角度からGKの股間抜きを狙ってシュートする田中達

ここで、田中達の先制ゴールに至る過程について、クロスを上げる内田、そのクロスを受けようとした長谷部と田中達の3人の選手の微妙な駆け引きをその時の画像を追いながら私なりに分析してみたいと思います。まず、下の画像はゴールが決まる11秒前の状態です。玉田がドリブルで相手を交わしながら、右サイドの中村俊にパスしたのがゴールの起点で、パスを受けた中村俊が内田にパスしようとしている様子が確認されます。この画像から3秒後が下の画像です。


上の画像で注目されるのは、長谷部の動きです。内田が放ったクロスの方向に向かって走ってはおりますが、その方向は予想されるボールの落下地点よりかなり右側でした。私には、右側に走ることで囮になろうとしているように見えました。現に、実況したテレ朝のアナウンサーは、長谷部が囮になろうとしたことで田中達がフリーになってゴールに繋がったとしておりました。この画像から2秒後が下の画像です。


それを物語るように、相手DF陣3人が長谷部の動きにつられて長谷部の走る方向に走っております。その様子が上の画像で示されております。上の上の画像から2秒後でした。尚、白い点線は選手の動き、赤の点線はボールの方向を示しております。この画像から2秒後が下の画像です。


上の画像で、長谷部は内田が放ったクロスの方向に向かって走っていることが判りますが、ここでも予想されるボールの落下地点より右側に走っているように見えます。更に、長谷部をマークする相手DF陣は4人に増えております。田中達の右端を左端に確認することが出来ます。この画像から2秒後が下の画像です。


上の画像では、内田から放たれたクロスボールが田中達の約2m前に落ち、彼の前方が完全にフリーになっていることが判ります。あわてて相手DF陣が駆けつけようとしておりますが、長谷部の動きにつられて右側に集中していたため左側は手薄になり間に合いませんでした。この画像から2秒後が下の画像です。


田中達は、狭い角度から相手GKの股間を狙ってシュートし、そのボールがDFの股間をすり抜けてDFの後方に転がっている様子が確認されます。後方から相手DFが賭け付けておりますが間に合いませんでした。玉田がドリブルで相手を交わして右サイドの中村俊にパスした瞬間から11秒後の見事なゴールでした。

後に、このゴールに至るプレーに関する解説では、長谷部がクロスボールの飛跡から予想される落下点より遠い方向に走ったことをミスとする論評も有りました。また、長谷部自身も囮になることを意図したと公式の場ではコメントしておりません。 かって、浦和でともにプレーしたことがある田中達への配慮と私は推察しました。

そこで、内田がどのような意図でクロスを上げたかです。あの場合の位置関係からすれば、相手DFに囲まれている長谷部に向けるのも、長谷部と田中達に向けるのもミスと考えられます。実際は、長谷部と田中達の間のより田中達に近い位置に向けて上げ、結果的に田中達がフリーになっていたことから成功しました。試合後、内田はこのクロスの意図について多くを語っておりません。それでいいのではないかと思います。

長谷部は、後半4分には2点目となる玉田のミドルシュートのアシストを務め、後半29分にはドリブルでゴール前に持ち込んだり、自陣ゴール近くでボールを奪い返すなど攻守に渡って活躍しており、まさに影のMVPと私には思えました。この日の日本は、以上のプレーに代表されるように、これまでと一味違うプレーを見せてくれました。

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