−日記帳(N0.1450)2008年11月22日−
藤枝東の今年の戦いを振り返って
−日記帳(N0.1451)2008年11月23日−
藤枝東の選手たちの12月に思うこと


優勝が決まって喜び合う藤枝東イレブン
(「がんばれ藤枝東」から転載させて頂きました)

高校サッカーは、新春早々の新人戦、春から夏にかけての総体、プリンスリーグを経て、秋から冬にかけての仕上げの選手権に進んでいきますが、母校、藤枝東は新人戦、総体は早々に敗退し、プリンスリーグもグランパスユースに大敗、更には藤枝明誠にも負けて全国大会出場権を逸し、選手権も2次リーグで磐田東に完敗し、決勝トーナメント出場の8校中最下位でした。

私も、グランパスユースに大敗した試合を豊田で観戦し、今年の選手権優勝は無理であることを実感し半ば諦めの心境でした。ところが、決勝トーナメント準々決勝でトップ通過の浜松開誠館を今季ベストの試合内容で1:0で破って調子をあげ、選手権で常に苦杯を舐めさせられてきた宿敵静岡学園を1:0で下し、上り調子の余勢をかって常葉学園橘を新井の劇的ゴールで下して優勝しました。

「華麗なパスワーク」という言葉は私は大嫌いです。藤枝東にはこれまで常にこの言葉が纏わりついていました。今年の国立での決勝戦で流経大柏のプレスと早い寄りにパスワークは封じられ惨敗しました。しかし、今年は、上述の決勝トーナメント での3試合の戦いぶりには、その「華麗なパスワーク」という印象は全く無かったと言われております。

私は3試合とも観戦しておりませんので、確かなことは言えませんが、観戦した友人たちの感想やメディアのコメントから、 華麗さよりも泥臭さ、個人技よりも結束力という印象を強く受けました。これを合わせれば、「泥臭さいまでの結束力」と言えるような気がします。

藤枝東イレブンには傑出た選手は1人もいないと思います。ただ、ひたむきにゴールに突き進み、身体をはって相手ゴールを阻止し、コンマ何秒速くボールに触る、こんな泥臭いプレーが2次リーグを最下位で通過した藤枝東に奇跡の連覇をもたらした原動力であると思います。

奇しくも先日、初めてカタールに勝った一戦についても「華麗なパスワーク」ではなく「泥臭さいまでの結束力」で勝利したとメディアは報道しておりました。共通しているのは相手側のミスでした。確かに藤枝東の三戦での決勝点はいずれも相手のミス、カタール戦での決勝点も、藤枝東出身のMF長谷部の囮とも思える走りに気を取られた一瞬のミスを突いての田中達の狭い角度からの股抜きシュートによるものでした。

しかし、実力が拮抗しているチーム間の試合でのゴールはミスが起点となるのが常です。相手にミスをさせるのも実力のうちで、それが泥臭いと表現されるのだと思います。その泥臭いプレーをみんなでするから「泥臭さいまでの結束力」と言われるのだと思います。とは言え、泥臭いだけではダメで、最後の仕上げが一瞬の判断による田中達の狭い角度からの絶妙な股抜きシュートであり、新井の長身を利用しての高い位置からの絶妙のヘッディングシュート(下の画像)でした。

高い位置からヘッディングシュートを決める新井選手
(静岡新聞の「高校サッカー」から転載させて頂きました)

あの高さでヘディングできる高校の選手は身長188センチの新井選手以外に、少なくとも静岡県にはいません。泥臭い中、結束力の中、それでもキラリと光る個性を持つ選手が最後を決める、これが藤枝東のサッカーのような気がします。昨年は河井選手がそんな存在でした。

ここ数試合、藤枝東には目の覚めるような美しいゴールシーンは有りません。みんなで力を合わせて、身体を張って相手のゴールを阻止し、コンマ何秒早くボールに追いついて奪い、そして運動量豊かな村松選手や背の高い新井選手のような個性有る選手が締めくる、このようなサッカーを大石監督が志向しているのだと思います。私は、そんなサッカーが好きです。

今も昔のままの藤枝東高正門
(藤枝東高物語(3)より)

高校生にとって12月はいろいろな意味で人生で大切な1ケ月になることと思います。大学受験を志す者にとっては、12月は最後の追い込みの月であり、就職が決まった者にとっては12月は学生時代最後の年末年始を迎える月だからです。 進学率は90%を超え、東大・京大の進学者数は計5人にすぎないものの名古屋大等の旧帝大系や静岡大など地元を中心とする国公立大に進んだ生徒が卒業生の62%(200人)に達する進学校の藤枝東の3年生にとって12月はまさに人生の岐路と言えます。

サッカーの選手たちも殆どが進学を志望します。サッカーは、野球、バレーなどと異なり、ラグビーとともに年末年始に全国大会が開催されますので、11月中旬に地方大会で優勝すると、12月は年末年始から始まる全国大会に備えての大事な準備期間となります。つまり、静岡県大会で優勝した藤枝東のサッカー選手は受験と全国大会への準備の両方に備えねばなりません。これは大変なことと思います。

決勝戦翌日の11月17日から12月下旬までの1ケ月は、午前から午後にかけて授業を受け、午後から夕方までグランドで練習、帰宅してから夜は受験勉強の日々が続きます。そして全国大会初戦の1月2日に備えて少なくとも1週間前から関東地区のホテルで合宿することになります。その期間中でも夜は受験勉強をすることになります。

昨年、国立のピッチに立ったイレブンのうち、河井陽介君は慶応大、鳥羽亮佑君は筑波大、松田純也君は同志社大、中村龍一郎君は関西学院大、小関教平君は立命館大と夫々、有名大学に入学してその後もサッカー部で活躍しております。ただ、そんな3年生選手の中で、持病の椎間板ヘルニアの痛みをブロック注射を打ち、座薬を挿入して堪えながらも常葉学園橘との決勝戦で決勝ゴールをあげた新井選手は大変だと思います。

私も同様の病歴を経験をしておりますので、あの痛みはよく判ります。彼にとっては、この期間は受験、練習、治療の三つに対峙しなければなりません。現在は、自主トレに専念し、フォーメーションやセットプレーの練習に間に合うように頑張っているとのことです。新井選手をはじめ、3年生の選手諸君、後の人生で、あんなに死に物狂いで無我夢中になって頑張ったことは無かったと振り返られるように、悔いを残さないように、この1ケ月を精一杯頑張って下さい。他でもない、きみたち自身のために・・・・・。

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