−日記帳(N0.1519)2008年02月02日−
年金生活者の確定申告(1)
(年間38万円以上の所得が有れば幼児でも確定申告必要なことは)
−日記帳(N0.1520)2009年02月03日−
年金生活者の確定申告(2)
(国税庁の確定申告ソフトで申告書作成できることも意外に)


今日、平成20年度の確定申告用紙が郵送されてきました。日本では、会社従業員、公務員等のサラリーマンの殆どの方は、勤務先の会社や官庁が確定申告を代行(年初にその年の税額を想定して月々源泉徴収し年末に差額を調整する=年末調整)するため確定申告の経験が無く、従って確定申告は無論のこと課税のしくみについても正しい知識を持って居られないように思われます。

かく言う私も、その類に属し定年寸前まで課税のしくみに対する正確な知識を持っていなかったために、20年近くに渡って税金を納め過ぎていたことが判明し、時効のかかっていない過去5年間分に対して修正確定申告をすることで50万円近い税金の還付を受けた苦い経験を持っております。私は、当サイトの雑感記、「日本人の三つの欠点」で触れておりますように、日本人の経済知識の軽薄さは、自ら確定申告をしないことに由来していると考えております。そこで今回は、年金生活者を対象にして「年金生活者の確定申告」と題し、私自身の備忘録を兼ねて、年金生活者の確定申告について解説をしてみたいと思います。

確定申告は、個人の場合、所得が年間38万円以上有る場合は年齢に関係なく行なう義務が有ります。例えば、扶養家族の小学生が懸賞に応募して年間38万円以上の所得を得た場合、その小学生は確定申告しなければなりません。この場合、扶養者が子供の所得を自分の所得に合算して確定申告することは正しくなく、逆に余分に税金を納めることになる場合が多いので要注意です。

更には、年金暮らしの夫婦で扶養者の妻に年金が支給されるようになった場合、夫婦は一心同体であるとして、妻の年金収入を自分の年金に合算して確定申告することも同様に正しくなく、殆どの場合、余分に税金を納めることになります。税法上では夫婦と言えども、独立した納税者と見做されるわけです。それでは、上述の懸賞所得を得た家族と、夫婦で年金を受給している家族についてケーススタディしてみたいと思います。

(1)被扶養者子どもが年間38万円以上の懸賞所得を得た場合:

家族構成を扶養者の昭和30年生まれのAさん、定常収入の無い妻と子どもの3人家族とし、Aさんの収入は給与700万円のみとし、控除は生命保険、地震保険(いずれも満額控除)、社会保険(年額70万円)のみとします。この場合、子どもさんに年間38万円以上の懸賞による一時所得が無い場合のAさんの確定申告は次のようになります。

給与収入 所得金額 控除計 課税所得 課税額 (万円)
 700     510    220.5   319.5   22.2

ここで、子どもさんが150万円の懸賞金を必要経費5万円で得たとします。その場合の所得金額は、下式で算出されます。
(一時収入-必要経費-特別控除)=(150-5-50)/2=47.5
つまり、150万円の収入を得ても、所得金額は47.5万円に減額され、更に申告時に基礎控除38万円を控除されるためか税額は僅か9.5万円となり、その5%の4,750円が納税額となります。その経過は次のとおりです。

一時収入 所得金額 控除計 課税所得 課税額 (万円)
 150     47.5    38.0    9.5    0.475

もし、Aさんが息子さんの所得を自分の所得に合算して、間違った確定申告すると以下のとおり、30.65−22.20=8.45(万円)余分に納税することになります。違法申告した揚げ句に余分に納税することになりますから、こんな馬鹿げたことはありません。5年以内なら修正申告出来ますので、Aさん払い過ぎた8.45万円を修正申告して取り戻すべきです。

収入計 所得金額 控除計 課税所得 課税額 (万円)
 850    557.5   190.5  367.0    30.65

(2)妻が年金収入得た二人住まいの年金生活者の場合:

家族構成を扶養者の昭和13年生まれのBさん、定常収入の無い妻との2人家族とし、Bさんの収入は300万円の年金のみとし、控除は生命保険、地震保険(いずれも満額控除)、社会保険(年額50万円)のみとします。妻がこの年から40万円の年金を受給することになった場合のAさんの正しい確定申告は次のようになります。

年金収入 所得金額 控除計 課税所得 課税額 (万円)
 300     180    132.5   47.5    2.375

一方、妻の確定申告は次のようになります。

年金収入 所得金額 控除計 課税所得 課税額 (万円)
  40       0      

所得金額が0となりその瞬間、確定申告する必要が無いことが判明します。 実は、120万円以下の年金収入の場合は、所得金額=0となりますので確定申告の必要はありません。サラリーマンの妻で無職だった場合は、国民保険加入が一般的で、その場合、最高額でも90万円を超えることはありませんので、確定申告する必要はありません。

もし、妻が厚生年金を受給する場合は、120万円を越えることは有り得ます。その場合でも基礎控除38万円が適用されますので、158万円以下の年金なら確定申告する必要はありません。但し、内職収入などで年金と合算して158万円を越え、所得金額が38万円を越える場合は確定申告せねばなりません。その場合は、Bさんの申告で配偶者控除 を受けることが出来なくなります。

整理しますと、今回の事例では、妻の所得が0ですので、妻に確定申告の義務は無く、Bさんは妻の年金収入は無視し年金収入は自分の300万円のみとし、生活を一にして妻の介護保険料も自分の年金で負担するとの考えにたって、妻の介護保険料も合算し、更に配偶者控除も適用して申告することになります。その結果、課税額は上述のとおり、23,750円となります。もし、誤って妻の年金40万円を合算して申告すると次のようになります。

年金収入 所得金額 控除計 課税所得 課税額 (万円)
 340     217.5    132.5   85.0    4.250

つまり、間違った申告をした揚げ句に、4.250-2.375=1.875(万円)も余分に納税したことになり、Aさんの場合と同様に、こんな馬鹿げたことはありません。例え、生活を一にしていても、税法上は一ではなく、所得金額が38万円を越える場合は、例え被扶養者の幼児と言えども確定申告の義務が生ずること、どんな場合でも家族の収入を自分の収入に合算して申告することは間違っており、往々にしてその場合は納税過払いになることを銘ずるべきであります。

【免責事項】
管理人は税理士もしくは所得税に関する有資格者ではありません。各事例の解釈などは、各種の法令を参考に記述した一般的かつ個人的な解釈であり、各種税法により禁止されている「税務相談」「申告相談」に類するものではありません。実際の申告等については、所得税の申告主義に基づきつつ、税務署や税理士の確認をとったうえで、正確に、かつ個人の責任で実施してください。


欧米などでは、日本のように勤務先で確定申告を年末調整という形で代行する慣習は有りませんので、国民全員が個人で確定申告をする必要が有ります。米国の黒人、ヒスパニック系の人たちにとって確定申告を手計算で行なうことはかなり厄介なことでしたが、1980年代後半からパソコンで専用ソフトを使えば簡単に確定申告出来ることが彼等に浸透し、米国でのパソコン需要が急増した経緯が有ります。

日本でも確定申告専用ソフトが市販されておりますが、平成19年度からパソコンを介して確定申告する制度(e-tax) が導入されたのを機に、国税庁が確定申告専用ソフトを無料で公開しておりますので、これを使えば簡単にかつ間違いなく確定申告の書き込みをすることが出来るようになりました。このソフトは国税庁の公式サイトにアクセスすれば容易に見付けることができます。

・手順1「作成開始」をクリック:
・手順2「所得税の確定申告」と「申告書を印刷して提出」に黒丸:
・手順3 3ケ所の四角を全てクリックしてレ点を入れる:
・手順4「申告書選択」の「申告者A」の「公的年金等所得」をクリック:
・手順5 「印刷して税務署に」に黒丸入れ生年月日を入力後「次へ」:
・手順6表示された「申告書A」の入力画面にデータ入力すれば完成:


上図は、国税庁の確定申告ソフトを使って作成された確定申告の事例です。このソフトは、下に示すように、収入額を入力すると所得額が自動算出され、更に各控除項目にデータを入力すると、控除が受けられるか否かが自動判別され、受けられる場合は控除額が自動算出され、全控除の入力が終わると、瞬時に控除額計→課税所得→課税額が自動算出され、確定申告書が完成する仕組みになっており、大変便利です。

・収入額を入力→所得額(自動算出)
・各控除項目にデータ入力→控除額(自動算出)
・控除額計→課税所得→課税額(自動算出)

確定申告の電子申告(e-tax)は、こうして作成された確定申告書を、国税庁にパソコンから送信すればいいわけです。但し、その確定申告書の申告者が、住民基本台帳に登録されている当事者であることを国営庁に確認してもらうために、住民基本台帳の記載内容が転記されたICカードをカードリ−ダでパソコンに呼び込んでから国税庁に転送するという、いわゆる「電子証明」の手続きをすることが必要になります。

電子申告すると、一回だけ最高5,000円の還付が有ること、年金受給、控除を立証する証明書類等の郵送や送信が不要になること、還付が早いこと等のメリットが有りますので、私も今年の確定申告を電子申告すべく目下準備中です。

【免責事項】
管理人は税理士もしくは所得税に関する有資格者ではありません。各事例の解釈などは、各種の法令を参考に記述した一般的かつ個人的な解釈であり、各種税法により禁止されている「税務相談」「申告相談」に類するものではありません。実際の申告等については、所得税の申告主義に基づきつつ、税務署や税理士の確認をとったうえで、正確に、かつ個人の責任で実施してください。


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