太陽系で最も遠くに位置する海王星の赤道付近の上空に、猛毒の青酸ガスとして知られる
「シアン化水素」が帯状に分布していることを東京大などの研究チームが発見し、米科学誌
「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」に発表した。
電波を観測する南米チリのアルマ望遠鏡を用いて、太陽から約45億キロ離れた天体の大気の
ごく微量の成分を捉えた成果で、チームはこの手法が惑星の大気環境の解明につながるとしている。
約164年かけて太陽の周りを1周している海王星は地球から遠く、探査機による観測の機会が少ない。
直径は地球と比べて約4倍、質量は約17倍。これまで大気中にシアン化水素の存在は確認されていたが、
どう分布しているか分かっていなかった。
惑星の大気を直接、採取できなくても、そこから発せられる特有の電波を望遠鏡で観測すれば、
構成する成分を特定することができる。チームは2016年にアルマ望遠鏡の観測で得られたデータを解析
した結果、海王星上空にシアン化水素が分布していることを確認した。
さらに詳しく調べた結果、赤道付近でその濃度が最も高かったが、それでも約1.7ppb(ppbは10億分の1)
とごく微量だった。最も濃度が低いのは南緯60度付近で約1.2ppbだったという。
チームは濃度の違いからシアン化水素ができる仕組みを予測し、海王星上空の大気の流れも分析した。
チームの飯野孝浩・東京大特任准教授(電波天文学・大気化学)は「冥王星を含め惑星の大気環境は
分かっていないことが多く、現在の常識では考えられないことが起きている可能性がある。
今後も自由な発想で解明して
いくことが重要だ」と話している。
海王星は、太陽系の第8惑星で、太陽系の惑星の中では一番外側を公転している。直径は4番目、質量
は3番目に大きく、地球の17倍の質量を持ち、太陽系のガス惑星としては最も密度が高い。
海王星は組成が類似し直径がやや大きい天王星の質量よりもわずかに大きい。
164.8年かけて公転しており、太陽からは平均30.1 au離れている。
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