−日記帳(N0.417)2003年01月09日−
消費税の増税は止むを得ないか

今や日本の国家財政は、大幅な税収入不足でまさに破綻寸前の状態にあります。総務省の「平成11年全国消費実態調査」によれば、日本の全世帯の平成11年9月〜11月の1か月平均消費支出は1世帯当たり335,114円と報告されております。

1世帯あたりの平均人員は、この年調査開始以来初めて減少して、3.40人になりましたので一人あたりの平均支出額は丁度、約10万円となります。従って、日本人一人あたり、1年間に払う消費税は、10万円×0.05×12=6(万円)となります。
一方、「平成14年度一般会計歳入歳出の内訳」によれば、歳入源の内訳は次のようになっております。(単位:兆円)

1.特例公債         23.2   (28.6%)
2.所  得 税        15.8   (19.5%)    
3.法  人 税        11.2   (13.8%)
4.消  費 税         9.8   (12.1%)
5.建設公債          6.8   ( 8.4%)
6.そ  の 他       24.4   (30.0%)
    合計      81.2  (100.0%)
つまり、消費税 9.8兆円を総人口で割り返すと、日本人一人あたり1年間に払う消費税は、約8万円となり、さきほどの消費実態調査からの算出の6万円と差異が発生しておりますが、この差異分が法人が支払う消費税となります。 いずれにしても、消費税率を1%上げると税収入は約1兆円、10%上げると約10兆円の税収入が見込まれます。その点、酒税とたばこ税を合わせてもせいぜい、1兆円に過ぎず、今回の税制改定でたばこ1本当たりの税額を1円上げても、1本当たりの税額が2.7円が3.7円に37%増えて0.3兆円の税収増にしかならず、消費税に較べるとたかが知れております。

今日の夕方のTVニュースで、日本経団連の奥田碩会長(トヨタ会長)が、「現在の5%から段階的に16%まで引き上げれば、所得税率や社会保険料を変えなくても制度や財政は安定的だ」との昨年来の持論を記者会見で述べたことからにわかに論議を呼んでおりましたが、以上の国家財政の実態から考えて消費税の引き上げは必至と見られているだけに、経営者側のトップからの発言として注目を浴びることと思います。

現在の一般会計歳入のうち、国民への借金に相当する国債発行高は37%の30兆円に達し、そのうち17兆円は金利で相殺されるため実効分は13兆円に過ぎず、現在823兆円にのぼる 国債残高に毎年30兆円が上積みされて増え続け、 このままでは1400兆円の国民の個人資産を20年足らずで食いつぶし、日本は海外からの借金に頼ざるを得なくなって完全に破綻してしまいます。従って、この国債発行高を減らす分、歳出を減らすか歳入を増やすしか方法は有りません。

歳出を減らすことが望ましいことに決まっておりますが、仮に国会議員を半分にしても0.1億円、問題の道路整備費を半分にしても1兆円程度、公務員の給与を一律10%カットしたとしてもせいぜい1.5兆円ですから、これらを全て実施出来たとしても2.6兆円で30兆円には遠く及びませんし、それを実施するのには相当の年月とエネルギーが必要であまりにも非現実的で財政改善の抜本的手段にはなり得ません。

従って、歳入を増やすし、つまり増税しか方法は有りません。増税の対象は税収入全体の2/3以上を占める所得税、法人税、消費税になりますが、法人税率は既に国際的に見ても高い水準にあり、企業の活性化により景気回復を促すためにもこれ以上の引き上げは無理と言う事情のため対象にはなり得ないと思います。 そして、所得税率を引き上げることは、税金の最大の納税者であるとともに年金原資の最大の担い手である給与所得者を苦しめることになって賛成出来ません。

法人や自営業者は赤字なら税金を払わなくて済みますが、給与所得者はそうはいきません。また給与所得者でも課税対象に達しない比較的若い人たちは納税免除され、年金生活者には大幅な控除が認められているため少ない納税で済みます。従って日本の経済を担っている30、 40、 50代の給与所得者に最も不利な納税制度になっておりますのでこれらの年代の人たちの所得税率を引き下げることには私は反対します。逆に言えば、課税対象額の引き下げ、各種控除の撤廃または減額、そして消費税の引き上げに賛成せざるを得ないことになります。

消費税の引き上げに目くじらたてて反対される主婦のみなさんを多く見かけます。消費税は上がっても国民全員が公平に負担することになりますが、もし消費税が据え置かれたら所得税率が引き上げられるためご主人の給与手取りが目減りすると言う不公平な税負担を強いられることに思いを致して欲しいものです。 昨年の3月27日の日記でも触れましたように、日本の消費税率は先進国の15%前後に対して1/3の低い水準ですので10%から15%程度まで引き上げる余地があると思われます。
−日記帳(N0.418)2003年01月10日−
北朝鮮のNPT脱退に思う

最近、北朝鮮を巡って、NPTとIAEAと言う言葉がマスコミで屡々使われておりますので、今日、明日にかけてその意味を確認しその背景について考えてみたいと思います。太平洋戦争末期に、米国は戦争継続による日本国民の犠牲を最小限に押さえると言う名目で日本に投下し数十万に及ぶ非戦闘員の国民を殺傷しました。以来、ロシア(当時のソ連)、英国、フランス、中国が相次いで核爆弾を保有するに至り、世界中の多くの国々で、原爆、水爆等の核兵器保有競争が繰り広げられろ恐れが出てきたため、1970年に核兵器の拡散を防止することを目的とする「核不拡散条約(Nuclear Non-Proliferation Treaty:NPT)が発効しました。

この条約は、核保有国を1967年1月1日前に核兵器を保有していた米国、ロシア、英国、フランス及び中国の5カ国に限定、それ以外の条約加盟国を非核保有国と認定してこれ以上の核兵器国の出現を防止することにより、核戦争の可能性を少なくすることを目的としたもので、我が国は1976年に第97番目の批准国となり、1998年時点で締約国は187ヶ国となっています。尚、NPTの第10条に「条約発効後25年後に条約を無期限延長するか一定期間延長するかを決定する延長会議を開くとの一項があり、これに基づいて1995年にNYで延長会議が開かれ「条約の無期限延長が決定されました。

この条約の骨子は、核兵器国には核軍縮のための交渉を推進することを義務付ける一方、非核兵器国に対して核兵器の受領、製造、取得等を禁じ、IAEAのフルスコープ保障措置(すべての核物質について保障措置を受け入れること)の受入れを義務付ける一方、すべての締約国に対して原子力の平和利用の権利を保障しております。言い換えれば、非核保有国は自国で核物質を核兵器に転用していないことをIAEAの査察を受けて保障してもらうことで原子力の平和利用の権利の保障を得ることになります。

しかしこのNPTにも多くの問題点が残っております。その一つは、この条約に加盟していない国々の存在です。 まず、インド、パキスタンが74年、98年と相次いで地下核実験を行い、お互いに相手国からの攻撃の恐れが有るとして加盟を拒否し、イスラエルは核兵器保有を明言してはいないものの保有していることは確実で、核兵器保有の全面的廃絶し無い限り加盟しないとし、結局この3ケ国が加盟してないのです。 この間、キューバへからの核移転、南アの原爆製造後の廃棄、ソ連解体後ロシア以外の国からの核の移転等が有り、結局これら当事国はNPTに加盟しましたので非加盟国は上記の3ケ国だけになっております。

これらの国々は核保有国で有りながらNPT核保有国に課せられている核兵器削減の義務が無いので今後とも自由に増産・実験も出来る上、NPTの非核保有国に課せられているIAEAによる査察を受ける義務も無いことになり、NPTの有効性に疑問が生じております。

そして二つめの問題点は非核保有国の中に核兵器保有の疑惑の有る国が有ることです。その国々とは米国が悪の枢軸として名指ししている、イラク、イラン、北朝鮮の3ケ国です。イラクは、1991年春まで核開発をしていたことが95年に発覚し、その後中止したと主張しておりますが、現在、その真偽をIAEAで査察中であり、イランも昨年暮れに北朝鮮と協力して核開発している疑惑が生じて問題になりつつあります。

この中で、最も問題なのは北朝鮮で、93年に同国はNPT脱退を表明し、疑惑が表面化したものの韓国、日本、米国が資金を拠出し合って原電建設しその完工まで米国が重油を年間50万トン無償供給する見返りに北朝鮮に核開発の凍結を約束させたにも関わらずその後もこっそり開発を続けたことが昨年末明らかとなり、そのペナルティーとして重油供給を停止するや、再びNPT脱退を表明してきたことです。北朝鮮の最近の言動は、苦しいペナルティーである経済封鎖を受けながらもNPT脱退宣言はしていないイラクより悪質な国と言わざるを得ないと思います。

三つめの問題はNPT加盟の核保有国、特に米国がNPTの核保有国に課せられている核兵器削減の義務を果たさないどころか、性能向上のため核実験を繰り返し、イラン、イラク、北朝鮮などの地下に深く隠された生物化学兵器を破壊するために小型核兵器の製造を検討しているというニュースが昨年3月に「ニューヨーク・タイムズ」などで報じられてから益々米国の身勝手な行動がNPTの実効性が疑問視されるようになってきました。

北朝鮮は米国が京都議定書の枠組みから離脱したり、国内外の世論を無視してイラクを一方的に攻撃しようとしている上、核兵器削減の義務を怠って核実験を続けていることでNPT条約違反も犯しているとの国際世論の高まりを見込んで二度目のNPT脱退を表明してきたものと思われます。そこまでならば北朝鮮の言い分にも一定の理解を示すことは場合によってはできると思いますが、北朝鮮の言うことを聞かないと、テポドンを飛ばすとか、米国が1発打ち込んできたら倍にして仕返ししてやるとか、世界を相手に第三次世界対戦を引き起こすことも辞さないなどと国営放送で声猛々しく吠えるに至っては狂気に沙汰で一国の外交姿勢とは到底思えません。 こうした、北朝鮮については後日また触れることにします。

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