我が輩は猫である

第5節:我がご主人よ、嘆くことなかれ

我が輩は猫である。名をchasukeと言う。このような、およそ猫らしくない名前を付けられて当初は憤慨したがその後、我が主のchasuke氏がこの名前を彼のハンドルネームにしたことで納得した。「茶助」ではスケベオヤジみたいだし、「sasuke」では何か軽いし発音し難いが「chasuke」なら発音し易く響きもいいので我が輩は満足している。

かく言う我が輩は、chasuke氏や周囲の人たちに可愛がられながら、chasuke氏の家で16年に及ぶ生涯を閉じた。死因は一応腎不全であるが、我が輩は天寿を全うしての老衰と割り切っているが、我が主のchasuke氏は、日頃から血液検査して早期発見しておけば食事療法などで治療できたはずで、その検査を怠ったためにchasukeの寿命を縮めてしまったと自分を責めている。

我がご主人よ、そんなに嘆くなかれ。あなたが釣ってきた新鮮な魚は本当に美味しかった。また毎週のように買ってきたカツオ、マグロ、旬のアサリ、それにご主人の酒のつまみで時折ご相伴にあずかった赤貝、アワビ、サザエ、ホタテなどの貝類は我が輩の大好物だった。こんなに美味しいものを食べさせてもらった結果が例え腎不全に繋がったとしても我が輩はそれで大満足だ。うまくもない食事で治療を受けたところで少しだけ寿命が延びるだけ、美味しいものを頂けて人間で言えば80年に相当する16年も生きられたことへの感謝で一杯だ。
我が主人様、本当に16年間有り難う。

我が輩は猫である

第6節:母との再会と母の勧め

昨日は我がご主人様へのお礼と慰めを言うのが精一杯でつい挨拶を言いそびれたので、今日は改めて挨拶させて頂こう。実は天国で母上が迎えにきてくれて我が輩の先祖たちのいるエリアに来るように言われたのだが、その時我が輩に地球上から強い信号が伝わってきたのだ。それは、我が亡き後、我が主人のchasuke氏の我への思いが強過ぎてテレパシーとなって当事者の我に伝わってきたのだ。

そのことを知った母上は、「いずれその信号も収まっていくだろうが、収まるまでは地上の様子が見られる天窓に行ってお前のご主人様の様子を見ておやり。勿論何もしてあげられないが、お前もご主人様のことが気になるだろうから、せめて見られるだけでも気が楽になると思うよ。お前が見ている間は信号は伝わってこないけれど見ないと、見るのを止めるとまた信号が伝わってくるから、その信号が殆ど無くなったら戻っておいで」と言ってくれたのだ。

我が輩も、その後のchasuke氏のことが気になっていたので母上のこの言葉は嬉しかった。そして、早速天窓に行くことにした。天窓から地上の様子を見ることはできるがここから霊となって地上に舞い戻ることは出来ないので、化け猫なんて地上にいるはずはない。これだけは猫の名誉のために明言しておく。

ただ、地上からの信号がある程度まで弱まると天窓には居れなくなるので、そこに居れるのはchasuke氏次第ということになる。しかし我が輩もいずれは母上のもとに行かねばならないので、そこに居れなくなるのはお互いに喜ぶべきことかも知れない。これからも、chasuke氏からの信号が有る間は折に触れてこの日記帳でchasuke氏の様子や彼の考えていることを伝えていきたいと思う。 これを以て再開の挨拶に代えさせて頂く。


                                     
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