我が輩は猫である

第9節:危険なペットフードのこと

ただ、この憎き獣医もキャットフードに関しては、かねてより我が輩が抱いていた思いを代弁してくれた。およそペットフードそのものが人権、いやペット権無視の食材である。時折、我が輩も食べさせられたが、賞味期限も明記されていない外国製のキャットフードは酷かった。chasuke氏の妻君が時折、新聞の折り込み広告を見て大量に買ってくるキャットフードにこの種の物が多かった。

これは不味いだけではなく、危険きわまりない代物と我が輩は考えている。何故ならこうしたキャットフードの材料は、人間用に不合格と判定された家畜、賞味期限切れの食品、不味くて人間どもが食えない食材のいずれかである。人、いや猫を馬鹿にしたものである。

ペットフードに関しては人間どものための食品衛生法に該当する法規制は無いので、ペットフードを食べてペットが死んだとしても、そのペットフードの業者が罰を受けることはないのである。これでは問題だとして、1969年10月に「ペットフード工業会」なる民間の業者団体が設立され、ここでペットフードの品質に関して自主規制しているのだが、これがいい加減なものである。

その自主規制とは、粗たんぱく質、粗脂肪、粗繊維、粗灰分、水分の5成分を表示するよう義務付けているのであるが、大体この成分名に「粗」を冠するとは何事か。「粗」とは、「あらい、おおざっぱ、がさつ、念入りでない・・・」と国語辞典で記されているようにペットに対して失礼な言い方である。

しかも、その容器中に含有している栄養成分の標準的数値を示すものであって含有量を保証しているものではないとわざわざ注釈しているので殆ど意味が無い。大体この5成分はどんな食材にも多かれ、少なかれ含まれているのだから、最低、最高で含有量を保証しなければ意味が無い。まず製造年月、賞味期限の記載が義務付けられていないのも不満である。

あの憎き獣医はこう言った。「ペットフードにはペットの食いつきをよくするために高蛋白、高脂肪、高塩分のモノが多い上、有害な腐敗防止、酸化防止剤も配合しているので、これらを食べさせると腎臓や肝臓がやられたり、糖尿病、肥満などの成人病にもなりやすくなるので問題だ。」まさしくその通りである。ただ、我が輩の腎不全が如何にもchasuke氏の妻君が我が輩に与えてくれるキャットフードによるものと暗に仄めかすような獣医の言い方が気に食わなかった。

chasuke氏一家の名誉のために敢えて言っておくが、決して我が輩の腎不全はキャットフードが主な原因ではない。全食事の半分近くは、chasuke氏が釣ってきた新鮮な魚と魚好きな一家がよく買ってくるマグロ、カツオ、アサリ、赤貝、サザエ、ホタテ等である。ただ、我が輩が閉口したのは、chasuke夫妻が海外旅行に出掛ける時に大皿に1週間分のドライフードを山盛りにしておいてくれることだ。1週間も室温に放置しても腐らないと言うことは大量の添加剤が配合されている証拠ではないか。

この手のドライフードは開封しても確かに1週間ぐらいなら夏場を除けば腐らないので食べることはできるのだが、その分添加剤が多く含まれているのである。1年に1回程度のことであるから特に体に悪かったとは思えないのだが添加剤の臭いもあって不味かったのだ。これだけはchasuke氏一家に文句のひとつも言いたいところであるが、それ以上に新鮮で美味しい魚を頂いているのでむしろ感謝の気持ちの方が強いくらいだ。

通院するものの病状はむしろ悪化するばかりで、点滴口を支持する包帯で不自由になった足を引きずる我が輩の姿をみてchasuke氏が通院を断念することで、地獄の日々から解放されるようになるくだりについては次回話すことにしよう。

我が輩は猫である

第10節:我が輩の闘病

近日中にアップします。

                                     
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