雑感記・第34章:大リーグ特集

大リ−グ゙物語(ビリー・コートの呪い) 大リーグ物語(ルースの呪い解けず)




ボストン・レッドソックスが「バンビーノの呪い」で85年間ワールドシリ−ズ優勝から遠ざかっていることをこのサイトの日記でご紹介したばかりですが、上には上が有るもので、シカゴ・カブスに到っては、「ビリー・ゴートの呪い」で実に95年間もワールドシリ−ズ優勝から遠ざかっているとは驚きです。阪神タイガースが「カーネル・サンダースの呪い」で18年間リーグ優勝できなかったことなど比較にもなりません。さすがにMLBは、呪いのスケールも大きいようです。

昨日、ワールドシリ−ズ(WS)出場とリーグ優勝(NLCS)をかけたシカゴ・カブスとフロリダ・マーリンズ第6戦で、またもや、ビリー・ゴートの呪いが、カブスファンの青年の手に乗り移ったのか、その青年の手がカブスのリーグ優勝を結果的に奪い取ってしまいました。

カブスは、ナショナルリーグ創設後の6年目の1906年にWS初優勝し、翌年も連続優勝したものの、その後は1910年、18年、32年、38年と4回WSに出場したものの負け続けてしまいました。そして、1945年にWSに出場し、デトロイト・タイガースとの決戦に臨み、今度こそ38年振りの優勝と意気込んだのですが、ここで有名な ビリー・ゴートの呪いが祟ってまたもや4勝3敗で優勝を逃し、以来WSにすら出場できないまま今日に至ってしまいました。

シカゴの酒場主、ビリー・サイアニスさんは飼っていたヤギを連れてカブスの試合を見るのが日課でしたが、1945年のWSで、カブス球団側の意向でヤギの入場を拒否されてしまいました。すると、ヤギは直後に急死してしまったため激怒したサイアニスさんは、カブス球団に「2度とワールドシリーズに出られないよう、ヤギが呪いをかけた」との電報を送りつけたのでした。そして、カブスは53年間WSに出場出来ず、95年間優勝から遠ざかる羽目になってしまいました。

確かに、1908年にナショナル・リーグ創立に参加した8チームで45年以降優勝していないのはカブスだけで、 他7チームは、カーディナルス2回、フィリーズ1回、ドジャース3回、ジャイアンツ1回、レッズ3回、パイレーツ1回、ブレーヴス2回優勝しておりますので統計学的にもカブスが優勝から遠ざかっているのは異常と考えられます。

昨日、カブス3勝、マーリンズ2勝を受けたNLCS第6戦、勝てばNLCSに優勝してWSに出場し、ビリー・ゴートの呪いから解かれる試合のはずでした。試合は8回の表、一死、走者一塁と言う場面で、3:0でカブスがリードしていましたので、あと5アウトでカブスの呪いが解けてWS出場出来るとあって、観客は胸躍らせてその瞬間を心待ちしておりました。

マーリンズのカスティーヨが打ち上げたファウルフライを、カブスのアルー左翼手がフェンス際で捕球体制に入った、その時のことでした。最前列の観客たちがそのボールを取ろうとしました。その中の青年が先に飛球に手を付けてしまったため、アルー左翼手は捕球することが出来ませんでした。

アルーはグラブを叩きつけて激怒し、この青年にファンもブーイングして抗議したものの、捕球は認められずアルーのエラーとして試合は再開されました。明らかに捕球体制を取っている場合にボールを横取りされた場合は捕球していなくても捕球が認められアウトが宣告されますが、私の目にはアルーの捕球体制は不完全に見えましたのでエラーの判定はやむを得ないように思えました。

結局カスティーヨは四球で生き延び次のロドリゲスのタイムリーで3:1にされた後、カブレラの遊ゴロをゴンザレスが失策して満塁、リーの2点二塁打で同点とされ、コナインの右犠飛で勝ち越され、2死満塁からモーデカイの走者一掃の二塁打で8点を取られて逆転負けしてしまいました。

場内は一転して険悪なムードになり、この青年への怒りの渦の中、ビールや罵声を浴びながら、青年が球場警備員に顔を隠され退場していく姿がテレビ画面に映り出されました。この青年、スティーブ・バートマンさん(26)(上・右の写真)は後に記者会見して謝罪したと伝えられますが、今日の第7戦でカブスが破れたためカブスファンの怒りがエスカレートすることが心配されます。しばらくの間は人目を避けて生活せざるを得なくなりそうです。ある意味ではこの青年も「ビリー・ゴートの呪い」の被害者なのかも知れません。

サヨナラ本塁打を打ったブーン選手


今日のアメリカン・リーグの優勝決定戦(ALCS)、ヤンキース対レッドソックス最終戦は世紀の一戦と考え、9時過ぎから始まるNHKの生中継を心待ちにしていたところ、釣り友から電話で釣りに誘われ、迷わずお断りしましたが、海の向こうの野球などに興味の無い釣り友たちは呆れていました。釣りをする機会はこれからいくらでも有りますが、この一戦は生涯二度と生で観る機会は無いと思ったからです。

私が世紀の一戦と考えたのは次の理由によります。

1.勝てば、いずれもワールドシリーズに出場して優勝する確率大
2.レッドソックスが勝てば「バンビーノの呪い」が解ける確率大
3.エース同志の対戦で、クレメンス最後の登板になる可能性有り

そして、この期待に違わぬ素晴らしいゲームで、本当に生中継で観戦して良かったと思いました。 これまで、数多くの野球中継を観てきましたが、これほどスリリングで感動的なゲームは観たことが有りません。

試合は、2回ニクソンの3号2ランの後、エラー絡みで1点を追加したレッドソックスが優位にたち、さらに4回には、今期中日ドラゴンズへの入団契約を破ってレッドソックスに入団して大活躍のケビン・ミラーの号ソロで4点差になった時点で、エース、ペドロ・マルチネス(32)の好投を考えれば、9分9厘レッドソックスの勝利と思い、一時テレビ観戦を中断したほどでした。

ところが、このところ好機に三振の山を築いていたため、この日は7番に降格されたジアンビが、5回、7回に連続ホームランして4:2と2点差に迫ったことから、俄然試合は白熱してきました。しかし、7回にオルティスの2号ソロが出て再び5:2と3点差になったため、やはりだめかと思ったものの、8回にとんでもないドラマが待っていました。

一死二塁でバーニー・ウイリアムスのヒットで1点を返した後、この日ポストシーズン初の「5番(左翼)」で先発しそれまで3打数1安打(中越え二塁打)の松井が打席にはいりました。左の松井に対して、リトル監督はマルチネス投手のところに歩み寄ったので、左投手に交代させるものと思ったところ、短く会話を交わしただけで続投となりました。後の話では、この時リトル監督は「まだ弾は残っているか」と尋ねたところマルチネス投手は「残っている」と答えたので続投を決めたとのことでした。

松井は、2球で2ストライクと追い込まれ、マルティネスの3球目は149キロで内角の難しいコースに入ってきました。強振された打球は右翼線に強烈なライナーとなって飛びフェンスの下の転がっていきました。一塁ランナーのウイリアムスは三塁をまわってホームインしようとして急に止まり三塁ベースに戻ってしまいました。実は、打球が外野フェンスに飛び込んだ時観客の手に触れたため、そこでボールデッドと線審が判定するジェスチャを示したからでした。

昨日の、カブス対マーリンズ最終戦8回の表の、観客の妨害にあってフライを取り損ねて逆転負けのきっかけになったシーンを思い出して嫌な気分になりました。しかし、一死、二、三塁、外野フライで1点差、ヒットなら同点に追いつく絶好のチャンスです。次のポサーダの当たりは速球に詰まって浅いセンターフライ、万事休すと思った次の瞬間、ボールはボールを追ってきた3人の野手のほぼ真ん中にポトリと落ちました。

二塁ランナーの松井は、落ちることが判っていたかのように躊躇無く三塁をまわって本塁に滑り込み手でベースにタッチして立ち上がるや飛び上がり、叫び、拳を握り締めて歓喜のゼスチュアを示しながらベンチに戻ると同僚たちから手荒く迎えられました、松井がこんなに身振り手振りで喜ぶ姿はこれまで見たことも有りませんでした。

こうして、5:5の同点になった後更にチャンスが続きましたが後続が凡退し、9回からムシーナ、ヘレディア、ネルソン、ウェルズの後を受けて登板した押さえのエース、M・リベラが3回をゼロに押さえて迎えた11回、レッドソックスはエンブリー、ティムリンと繋ぎ、この回から、松井がキリキリ舞させられている、魔球のナックルボールを操るウェークフィールドが登板してきました。

そして、右打席に途中から守備に入っていたアーロン・ブーン三塁手(30)が立ちました。彼は、今年シーズン途中で、レッズからロビン・ベンチュラ三塁手(36)をドジャースにトレードした見返りにヤンキースに入団した選手で、マリナーズのブレット・ブーン二塁手(32)の弟さんで、どちらかと言えば守備を買われての選手でした。彼はウェークフィールドが投じたナックルボールを待っていたかのように一呼吸してからすくい上げるように振り抜くとボールは左翼席に高々と舞い上がり切れなければ完全なホームランの飛球でした。

線審の手がグルグル回りホームランと確認されるや、場内は興奮の坩堝となり、全選手がホームプレートにアーロン・ブーン選手を迎えに殺到しました。その輪の中には勿論、手を振り上げて喜ぶ松井選手の姿が見られました。こうして、延長11回にヤンキースがブーンの本塁打で6-5でサヨナラ勝ちし、2年ぶり39度目のリーグ優勝を果たし、バンビーノの呪いは解けませんでした。

私は、ヤンキースの勝因は次の4点にあったと思います。

1.ヤ軍はマルチネスの後にムシーナ、ウェルズの先発投手まで惜し
  げもなく注ぎ込んだのに、レ軍は先発のマルチネスに拘り、継投の
  タイミングを誤った

2.好調の松井を5番に抜擢して不振のジアンビを7番に降格させた
3.リベラを同点の場面で出し、11回まで3回も投げさせた

明後日からのフロリダ・マーリンズとのワールド・シリーズでの松井選手の活躍を期待します。


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