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釣った魚の処置のしかた 釣った魚の料理のしかた(1)

船釣りの場合、釣り上げた魚の処置に困ることが往々にして有ります。最も望ましいのは、船内に外の海水と連通するイケス(水槽)に魚を入れて活かしておき、納竿する時に水槽から取り出して絞め(即殺)て血抜きする方法です。釣り上げた魚の処置で最も重要なことは絞めて血抜きすることです。

釣り上げた魚を活かしもせず、絞めもせずにクーラーに入れたままにしておきますと、中で苦しがってバタバタ暴れ回ることで、魚の筋肉に疲労物質が貯まって味が落ちるだけでなく旨み成分のイノシン酸の原料となるアデノシン3リン酸(ATP)が消費され後で述べる死後硬直が早まってしまいますので、釣り上げたたらその場で絞めるか、または活かしておいて納竿ごに絞める必要が有るわけです。絞めるだけではダメで同時に血抜きして、血が魚の筋肉中に入り込まないようにする必要が有ります。血抜きをしておかないと、刺身が生臭くなったり、白っぽくなったりして味が落ちてしまいます。

次に望ましいのは、スカリと言われる網カゴに釣り上げた魚を入れて海中に吊しておく方法です。イケスと同様に納竿してから水槽から取り出して絞めて血抜きすればいいのですが、マダカのように50センチを越える中型魚の場合はスカリに対して魚体が大きすぎるので魚が死んでしまう場合が多いので、その時はその場で絞めて血抜きする必要があります。

特に私のボートは小さなゴムボートですのでボートの中で絞めたり、血抜きするのはゴムを傷つけたり、血で汚染させたりして好ましくありませんので、スカリの中で死ぬことは覚悟して帰港してから海縁で絞めて血抜きする方法を採用しております。

最も望ましくないのは釣り上げた魚をクーラーに入れたまま家に持ち帰ることです。帰港後に絞めるのはまだマシですが弱っているので効果的に血抜き出来ない場合が多いようです。但し、アジのような小型の魚ならクーラーに氷が有れば、氷締めできますのでわざわざ絞めておかなくてもいいようですので私はこの方法も採用しております。ただしその時は魚が直接氷に触れて氷やけしないように、また解けた水に触れて浸透圧で水分が漁体に浸透しないようにする必要が有ります。出来れば氷パックの入った海水で一気に氷締めすることが望ましいようですが、私はアジをポリ袋に入れ周囲を氷パックで囲んで氷締めする方法を採用しております。

こうして、最も望ましくない方法で魚をクーラーに入れたまま家に持ち帰って、いわゆる野締めしてから刺身にして直ぐ食べますと死後硬直の状態ですので、コリコリ感は有るのですが旨みが無くて、特にカツオなどでがゴムを咬んでいるような味がして決して旨いとは言えません。死後硬直は死後の筋肉中でATPの減少及び筋細胞内カルシウムイオン濃度の上昇に伴って生じる現象で、 先に述べましたように苦悶死した魚体では筋肉中のATPが減少するため死後硬直の進行が早くなります。 従って、活き絞めしてATPの減少を押さえるとともに死後硬直の時期を遅らせて鮮度を保持し、死後硬直が解けた時点で刺身にして食べると、ATPがイノシン酸に代わって旨味成分が多く、鮮度も良いもで最も美味しく頂けます。実際、当日の昼間釣ってきたアジを翌日の夕食にタタキにして食べると美味しかったのはこの理由によるものと思われます。死後硬直の直後では、歯ごたえは有りますが旨みが足らず、時を待てば旨み成分は増すものの、歯ごたえは減るどこで折り合いを付けるかが問題で、ここにプロの板場の腕の見せどころとなります。

生魚には活魚と鮮魚の二つの呼ぴ方が有ります。魚は前述したように、死ぬと死後硬直し一時的に身が堅くなりその後柔らかくなり徐々に腐敗していきます。活魚は生きているものを含めて死後硬直までの魚のことで、鮮魚は死後硬直から柔らかくなって腐敗が進行中の魚のことを言います。

死後硬直ではATPが分解しそのときに発せられるエネルギーは筋肉のたんぱく質を堅く し、分解されたATPはやがてイノシン酸と言う旨み成分になります。死後硬直してから細胞中の酵素の働きでたんばく質が分解されると熟成が進み、柔らかくなる一方でアミノ酸やペプチドなどの旨みが生まれて来ます。こうして旨さが増す一方で温度の高い状態では細菌の増殖による腐敗も進行し、せっかくの旨み成分が分解されて生臭さが勝ってくるようになりますので、魚を冷やして細菌の増殖を抑える必要が有るわけです。


昨日は釣った魚の処置のしかたについて説明してみましたが、今日は我が家での釣った魚の料理のしかたについて説明してみたいと思います。この方法は全くの我流ですので、もっといい方法が有ることをお断りしておきます。

私の場合、ボート釣りですので12月下旬の竿納めから4月上旬の竿始めまでの約3ケ月はオフシーズンとなり、一切釣り行はしません。冬は北西の季節風が強いのでよほどのことがない限り出港出来る機会に恵まれず、例え出来たとしても、何かトラブルが発生した場合の対処が難しくなるのと、この期間は魚も水温が低くなることから冬眠状態になったり、深場に落ちていくため釣りの対象魚が激減するのがその理由です。所詮、趣味の範囲ですから危険を犯してまで釣り行することはないと言うのが私の信条です。

4月上旬の竿始めはメバルが対象となります。メバルは別名「春告魚」と言われるように春到来を告げる魚です。20センチを越える大物は活き締めして持ち帰り刺身にします。活き締めしない大物は斜めに切り目を入れて塩を振ってからグリルで焼き、レモンを絞って食べます。このメバルの刺身と焼き魚は私の晩酌の肴になります。

家族は中・大物を煮付けにして夕食のおかずにしますが、小物も頭を取って唐揚げにして食べると骨まで食べられて結構美味しいことが判りましたので極端に小さい物はリリースしますが12、3センチクラスはリリースしないで持ち帰って唐揚げにすることにしました。

5月になるとキス、コチ、カレーが釣れるようになります。キスとコチは天麩羅にしますが、キスは身が柔らかくて、口に入れた時に何か頼りなさを感じますがコチはやや堅めで歯ごたえが有り、コチの方を好む人も多いようです。ただ、キスはパールピンクで綺麗な形ををしているのに対しコチはトゲが有ってグロテスクな形をしているので敬遠されがちですが刺身にしてもキスより美味しいと思います。カレーは独特の匂いが有って好きではありません。煮付けにして家族に食べてもらい私は食べません。

8月の盛夏になるとアジ、サバ、イワシ釣れはじめます。サバとイワシは腐りやすい上匂いが強いのと殆どがリリースサイズですので釣っても全てリリースします。するとウミネコやカモメがリリースした魚を海中に潜って捕獲しにいきます。アジは型は小さくても南蛮漬けにすると家族に喜ばれますのでリリースせずに全て持ち帰ります。

秋になるとそのアジも大きくなりますので、タタキにし余ったものは干物にします。この干物の作り方に二つの方法が有ってその味を巡って釣り仲間で言い争ってっております。ひとつは開いて塩水につけたり味醂に漬けたりしてから干します。もうひとつは開かないで丸ごと塩水に漬けてから干すのです。私はやはり開く方が美味しいと考えております。




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