−日記帳(N0.743)2003年12月09日− | −日記帳(N0.744)2003年12月10日− |
エジプト観光でのバス事故に思う | 「千の風になって」を聞いて感動 |
世界最長のナイル川はウガンダに源を発し、エチオピア高原に降る雨水を集めてエジプトを南北に貫いて紅海に流れ込み、その全長は7000キロに達しております。そして、毎年のようにナイル川沿いの土地は、源流地域のエチオピア高原に10月末から2月末にかけての雨期に降った雨水で氾濫し水没していました。そのため地中から滲みだして土にたまった塩分を洗い流し、さらに上流から沃土を運ぶためエジプトの農民たちは、水の引いた大地に種さえ蒔けば、豊かな実りが約束され、ギリシアの歴史家ヘロドトスはをもって「ナイルの賜物」と言わしめたものでした。 ところが、ナセル政権の時代、1960年から10年以上もかけて、ナイルの河口から900km上流のアスワン地方に高さ111m、長さ3.6km、発電量200万kwという巨大なアスワンハイダムが建造され、エジプトの未来に明るい光と希望を与えるかと思われましたが、これが裏目になり大変な環境破壊をもたらすことが最近になって判ってきました。ここではその環境破壊の一例として雨を採り上げてみたいと思います。 エジプトには、古代エジプト王国時代さながらの手法で泥を成形して日光で乾燥させただけの日干しレンガで出来た民家が今でも多く存在しております。それはエジプトに殆ど雨が降らないことを前提とした建物でした。何故なら、もし雨が頻繁に降るようになるとレンガは水で軟化して崩壊してしまうからです。ところが、この崩壊が最近起こりだして困っているとガイドさんが説明してくれました。 実は、アスワンハイダムで出来た広大な人工湖の湖面から蒸発した水蒸気が上空で雲を作り、それが雨雲となってその周辺に雨をもたらすようになったというのです。今年の11月から12月にかけて10年に1回有るぐらいの大雨が降ったそうです。 その結果、雨の高速道路の運転に不慣れなエジプト人ドライバーの事故が多くなったと言われます。今回のバスの事故は下表に示すように全て雨によるスリップが原因でした。エジプトの高速道路では予告なく車線変更して追い越しをかけるのは日常茶飯事ですからこのような事故が起こっても不思議ではありません。 |
千の風になって 作詞:不 詳 訳 :新井 満 作曲:新井 満 歌 :新井 満 そこに私はいません 眠ってなんかいません 千の風に 千の風になって あの大きな空を 吹きわたっています 秋には光になって 畑にふりそそぐ 冬はダイヤのように きらめく雪になる 朝は鳥になって あなたを目覚めさせる 夜は星になって あなたを見守る 私のお墓の前で 泣かないでください そこに私はいません 死んでなんかいません 千の風に 千の風になって あの大きな空を 吹きわたっています 千の風に 千の風になって あの大きな空を 吹きわたっています あの大きな空を 吹きわたっています |
発生月日 | 発生場所 | 事故の状況 | 乗員(負傷者) |
11月06日 | カイロの北約40キロの高速道路 | 雨で濡れた路面でスリップしたトラックが観光バスに追突 | 36(4) 関東地区 |
11月25日 | カイロの北約130キロの高速道路 | 追い越しをかけた観光バスが雨で濡れた路面でスリップして横転 | 30(29) 中部地区 |
12月04日 | カイロの北約40キロの高速道路 | 観光バス運転手が大雨で冠水した路面にハンドルを取られ路外に逸脱 | 23(23) 九州地区 |
今日、不思議な体験をしました。所用で車を運転中に、カーラジオのスイッチをいれた時のことでした。上に掲げた歌声が聞こえてきたのです。プロの歌手とは思えない歌声で、曲が進むほどに素人っぽい歌い方になっていくのですが、その歌詞に説得力が有り、私の周囲で亡くなられた方々のことを思ううちに涙が溢れ止まらなくなってしまったのです。初めて聞いた歌にそんな迫力を感じたのは初めての経験でした。 この歌は、ここをクリックしますと、この歌のCDの案内画面が表示されますので、その画面の「SOUND A」のAをクリックして頂くと、作曲者の新井満さん自身の歌声を試聴出来ます。是非お聞き下さい。 |
しかし、1ケ月に同じ会社がチャーターしたバスが3回も同じような場所で同じような事故を起こすのは異常事態で、同じ会社である阪急交通社の道義的責任は免れないと思います。 エジプト観光では、いいホテル、いい観光バス、いいガイドを用意することもさることながら、入場制限の厳しいクフ王のピラミッドやネフェルタリの墓などへの入場チケットを優先的に入手出来る現地エージェントとの契約が要件になる裏事情も有りますが、今後は安全第一を優先させて欲しいものです。 |
新井満さんは第99回芥川賞を受賞者で新潟在住の作家で、作詞、作曲も手掛け歌手としても活躍されておられます。新潟の友人の奥様がガンで亡くなられた際、地道な社会貢献活動をしておられた奥様を偲んで発行された追悼文集に収められていた「千の風」の翻訳詩を読んで感動してた新井さんはその原詩を探して改めて訳詞をつけて作曲し、自ら歌い11/7にCDにされたのでした。 そして、この歌は静かにそして着実に全国に広まり、8/26の朝日新聞「天声人語」で紹介されたのを皮切りに、11/18に朝日新聞朝刊で、11/21に「筑紫哲也のニュース23」で、そして今日NHKの「今日も元気で!わくわくラジオ」で紹介され一気に知れ渡りました。 この、「Thousand Winds」と言うタイトルの英語の原詩は作者不詳のままアイルランド共和軍のテロで亡くなった24歳の青年が「ぼくが死んだときに開封してください」と両親に託した封筒に残されていたという詩で、米国では同時多発テロで犠牲になった父親を偲んで11歳の少女が朗読し、映画監督ハワード・ホークスの葬儀や、女優マリリン・モンローの25回忌でも朗読されていたという有名な詩です。 死を新たなる生まれ変わりへの復活とみなすことで死者とは永久に別れるのではなく、風に、雪に、鳥に、星になって身近にいると言うこの詩は、愛する夫、妻、息子、娘、父、母そして友人、恋人を亡くした人たちの深い悲しみを優しく癒やしてくれていることと思います。このメロディーが近日公開される「天国への手紙」の主題歌になって登場するそうですから楽しみにしております。 |
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