−日記帳(N0.1300)2005年07月02日− −日記帳(N0.1301)2005年07月03日−
妻の遺骨とともに太平洋横断
太陽系起源を探る壮大な計画(1)
(輝く星たちの最後と新星誕生)


妻の遺骨とともに太平洋横断した畑下栄さん

80歳のヨットマン畑下栄さんは、和歌山県でマグロ漁の遠洋漁船の漁師をしておりましたが、マグロの漁獲が難しくなったことから、生まれ故郷の米国に移住を決意し嫌がる妻を説得して、45歳の1970年に夫婦で渡米しました。渡米当初は漁師経験を生かして捕鯨船に乗り込むつもりだったのですが、捕鯨反対運動のため望みは叶えられず、止む無くロサンゼルス近郊の電気もきてないところで、造園業を営んみながら米国籍を取得しました。

どうしても米国の生活に馴染めない妻の息抜きも兼ねて休日には妻と買い物にすることにしていたのですが、悲劇はその買い物の途中で起こりました。自動車事故が起こり、妻が亡くなってしまったのです。生前から「死んだら、父のそばに埋めてほしい」と話していたことから、畑下さんは七回忌を機に妻の遺骨を郷里の長野に分骨することを決意しました。

そして、ヨットが好きだったことから、畑下さんは自宅、土地を売り払って15トンのヨットを買い、妻の旧姓が宮部だったことから「MIYA」と名付け、このヨットに彼女の位牌と遺骨を積んで、昨年の5月15日に米国・サンディエゴを日本に向けて太平洋横断すべく出航しました。ところが、目的地の静岡県・清水港を目前にした、昨年12月12日に伊豆諸島・御蔵島沖で漁船と衝突してマストを折って重傷し、太平洋横断が危ぶまれました。

このことは、またたくまに全国のヨットマンたちの知るところとなり、高齢での太平洋単独横断の快挙に加え、畑下さんの妻への思いに感動して支援の輪が広がり、更に海上保安庁も特別に配慮して折れたマストを応急修理して巡視船を伴走させるなどの支援を行った結果、昨年12月21日、約7カ月かけて目的地の清水港に到着しました。

畑下さんは、その後支援者たちから入院治療やヨットの整備を受けた後、雪解けを待って今年の4月に無事、妻の分骨を済ませました。そして、支援者たちも、当然米国には航空機で帰国するものと考え、「MIYA」をどうするかを考えていたところ、畑下さんが「MIYA」で帰りたいと言い出したため、高齢に加え傷の後遺症が残っていることなどから懸命に説得に努めました。

しかし、81歳になった畑下さんは、どうしても「ノンストップで米国を目指す」と説得に耳を貸そうとはしませんでした。そして、ついに先月15日に、妻と知り合った思い出の地、神奈川県・三浦港から米国に向けて出航しました。横須賀海上保安部もその出航直前まで、年齢を考え中止を説得しましたが、米国籍なので帰国を止めることが出来なかったようです。その代わり、定期的に居場所を連絡するよう指導し、米国の沿岸警備隊にも連絡し、日米双方で航海を見守ることにしました。 畑下さんが無事に米国に着くことをお祈りします。


1987年に約400年ぶりに観察された超新星爆発(タランチュラ星雲)

暗い話題が多い中、宇宙やピラミッドの謎に関わる話題がニュースとして報道されると、何かロマンを感じほっとした気分になります。
クフ王のピラミッドの中から王墓を探索するために壁穴を通して内部をドリリングしなはら観察しようとする試み、地球に近づきつつあるテンペル第一彗星に金属を衝突させて爆破しその際に発せられる閃光のスペクトル分析で太陽系の起源、ひいては地球誕生の謎に迫る試みなどが相次いで報道され、好奇心旺盛な私としてはワクワクする今日、この頃です。

そこで、今日から地球誕生の謎、広義に言い換えれば太陽系誕生の謎に迫る探査計画について特集してみたいと思います。太陽系が46億年前に誕生したことはほぼ間違いないようですが、太陽と地球などの惑星の誕生についてはまだ定説は無いようです。ただ、巨大な星が死ぬ時に大爆発(=超新星爆発)を起こし、その時に飛び散った成分が基になって太陽系が出来たとの学説はほぼ定説化しておりますので、これを基本に考えみたいと思います。

この広い宇宙には無数の星が存在しております。天空に輝く星もそうした星の一部ですが、いずれも太陽より遥かに大きくみづから燃えて光を放っております。燃えると言っても紙や木のような燃えかたではなく、太陽のように核融合によって莫大なエネルギーを生み出すことで燃えているわけです。この世で最も軽い元素の水素の原子核がくっ付きあうと二番目に軽いヘリウムになりますが、その際に質量が減ります(質量欠損)。

欠損した質量をm 光速をc とすると、アインシュタインの相対性理論から E=mc2 で表されるエネルギー E が放出されます。太陽をはじめ輝く星たちは、この核融合エネルギーEによって燃えているわけです。ところで、この核融合は、核分裂のようにに高レベル長寿命の放射性廃棄物を生ずるこが無い上、原料の水は無尽蔵に有りますので、もし人類が核融合を制御しながら実現できれば、原発や石油、ガス、石炭などの化石燃料による発電は不要になり人類はエネルギーから解放されます。

しかし、それを実現するには1千万度といった超高温が必要です。輝く星たちでは莫大な質量とそれらがもたらす重力により自動的にそのような超高温が得られますが地球上では人為的に生み出すしかなく、プラズマなどにより研究されておりますが実用化には程遠い状態です。ただ、核分裂による原爆では核融合を起こし得る超高温が得られますので、原爆を起爆剤にして重水素を核融合させることが出来、これに成功したのが水素爆弾です。つまり、太陽をはじめ輝く星たちでは膨大な規模の水素爆弾が常に爆発し続けていると思えばいいと思います。

しかしこうした輝く星たちにもやがて死が訪れます。太陽の質量のおよそ8倍以上の巨大な星は核融合を続けるたびに、水素→ヘリウム→酸素→鉄というように次第に重い元素に変化していき、それらは星の中心部に集まっていきます。すると、密度の高くなった中心部は重力も強くなり、ついには自身の重力によって星は内部から崩壊し、超新星爆発と呼ばれる大爆発を起こして死に絶えます。 宇宙のはじめに存在したのは水素とヘリウムだけでしたが、死んだ星がし続けた核融合で水素とヘリウムより重いあらゆる元素が作られ、死の瞬間の超新星爆発のおかげで、それらの元素が宇宙空間にばらまかれるわけです。

我々の身体を作っているカルシウムも、こうして吸っている酸素もみんな死にゆく星たちの核融合で作られたと思うと何か壮大な気分になります。こうしてばら撒かれた死んだ星の破片は「星間雲」と呼ばれ、質量の99%が水素やヘリウムなどの軽い元素のガスで、残りの1%がケイ酸塩などの細かいちり(固体成分)で出来ていると考えられております。そしてその近くの星間雲の密度が増加し、その部分はお互いの重力(引力)によって収縮を始め、この収縮を始めた星間雲の一部が太陽系誕生の舞台となったと考えられております。

47億年前のこと、現在の太陽の近くで巨大な星が死に超新星爆発を起こしました。撒き散らされた星の破片は星間雲になって、回転しながら徐々に平たくなりやがてガス状の円盤状になり、その中心に原始太陽が誕生しました。ガス状円盤の中では固形分のちりが集まり、微惑星と呼ばれる無数の小天体が誕生し、やがて微惑星は衝突合体を繰り返しながら大きくなって「原始惑星」になりました。こうして、現在のような太陽系の姿がほぼ出来上がったと考えられ、これを太陽系形成の「標準モデル」と呼ばれ、京大の林忠四郎博士や旧ソ連のサフロノフ博士によって提唱され、現在多くの研究者によって支持されております。

従って、太陽系の起源を探るには、星間雲を採取してその成分を分析すればいいのですが、具体的に 星間雲が存在する場所を特定することは難しく、例え特定できたとしてもそこにまで探査機を飛ばすことは事実上不可能と思われます。地球以外の火星、水星などの惑星は質量が大きいため重力による凝縮や地殻変動などを繰り返し、惑星を形成する物質が創成時からはかなり変質しておりますので、サンプリングしても太陽系の起源を探ることは無理と考えらます。

ところが、大きさが数キロメートルから数十キロメートルの小惑星も星間雲からできた星ですが質量が小さいため重力の影響などを受けず、約46億年前に太陽系が誕生した当時の状態を留めているため「太陽系の化石」ともいわれておりますので、これらからサンプリングすれば太陽系の起源を探ることが可能と考えられます。この考えに沿って計画されているのが日本の「MUSES-C (ミューゼスーC)」計画です。また小惑星によく似ている彗星も小惑星と同様に、約46億年前に太陽系が誕生した当時の状態を留めていると考えられておりますので、これからのサンプリングを計画しているのが米国・NASAの「ディープ・インパクト」計画です。

一方、太陽の表面から「太陽風」と呼ばれる微粒のイオンが吹き出されており、その組成が太陽の組成を反映しております。従ってこの太陽風をサンプリングすれば、地球を含む太陽系の原料物質の組成が判りますので太陽系の起源を探ることが可能と考えられます。この考え方により太陽風のサンプリングを計画していたのが、米国・NASAの「Genesis」計画です。以上の事情により、現在、日米を中心に、上述しましたように三つの太陽系起源を探る壮大な計画が実行されつつあります。この順で、明日以降それぞれの壮大な計画を解説していきたいと思います。

1.米国・NASAの「ディープ・インパクト」計画
2.米国・NASAの「Genesis」計画
3.日本・宇宙科学研究所の「MUSES-C (ミューゼスーC)」計画


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