−日記帳(N0.1304)2005年07月06日− −日記帳(N0.1305)2005年07月07日−
太陽系起源を探る壮大な計画(4)
(小惑星からサンプリングする日本の「MUSES-C」計画 )
七夕は旧暦で


MUSES-C計画用の探査機「はやぶさ」

小惑星も彗星と同様に、太陽系誕生の折に地球などの九個の惑星になり切れなかった落第生です。超新星爆発によって出来た同じ星間雲が原始太陽系円盤を形成した時に10kmサイズの微惑星がまず形成されると考えられていますが、その時に合格して惑星になるか、落第して小惑星か彗星になるかの運命の分かれ目が有ったようです。たしかに総じて惑星は大きくて、小惑星か彗星は小さいので、大きさの問題ではないかと思ってみたのですがそうでもないようです。

何故なら、惑星の冥王星の外側に発見された小惑星クワオワー(直径約1300km)や小惑星セレス(直径約910km)、そして去年発見された2004 DW(直径約1400km)はどれも小惑星と呼ばれておりますが、冥王星(直径約2400km)と大きさで差が有るとは思えず、むしろ最近はこの冥王星を落第させて小惑星と呼ぼうとの意見が相次いでいることから、既に厳密な差は無いと言っていいと思います。これら小惑星と呼ばれる小さな星は、軌道が分かっているものだけでも二万個以上は有ると言われ、その多くは火星と木星の軌道の間の「小惑星帯」と呼ばれる言わば落第部落のゾーンに集まって、何時の日か昇格して惑星と呼ばれることを待っているようです。

これに対して、彗星は謎だらけのようです。落第しても、小惑星のように落ち着いて決った軌道を描いておればいいのですが、惑星や小惑星の重力ではじき飛ばされたりして、太陽系のずっと外にあって太陽系をすっぽり包んでいる「オルトの雲」まで飛ばされ、今度はお隣の恒星の重力でまた別の場所に飛ばされ、飛んでいった先に大きな星があれば、その重力でまた飛ばされて・・・といった具合に宇宙を転々と放浪する彗星もあります。

惑星の軌道は、相互に働く万有引力=周回による遠心力 として得られる軌道方程式を解くことで決ります。この場合、軌道の形は、離心率 e の値によって次の4種類に大別されます。

e=0.0 真円軌道(地球や金星がこれに近い)
e<1.0 楕円軌道(火星やハレー彗星等)
e=1.0 放物線軌道(彗星の一部)
e>1.0 双曲線軌道(その存在はまだ未確認))

現実には、真円軌道と双曲線軌道はまず有り得ず、、殆どが楕円軌道で、ごく一部が放物線軌道を描いているものと考えられております。特に、放物線軌道は永遠の彼方から太陽に接近した後再び永遠の彼方に去っていく非回帰彗星に見られますが、8年前に20世紀最大の彗星として騒がれたヘール・ボップ彗星のように惑星の重力の影響で軌道が楕円軌道変わったと考えられている彗星も有ります。その場合はとてつもなく長い長周期彗星となり、ヘール・ボップ彗星の周期はおよそ3000年と言われています。

一方、太陽系から数十〜数百AU(1AU=地球と太陽の距離)距離に「カイパーベルト」と呼ばれる 場所が有り、運よくはじき飛ばされなかった彗星はこのあたりに集まって、ドーナツ状に太陽系をとり囲み、先の「オルトの雲」と同様に第二の落第生部落を形成しております。そして、問題なのは、「オルトの雲」や「カイパーベルト」にいる彗星の一部が偶然にも軌道が変わって、太陽系に再びもど帰ってくる場合です。軌道によっては地球と衝突する危険が有るからです。その場合は、昨日の「ディープ・インパクト」のように彗星に核爆弾を打ち込んで軌道を変えることも考えられます。

このように、彗星と小惑星とでは軌道に違いが有りますが、決定的な違いはその成分に有るようです。 小惑星は地球のように固形分を多く持っておりますが、彗星はその殆どが氷で、太陽熱で焼け爛れて黒く汚い雪だるまのような形をしております。そして、太陽に接近するとその氷が蒸発し、後ろに砂粒(ダスト:塵)やイオンを撒き散らしそれが尾を引くようになります。浮浪者が街中にゴミを撒き散らしながら歩くようなものです。このように、彗星の中には我々の地球付近にゴミを撒き散らしたり、時には地球に不法侵入しようとするならず者のような存在ですが、ゴミを撒き散らす時には尾を引くほうき星として、その砂粒にも満たない小さなゴミが地球に落下する際に流星群として、我々の目を楽しませてくれる一面も有ります。

前置きが長くなってしまいましたが、本題に戻ります。地球をはじめ火星、木星、土星などのなど大きな惑星は、重力による凝縮や地殻変動などを繰り返し、惑星を形成する物質が創成時からはかなり変質しておりますので、ここからサンプリングしても太陽系起源を探る手掛かりは得られません。しかし、小惑星は質量が小さいため重力の影響などを受けず、約46億年前に太陽系が誕生した当時の状態を留めているため「太陽系の化石」ともいわれておりますので、これらからサンプリングすれば太陽系の起源を探ることが可能と考えられます。

この考えに沿って、文部科学省宇宙科学研究所は、1998年に発見された小惑星「1998SF36」(直径約500m 、幅300m で地球からの距離は約三億km) に探査機を接近させて、NASAの「ディープ・インパクト」計画と同じ方法でサンプリングして地球に持ち帰らせて回収する壮大な探査計画、「MUSES-C (ミューゼスーC)」を立ち上げて、2003年5月9日13時29分、探査機を収納したM-V-5号機「はやぶさ」の打ち上げ成功して、予定の軌道に乗せることにも成功しました。 この「はやぶさ」は現在、順調に飛行を続けております。今年の2月18日にその軌道において最も太陽から遠ざかる点である「遠日点」を通過しました。この時の探査機から太陽の距離は1.7MUで、電気推進ロケットを搭載した宇宙機としては、世界で最も太陽から遠方に到達したことになります。また、探査機から地球までの距離は2.1MUであり電波の往復伝搬遅延は約35分です。

尚、目標の小惑星「1998SF36」は、日本の宇宙開発の産みの親とも言うべき元東大教授の(故)糸川英夫氏の名に因んで「ITOKAWA」と呼ぶことが国際的に認められております。 「はやぶさ」は2005年夏に「ITOKAWA」に到着し、約5か月間、この付近に滞在して科学観測や表面からのサンプル採取を行なった後、「ITOKAWA」を離れ、2007年夏に地球に帰還します。地球出発から帰還まで約4年の飛行となります。「ITOKAWA」への往復には、高性能な電気推進エンジンを連続的に作動させて飛行します。また、地球帰還時には再突入カプセルが、探査機から分離されて地球大気に突入します。梅雨明けして本格的な夏到来とともに、日本中がが「はやぶさ」の話題で湧くくことを期待して、4回に渡った「太陽系起源を探る壮大な計画」を取り敢えず終了させて頂きます。

「はやぶさ」の飛行状況については下記サイトで毎日チェックできますが、今日現在の位置は次ぎの通りです。

・地球より       (Distance from Earth): 366,895,884km
・「ITOKAWA」まで(Distance from Itokawa):    143,098km

宇宙科学研究本部


天の川を隔てた織女星と彦星

私は以前から七夕の行事だけは旧暦で行うべきと考えております。本来、七夕は旧暦の7月7日に行われておりましたので、今年の場合、現在の新暦では8月11日が七夕の日になります。この頃なら梅雨の影響もなく、田舎でしたら天の川も見られると思うからです。七夕の日に、織姫と牽牛の中国の伝説を思い浮かべながら、天の川を隔てて輝いている織姫の織女星と牽牛の彦星の位置を確かめながら夏の夜の星座を見るのは素晴らしい習慣と思うのです。

私は小さい頃、七夕の夜に限って、織女星と彦星の星そのものが動いてお互いに接近し、天の川も七夕の夜しか見えないものとばかり思っていました。私のように、星が勝手に動くなどと考えるこどもたちはいないとは思いますが、案外、天の川が七夕の夜しか見られないと思っている人は多いのではないでしょうか。そう思っているこどもたちは、七夕の日が雨や曇りで天の川が見られないとその年はもう天の川を見ようとしなくなってしまうのではないかと思うのです。

こどもたちに科学に対する興味を抱かせるには、日本の将来にとって大切なことです。そのためにも、七夕の日に天の川や、織姫星のこと座のベガ(上の画像で赤い矢印で示す)、牽牛星のわし座のアルタイル(上の画像で白い矢印で示す)、そして織姫星と牽牛星を見守るかのようにその間に位置する白鳥座のデネブ(上の画像で青い矢印で示す)を確認し、これらの三つの星の点を線で結すんで得られる三角形が「夏の大三角」と呼ばれることを自らの目で確認するとこどもたちの興味が増していくと思います。

そして、この天の川が実は太陽のような大きな恒星が数千億もある星たちの集団である銀河系で、星がが重なり合うため白く帯状に見え、そしてその大きさが直径約10万光年、厚さ3万光年もあることを両親や先生がこどもたちに教えたら彼等は目を輝かすことと思います。更にこの距離を表す1光年が、仮に地球からロケットで理論的な最高限界の光の速さ(=30万km/秒=1秒間に地球を7周半する速さ)で1年かけて飛行した距離で9.5兆kmになること、これは太陽と地球の間の距離(AU=1.5億km)の62,000倍(=62,000AU)に相当し、銀河系の直径の10万光年はその10万倍の620億AU、つまり太陽と地球の 620億倍という物凄い距離だと言うことを教えたら彼等は更に驚くことと思います。

そして、もっと凄いことはこの広大な銀河系も全宇宙からみれば、無視できるほどのほんの一握りの小さな集団でしかなく、全宇宙の広さは150億光年、つまり銀河系の15,000倍に相当し、太陽と言えども全宇宙を視野にして電子顕微鏡で覗いても小さすぎて見えないレベルであることを考えると、宇宙の広さが実感として伝わってきます。七夕は、こんなことを、大人もこどもも一緒に考えてみる絶好の機会だと思います。是非、旧暦で七夕の行事を行ってもらいたいものです。


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