−日記帳(N0.1316)2005年07月18日− −日記帳(N0.1317)2005年07月19日−
英国の同時多発テロに思う(2)
英国の同時多発テロに思う(3)


彼等4人に共通しているのは、イスラム教徒、英国籍取得ということです。年齢やその経歴からみて、テロを行うために計画的に英国籍を取得したとは考えられず、なんらかのきっかけで英国籍を取得してからテロを行うことになったものと思われます。従って、何が彼等を自分の命を犠牲にしてまでもテロを実行する思いに駆り立てたかを分析することが、今後この種のテロを防ぐ上で極めて重要なことになります。

今後、スコットランドヤード(ロンドン警視庁の愛称で日本の警視庁と同様に首都のロンドンの治安を司る3万人以上の大所帯)が、彼等の過去を徹底的に調査して分析するものと思われますが、心配なのは彼等の母国でもあるパキスタンなどのイスラム諸国があまり協力的でないと言うことです。英国のブレア首相が「パキスタンはテロの温床」と非難すれば、パキスタンのムシャラフ大統領は「彼等がテロ活動したのは英国であり、それを野放しにした英国にこそ責任有り」とやり返す始末です。いまだにビン・ラディンを英雄視する風潮のあるパキスタンに、アルカイダを頂点とするテロ組織の活動を徹底的に取り締まる意思が有るとは私には思えないのです。

しかし、一方でムシャラフ大統領が指摘するように、英国にも今回のように、英国籍のイスラム教徒が テロ活動しやすい環境が有ったことは否定できないと思います。私には英国人の知人も居りませんし、英国での在留経験も有りませんので、英国及び英国人の何たるかを語る資格は有りませんが、英国人の宗教に対する考え方に、間違っているかもしれませんが少し触れてみたいと思います。

英国人はイスラム教に限らず宗教には寛容かつ柔軟な態度を取ると言われております。それは、一夫多妻主義の英国・国王ヘンリー8世が自分の離婚を認めないローマ法王庁に反抗して英国からカトリックを廃し、英国国教会を設立した歴史が物語るように、英国人は宗教をプラグマティック(実用主義的に)に捉える傾向が強いと言われ、キリスト教徒でも教義を生活の中まで取り込むことは少なく、他のキリスト教国の欧米諸国のように、毎週日曜日に教会に行く風習は無いとさえ言われております。

従って、英国内にイスラム教徒が多くいて特に抵抗を感ずることもなく、またイスラム教徒を直ちにテロリストと考える人も少ないこともあって、英国に住むイスラム教徒は年々増えて、現在では全人口の約3%に相当する約200万人に達していると言われております。実際に、この4人の犯人たちも周囲の英国人たちとトラブルを起こした形跡はないと報道されております。


それでは、英国人たちとトラブルを起こすこともなく英国社会に溶け込んでいたと思われる彼等4人が何故、このようなテロに走ったのでしょうか。そこには、生まれた時点で将来像がある程度決ってしまう伝統的な身分制度が残る英国社会では、移民にとっては溶け込むことは出来ても英国人と対等に競い合って勝ち抜くことは出来ないように思われます。

彼等4人の中でもタンウィール容疑者は、父親が英国の国民食「フィッシュ・アンド・チップス」の店を経営し、自分も大学院まで進学するほどに経済的に恵まれているのにも関わらず、その英国社会に反旗を翻しております。それは、パリでダイアナ元王妃とともに交通事故死したロンドンの老舗百貨店ハロッズやパリの一流ホテル、リッツのオーナーで世界有数の富豪のエジプト人、モハメド・アルファイド氏ですら英国籍取得を拒否されたり、社交界でも相手にされなかった経緯が有ることから判るように、よそ者を相容れない一面も有るようです。

恐らく、こうした一面を彼等は共通に感じ取ったところへ、アルカイダ等のテロ組織が目をつけて巧みにテロ組織に誘い込み、洗脳教育を施したものと思われます。しかし、その結果自爆テロを承知するほどまでに先鋭的な組織の一員にまでなったとはどうしても私には思えないのです。特に、最年長のモハメド・サディク・カーン容疑者にはまだ生まれたばかりの可愛い娘さんがおり、そんな家族を見捨てて自爆に走ることはとても私には考えられません。

そして、監視カメラに写っていた彼等の姿にはこれからハイキングに出かけるような雰囲気が漂っており、例えテロを実行するにしても、いずれ逃げ延びて再び元の平穏な生活に戻るのではと思わせるものが有りました。つまり、彼等のリュックサックに収納されていた爆弾には本物の時限装置が付いていたか起爆装置、あるいは時限装置の付いていない起爆装置のいずれかが装着されていたものと私は推測します。

彼等は爆弾の専門家では有りませんので、リュックサックの中味を自らチェックしてその起爆のしくみを習得していたのではなく、指示者から爆弾に入ったリュックサックを与えられ、起爆スイッチを指定時刻に押すように指示されていたものと思われます。そして、その時指示者は「このスイッチを押したら00秒後に爆発するからその間にその場所から離れなさい」と言ったのではないでしょうか。しかし、現実は押した瞬間に爆発したと私は推測します。ハシブ・フセイン容疑者は、このことに薄々感ずいてスイッチを押すのに躊躇したため1時間近く遅れ、実際にリュックサックの中を覗き込んで迷っているところを目撃されております。荒唐無稽かも知れませんが、このように推測することで彼等の行動を理解することにしました。


前 頁 へ 目 次 へ 次 頁 へ
inserted by FC2 system