−日記帳(N0.1330)2005年08月01日− | −日記帳(N0.1331)2005年08月02日− |
スペースシャトル物語(3)
(人工衛星は何故落ちてこないの?) |
スペースシャトル物語(4) (どうして耐熱レンガが剥がれるの?) |
「人工衛星や天然衛星の月は何故落ちないの?」と言う素朴な疑問を投げかけられたことが有りますが、これはたまたま高校時代の物理の試験問題でしたので、今でも答えることが出来ます。 地球の質量を M 人工衛星の質量を m 地球の半径をr 重力加速度定数をGとすると、人工衛星には地球から GMm/r^2 の引力が働いておりますので、このままでは人工衛星は引力により地上に落下してしまいます。 もし、人工衛星を v の速度で地球を周回させますと、人工衛星には mv^2/r^2 の遠心力が働きますので、 GMm/r^2 = mv^2/r^2 が成立すれば人工衛星は落下しないで地球を周回することが出来ます。 そしてその速度vを求めると、 v = √(GM/r) = √(6.6720×10^(-11)×5.974×10(24)/ 6.378×10^(6)) = √(62.5×10^(6))=7.9[km/s] この速度、v1=7.9km/s が第一宇宙速度と呼ばれているものです。 一昨日、地球の引力から離脱するためには第二宇宙速度 v2=11.2km/s 以上の速度が必要であることを説明しました。 従って、スペースシャトルは第二宇宙速度で地球の引力から離脱した後、水平方向、言い換えれば地球の接線方向に向きを変えて減速して第一宇宙速度にすることによって地球を周回する軌道に乗り、高度450kmの国際宇宙ステーションにドッキングして船外活動を行います。 ここで、スペースシャトルと国際宇宙ステーションが地球を周回する時間(周期T(秒))を計算してみます。 スペースシャトルは半径r(m)の円周(2πr)をT(秒)かけて運動するので、 速度v(m/s)は v = 2πr/T 高度をh(=450km) 地球の半径をR(= 6,387m)とすれば r = h + R よって T = 2πr/v = 2π(450 + 6,387)/v = 42,936/v v = v1=7.9km/s(第一宇宙速度)とすると、 42,936/v = 42,936/7.9 = 5,435(秒) = 90(分) つまり、スペースシャトルと国際宇宙ステーションは約1時間半で地球を一周するという計算結果が得られましたが、これは事実と一致しております。このように宇宙空間での運動が万有引力により計算した結果と一致していることを、このように自分で計算して実証してみるのも結構、楽しいものです。 ところで、人工衛星の中には気象衛星のように静止しているように見える静止衛星が有ります。勿論、静止しているわけではなく、地球の自転周期(=24時間)と同じ周期で周回しているため静止しているように見えるわけです。このように、人工衛星は地球を周回することで得られる遠心力で地球からの引力を相殺しているわけですが、僅かに存在する浮遊物、月や太陽からの引力などの影響などを受けて徐々に速度が落ちやがてバランスが崩れて地上に落下してしまいます。 それを防止するために人工衛星に内臓されているエンジンで増速しますが、燃料が尽きれば最終的には地上に落下して寿命が尽きます。つまり、人工衛星にも寿命が有るわけです。一般には寿命は打上げから10年〜15年程度です。小さい衛星は落下する途中で大気圏で燃え尽きてしまいますが、大きな衛星は燃え尽きないまま落下しますので危険ですので、事前に落下区域を推定して予告する場合も有ります。将来、宇宙ステーションの寿命が尽きた時、どのような処置を採ることになるのか興味が有りますが、 それを云々するのは時期尚早のようです。 |
米航空宇宙局(NASA)は、米東部時間26日午前、フロリダ州ケープカナベラルから、野口聡一さんら7人の宇宙飛行士が乗るスペースシャトル、ディスカバリー号を打ち上げ、所定の軌道に乗せることに成功しました。ディスカバリー号はその後、地上450kmにある宇宙ステーション(ISS)にドッキングしてステーション建設資材の搬入、コロンビア号事故後に導入された新たな安全対策や断熱材補修技術の検証などを船外活動を現在行っております。 今回のディスカバリー号の打ち上げは、2003年のコロンビア号の事故以来、2年半ぶりで、今月8日に帰還する予定となっております。今回は、ディスカバリー号の断熱タイルに話題が集中しておりますので、このことをついて今日は採り上げてみたいと思います。 宇宙は、殆ど真空状態ですので太陽に面する側は100℃以上の高温、その反対側は零下270℃前後の極低温になりますから、スペースシャトル本体の外壁は厳重に断熱する必要が有ります。そして、地球帰還時には空気との摩擦熱で1,000℃以上の高温に晒されますので、断熱層の外側に耐熱タイルを貼る必要が有ります。 1,000℃以上の高温に耐える材質はセラミックスしかありませんが、通常の建材用タイルではそれだけの耐熱性が有りませんので、私の想像ですが、多分炭化珪素、窒化珪素等のファインセラミックスを軽量化と耐衝撃性を向上させるためにフォーム状にしたものを耐熱タイルに採用しているものと思われます。 この耐熱タイルが飛行中に剥がれたり、損傷する抑えることは以前から判っており、NASAは完全に防止することは不可能としながらも、問題を起こさないほどに最小限に留めることをスペースシャトルの飛行のたびに課題としてきました。しかし、今回も耐熱タイル損傷の原因となる外部燃料タンク外面の断熱材が剥がれ落ちていく様子が外部燃料タンクに取り付けられたカメラで捉えられ、更に船外活動で点検した結果、耐熱タイルが38mm程度剥離しかかっていることが判明しました。 2年半前の2003年2月に、スペースシャトル、コロンビア号が、耐熱タイルの剥離により断熱が効かなくなり、大気圏突入時にスペースシャトル内部が1,000℃以上の高温に晒されて爆発し空中分解するという悲劇が起こったことから、耐熱タイルの剥離防止対策を徹底的に行って万全をそれを物語るように、期していただけに、この事実はNASAにとってはショックだったようです。今後のスペースシャトル今後の打ち上げは、この問題が解決するまで凍結すると発表しております。 耐熱タイルが剥がれる原因は、外部燃料タンクの外面に張られているポリウレタン製の断熱材から剥がれ落ちた破片の接触と考えられており、模擬実験でも実証されております。この断熱材は、電子機器類などの包装に使われているあのフワフワのスポンジ状のクッション材ですから、地上ではこれが製品に当たっても製品が損傷することは有り得ません。しかし、第二宇宙速度の11.2km/s(時速4万キロ)の猛烈な速度になるように加速して飛行しているスペースシャトルから剥がれ落ちた断熱材の破片はこれに近い速度で耐熱タイルに当たった場合は大変なことになります。 何故なら、物体の運動エネルギーは質量と速度の自乗に比例しますので、仮に断熱材の破片の重量が耐熱タイルの1/100だったとしても、速度が第二宇宙速度の1/10としても地上で5mの高さから落下した時の速度の200倍に相当しますから、1/10×200×200=400 より、400倍の衝撃が耐熱タイルに加わることになり、耐熱タイルが損傷することは充分有り得ることになります。幸い、今回の耐熱タイルの損傷は軽微で8日に予定されている帰還には問題無いとのことですので、安心しましたが、次回のスペースシャトルの打ち上げまでには、何としてもこの問題を解決して欲しいものです。 |
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