−日記帳(N0.1350)2005年08月21日−
こんなはずではなかった造反組
−日記帳(N0.1351)2005年08月22日−
選挙の行方を数字で占う


郵政民営化法案の参議院での採決の前は、「今度こそノックアウトだ」とこぶしを上げて息巻いていた亀井静香さんにひと頃の元気が無く、専ら小泉総理への反論、罵倒ばかりで、聞きようによっては愚痴、怨み節にも聞こえ哀れさえ誘うようです。他の造反議員も同じような態度を示しており、一応、正々堂々と戦うまでと冷静さを保っておりますが、心中は穏やかでないと思います。

共通している腹のうちは「こんなはずではなかった」ではないかと思います。亀井会長の言葉を信用して行動をともにした亀井派造反議員たちには特にその思いが強いのではないかと思います。要するに、彼等はこの政局を読み違えたわけです。では、何故読み違えたのかを分析してみたいと思います。 まず、彼らは次の方程式が成立するものと考えていたものと思います。

郵政民営化法案+参議院で法案否決 = 内閣総辞職→(1-1)
内閣総辞職 + 首班指名  =  小泉以外の総理誕生→(1-2)
小泉以外の総理誕生+組閣 = 造反勢力入閣・復権→(1-3)

法案否決は総理への不信任とも受け取れますから内閣総辞職も充分有りうること、参議院での採決に関わる問題で衆議院を解散することは通常は有り得ないとの思いも判らないわけではないのですが、小泉総理の性格、郵政民営化への執念等を考え併せると、この方程式(1-1)は所詮、成立すべくもなかったようです。ただ、この方程式が成立すると、(1-2)(1-3)が連鎖的に成立し、造反議員たちにとっては、凋落しつつある旧橋本派復権の夢が叶うまさにバラ色の政局が到来するはずでした。ところが、現実は、内閣総辞職ではなく解散でした。しかし、造反議員たちは、それでも次のような方程式が成立するものと思っていました。

郵政民営化法案+参議院で法案否決 = 衆議院解散→(2-1)
衆議院解散+選挙対策   =   自民党勢力結集→(2-2)
自民党勢力結集+造反議員 =非造反議員と同一待遇→(2-3)

これならバラ色とまではいかなくても、取り敢えず郵政民営化論議は一時休戦して自民党員として選挙を戦えるものと思っていました。特に、先回の総選挙での民主党の大躍進により自民党には危機感が有りますから、(2-1)の自民党勢力結集は不可欠と自民党議員全員が思っていたと思われます。ところが、小泉総理はここで、(3-1)と言う実に巧妙な戦略の方程式をあみ出しました。

衆議院解散+選挙対策 = 郵政民営化是非を問う選挙→(3-1)
郵政民営化是非を問う選挙+小選挙区=賛成候補擁立→(3-2)
賛成候補擁立+造反議員対立 =  造反議員非公認→(3-3)

(3-1)の方程式が成立すると、(3-2)(3-3)とともに連立方程式として成立し、「賛成候補擁立」、「造反議員非公認」と言う解が自動的に得られてしまうのです。これは、造反議員だけでなく、評論家たちも含めて関係者も予想もしていなかったことと思われます。「郵政民営化是非を問う選挙」が錦の御旗のような役を果たして、この旗の元では「賛成候補擁立」、「造反議員非公認」が対になって当然の自民党の選挙対策として帰結してしまうのです。この実に見事な戦略は一体誰が案出したのでしょうか。

これによって、造反議員たちは出馬断念、新党結成、非公認の不利を地元の支援で乗り切る、の三つのグル−プに分裂してしまいました。この結果、全国300の小選挙区の約10%で、事実上、自民党公認擁立候補、造反議員候補、民主党候補の三つ巴による選挙戦が繰り広げられることになります。擁立候補、造反議員候補が共食いして民主党候補が有利になるとの見方が有りますが必ずしもそうはいかないと思います。

何故なら、何時もなら投票所にも行かない浮動層がワイドショー化した選挙戦に興味を抱いて投票所に出かけた場合、民主党候補に投票する確率は低いと考えられるからです。解散直前の造反議員を除く自民党議員と公明党の合計は241名と考えられますので、仮に造反議員が全勝しても自民党と公明党が現状維持を確保すれば数字的にはギリギリで過半数を確保して反小泉勢力に勝てることになります。選挙に勝つこともさることながら、造反議員を自民党から追い出そうとする小泉総理の執念は凄まじい限りです。


この問題の前提となる解散直前の各党の衆議院議員の数をピックアップしてみます。

・自民党(郵政民営化賛成) 212名
・公明党(郵政民営化賛成)  34名
・  計(郵政民営化賛成)  246名

・民主党(郵政民営化反対) 175名
・自民党(郵政民営化反対)  37名
・共産党(郵政民営化反対)   9名
・社民党(郵政民営化反対)   6名
・  計(郵政民営化反対)  227名

・欠員・その他            7名

・  合       計      480名

この数字をもとに、郵政民営化反対の元自民党議員37名が全員当選して、各党及び小選挙区立候補者が2003年11月の総選挙の時同じ得票数を獲得して解散直前の状態を再現すれば、自民党+公明党の与党勢力は上表のように、246名となって過半数の241名を5名上回り、小泉内閣が再び成立することになります。

ここで、最新の情報を導入して上述の予想を修正してみます。まず、、その後の情勢変化で郵政民営化反対の元自民党議員37名のうち、5名は出馬を取り止めたため実際に自民党公認候補(刺客)と争うのは32名となっております。そして、この32の小選挙区で郵政民営化反対の元自民党議員(造反議員)と(刺客)が半数の16議席を確保し残りを半分ずつ民主党と自民党擁立候補(刺客)が確保するという、充分有り得る現実的な予想を立てますと、自民党+公明党の与党勢力は自民党擁立候補(刺客)8議席分増えて254議席となります。

尚、自民党が単独で過半数の241議席を確保するためには、自民党擁立候補(刺客)が半数の16議席を確保し、欠員・その他の7名のうち4議席を確保し、更に野党3党から9議席を奪うことが必要となり、まず不可能と考えられます。従って、自民党+公明党の与党勢力は246名から266名、つまり256名±10名と予想されます。

民主党が単独で過半数を取るには、刺客と造反議員を全て破って32議席を漁夫の利で確保し、更に欠員・その他の7名も全て確保し、更に他の小選挙区と比例区で自民党+公明党から27議席を奪取することが必要となって、これは自民党が単独過半数を確保することより難しいと考えられます。また、共産、社民を加えても自民党+公明党から12議席を奪取することになり、民主党・岡田内閣の誕生は有り得ないと思われます。


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