−日記帳(N0.1374)2005年09月14日−
05衆院選結果を数字面で分析
−日記帳(N0.1375)2005年09月15日−
05衆院選結果を戦略面で分析


今回の衆議院議員選挙は、投票日がベトナム・カンボジア旅行
の帰国日だったっため、ホテルの部屋ででNHKの国際放送を
視聴することも、また帰国便がテレビモニターの無いベトナム
航空機だったため、機内で日本のニュースを視聴することも出
来ず、開票状況については全く蚊帳の外に置かれておりました。
従って、最終的に党派別の当選者数を知ったのは中部国際空港
のバス乗車場でバス待ちをしている間の携帯からでした。

そして、自民党が全議席の6割強の296票、公明党の議席と合せ
ると、与党として実に全議席の68%強の327議席を獲得したのに
対して、ライバルの最大野党の民主党が僅か24%弱の113議席し
か獲得出来ずに惨敗したことを知って驚愕しました。
この日記帳の2005年08月22日付け「選挙の行方を数字で占う」
で256名±10議席と予想していただけに、私としても全くの
予想外でした。

自民党と公明党合せて過半数確保は99.9%間違いないとして、
215+31=246(議席)を最小限、自民党単独で過半数確保も充
有り得るとして最大限、241+31=272(議席)を考えていまし
たが、この数字も遙かに超える327(議席)は想像も出来ない
結果でした。恐らくマスコミも評論家も予想もしていなかった
ことと思われます。
そこで、両党の得票数と議席数の関係を分析してみます。

      得 票 数(万)

    小選挙区 比例区  合  計
自民党   3,252    2,589    5,841
民主党   2,480    2,104    4,581

      議 席 数
      
    小選挙区 比例区  合  計
自民党     219       77      296
民主党      52       61      113

   1議席確保に要した得票数(万)  
 
    小選挙区 比例区  合  計
自民党     14.8    33.6     19.7
民主党     47.4    34.5     40.6

ここに驚くべきデータが得られました。
両党の1議席を確保することに要した得票数において信じられ
ないような格差が認められたのです。
自民党の場合、1議席確保に要した得票数が19.7万票だったの
に対し民主党の場合は 40.6万票で2倍以上だったのです。
これは、「小選挙区比例代表並立制」という今回の選挙制度に
その原因が潜んでおります。

小選挙区で獲得した得票は落選した場合はムダ票になることが
その最大の原因で、両党はほぼ同じぐらいの候補者を立ててお
きながら、民主党は自民党の1/4しか当選者を出すことが出来な
かったことから自民党の3倍ものムダ票を作ってしまいました。
また、自民党では重複候補が小選挙区で当選するケースが多か
ったため、比例区の名簿順位が本来なら落選圏内の低い候補者ま
でが当選するという異常事態も生ずることになってしまいました。



今回の衆院選は自民党の歴史的な圧勝で終わりましたが、言い
換えれば小泉戦略の大成功でもありました。
政党別の公示前と選挙後の議席は次の通りです。

          公示前 → 選挙後  増  減
自  民   212 →   296    +84
民  主   177  →   113     -64
公  明    34  →    31     - 3
共  産       9  →     9       0
社  民       5  →     7     + 2                                                                         国民新党       4  →     4       0
新党日本       3  →     1     - 2
諸   派       1  →     1       0
無 所 属      32  →    18     -14
郵政反対      30  →    13     -17
合    計     477  →   480     + 3   

自民党の+84の増分は、民主党の-64 と郵政反対派の -17 がそ
の主な内訳で、自民党は民主党と郵政反対派の双方に勝利した
ことになり、その敗因は共通して戦略の欠如にあると思います。 
岡田代表や亀井静香氏が口汚く小泉総理を罵れば罵るほど得票
が減っていくことに気付かなかったことが悲劇の始まりでした。

小泉総理の戦略は実に見事でした。
まず、郵政民営化法案が参議院で否決されて廃案になった時点で
断念するかその責任をとって内閣総辞職するのは筋と思われてい
たのに彼は衆議院を解散してしまいました。普通ならその筋違い
を郵政賛成派の自民党議員、マスコミから糾弾され更には有権者
の反発を招いて自民党執行部は窮地に陥り、選挙戦略をたてよう
が無かったはずでした。

しかし、ここで小泉総理は、
「郵政民営化、是か非かをこの選挙を通して直接国民に問う」
という基本方針を打ち出しました。判りやすいけれどもごく
平凡な文言のこの方針には、実は民主党、そして郵政民営化
反対の自民党造反議員たち双方に致命的なダメージを与える
魔力が秘められておりました。

民主党は郵政民営化には三党合意した経緯が有り、本質的に
は賛成に近い考え方を持っていたのが、支持基盤の官公労へ
の配慮から反対にまわったことに加え、具体的な対案も示し
ていなかったために、郵政民営化是非論で自民党と対決して
も、到底勝ち目は有りませんでした。そこで、民主党は郵政
民営化論議を回避して年金問題を取上げましたが、これまた
根拠に乏しい対策に終始しました。

一方、郵政民営化是非を直接国民に問うためには、全ての小
選挙区で郵政民営化賛成の立候補者をたてる必要が有ります
から、自民党造反議員が立候補する30選挙区において、自民
党造反議員を非公認とし、自民党公認の候補者を擁立する
いわゆる「刺客」を送ることが、本来なら「仁義無なき戦い」
になるところが「大義有る戦い」と見做され、マスコミや有
権者にも当然のこととして受け入れられてしまいました。

道路公団改革をはじめ小泉内閣が行なおうとした改革が自民
党内の抵抗勢力の反対に遭で挫折してており、造反議員の大
半がこのような抵抗勢力で占められいることに有権者が辟易
していたことも造反議員たちに不利に働きました。

民主党の選挙スローガン「日本を、あきらめない。」は何と
言うピント外れで現実離れの愚作でしょうか。先進国の中で
も税金の安さ、医療費が安さ、年金が高さで際立っている豊
かな日本を国民があきらめているとでも言うのでしょうかか。
確かに財政破綻し、国民に巨額の借金をしておりますがこれ
は小泉内閣の失政と言うよりも長引く不況下での税収不足を
増税で補充することを控えてきた経緯によるものと思います。

こんなスローガンの下、ライバル政党を非難することに終始
し、官公労に配慮して思い切った改革案を提示できない寄り
合い所帯の民主党の実態を賢明な有権者は見抜いていました。



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