−日記帳(N0.1380)2005年09月22日−
ハリケーンと台風
−日記帳(N0.1381)2005年09月23日−
ハリケーン災害は米国への警鐘


今日22日の、米国東海岸に接近中のハリケーン「リタ」

このところ、米国東海岸でのハリケーンと日本の太平洋側近海での台風が話題になっております。日付変更線の東経180度以東の東太平洋、北大西洋西部やメキシコ湾、カリブ海などで発達した熱帯低気圧で最大風速が毎秒32.7m以上のものを「ハリケーン」、東経180度以西の西太平洋や南シナ海などで発達した熱帯低気圧で最大風速が毎秒17.2m以上のものを「台風」、インド洋などで発生したものをサイクロンと呼んでおりますので、ハリケーン、台風、サイクロンは同じものです。ただ、最大風速が毎秒32.7m以上と毎秒17.2m以上の違いからハリケーンの方が台風より強かったり、大きかったりする場合が多くなるわけです。

英語の「タイフーン」は、ハリケーンと同じように最大風速が毎秒32.7m以上の熱帯低気圧と定義されておりますので、毎秒32.7m以上の台風を指しますので曖昧な定義となり、通常は使われません。また、ハリケーンが台風になる場合も有ります。例えば、1999年に東太平洋で発生したハリケーン「ドーラ」は 有ろうことか、東経180度を越えて台風の縄張り西側の領域に入り込んで台風11号と名前を変えたことがありました。逆に、北海道沖で衰えて熱帯性低気圧になった元台風が再び勢力を盛り返して米国西海岸に接近した事例は有りますが、ハリケーンになるためには最大風速が毎秒32.7m以上が必要なため、結局ハリケーンになり得ず消滅してしまいました。それでは、ここでハリケーンや台風が発生するしくみを考えてみたいと思います。

夏、太平洋やカリブ海などで海水温が27℃を超えると海面からの蒸発が活発になります。水蒸気は空気より軽い気体ですので上昇気流となって上昇していきます。5,000m以上に達すると気温が零度以下になるため水蒸気は凝集して水や氷の微粒子になり雲になります。雲は液体の水やや固体の氷ですから、本来なら直ぐに落下して雨や雪などになるはずですが、その落下速度と上昇気流が釣り合って白い雲の状態で空中に浮くようになります。

そして、その雲の塊の中心部では、凝集の際に凝固熱により熱が放出されますので空気が暖められて気温が上がりますので空気の密度が低くなって気圧が低下し、やがて熱帯性低気圧に発達します。すると、気圧の低い中心部に向かって周囲の気圧の高いところから風が吹き込みます。その場合、北半球では地球の自転によるコリオリの力によって中心に向かっていた風は右に曲げらる結果、反時計回りの渦が発生することになります。そしてこの渦は偏東風に乗って西に向かって進みながら、次の海面からの蒸発によりエネルギーの供給を受けて発達していきます。

日本などに接近する台風は、最初偏東風にのって西に向かいますが日本列島に近づくと今度は偏西風の影響を受けて北から東に進路を変え、海水温が低くなるにつれて勢力を弱めやがて温帯性低気圧に変わります。このように、台風の場合は日本に接近する頃は勢力が弱まっておりますが、ハリケーンの場合は勢力を増して直ぐにフロリダ半島からメキシコ湾の米国東部海岸に上陸しますので、先回の「カトリーナ」今回の「リタ」のように大きな被害を及ぼすことになります。次に示すように、台風は大きさと強さで区分しているのに対し、とハリケーンは大きさは問わずに強さと潮の高さで区分しております。

   台風の大きさと強さの区分
  大 き さ       強  さ
(風速15m/s以上の半径:km) 最大風速:m/s)

・超大型 800km以上   ・猛烈な  54m/s以上
・大 型 500km〜800km ・非常に強い44m/s〜54m/s
・表示無 500km未満   ・強い   33m/s〜44m/s
                        ・表示無   33m/s未満

  ハリケーンの強さと潮高の区分
カテゴリ     風の強さ     潮の高さ
        (風速:m/s) (通常時に比べて) 
カテゴリ1    33m〜40m     1.3m〜1.6m 
カテゴリ2    40m〜49m     2.0m〜2.6m 
カテゴリ3    49m〜58m     3.0m〜4.0m
カテゴリ4    58m〜70m     4.0m〜6.0m 
カテゴリ5    70m以上      6.0m以上  

今回のハリケーン「リタ」は、最強のカテゴリ5で、
1988年の「ギルバート」(888hPa)、1935年の「ミ
ランダ」(892hPa)に次ぐ898hPa、風速70m/sの3番
目の勢力になりました。 

日本を襲った台風でも、「伊勢湾台風」は台風になって二日目
の最盛時には、894hPa、最大風速75m/sでしたから、「リタ」
と同程度の勢力でしたが、潮岬付近に上陸したのは更にその三
日後で勢力は929hPa、最大風速45m/sに衰えておりました。 
その点、ハリケーンは最盛時になって直ぐに上陸するので日本
に上陸する台風より甚大な被害を与えることになります。
もし、伊勢湾台風が最盛時の勢力で上陸していたら、ハリケー
ン「カトリーナ」を上まわる想像を絶する被害をもたらしたも
のと思われます。創造主が日本列島を、雪を与え、程々に台風
も与えて全国的に稲作を可能にするなど、絶妙に配置してくれ
たことに改めて感謝したい気持になりました。

今日、23日のハリケーン「リタ」

昨日の日記で述べましたように、台風は海面からの水の蒸発によって発達していきますから、海水温が高くなるほどハリケーンや台風が発生しやすく、また強くて大きくなりやすくなります。今年のカリブ海での海水温が例年より2℃前後高くなっていることが衛星画像で判っております。その原因が地球温暖化によるとの説が世界各地で発信されておりますが、米国政府はこれを無視しております。

地球温暖化の原因と考えられる二酸化炭素を先進国が中心になって削減目標を設定して削減することを取り決めた「京都議定書」に、米国はクリントン政権当時は加盟していたのですが、二酸化炭素と地球温暖化との因果関係に根拠が無いこと、中国、インド等の大量石油消費国を発展途上国として削減義務を負わせないことが不合理として、日本、EU、ロシアなどが加盟・批准したのに、ブッシュ政権発足と同時に「京都議定書」から脱退した経緯から米国は無視せざるを得ないのです。

しかし、近年の異常気象、特に台風、ハリケーンの発生件数の増大、巨大化がともに顕在化しつつあり、少なくともその原因として海水温の上昇はもはや否定できない事実であり、その海水温の上昇に地球温暖化が関与しているのではとの説は説得力を帯びてきているように思われてなりません。実際に今年のカリブ海での海水温が例年より2℃前後高くなっていることが衛星画像で判っております。

全世界の石油消費の約1/4を占める米国が自国の利益を優先させて、二酸化炭素削減に非協力的態度をとることも許せないことですが、米国政府が抜本的なハリケーン対策を行なっていないために、自国だけでなく、他国にも迷惑をかけていることを採り上げてみたいと思います。それは全米の石油精製施設の47%がハリケーンの通り道になっているメキシコ湾内に集中していることを歴史的に野放しにしていることです。これらの施設が昨年のアイヴァン、今年のカトリーナ、そしてリタによって操業停止を余儀なくされ国際石油相場の高騰を招いていることは周知の事実です。

日本では、このような石油精製施設は、川崎、四日市、水島などに分散したり、ゼロメートル地帯には高潮防波堤を造ったり、高圧線が風に揺られてショートして停電や火災の原因にならないように絶縁体を橋渡しするなどの対策を採っております。スノー米財務長官はハリケーンは米の経済成長の支援要因になるとの見解を示しておりますが不見識も甚だしい暴言だと思います。米国はまず、京都議定書に再加盟し、石油精製施設の保全対策の法的処置などを早急に行なうべきと考えます。近年の一連のハリケーン災害は、米国に対する神からの警鐘と思います。


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