米国という国は実に勝手な国だと思います。世界一の野球大国でありながら、再三にわたるIOCからの要請を拒否して五輪の野球競技にMLBの主力米国人選手の参加に消極的な態度をとり、2012年のロンドン大会から野球競技を廃止するとの報復処置を受けると今度は米国主導でWBC構想を、日本、キューバ、韓国等の野球人気の高い国々に押し付けてきました。
野球の国際大会には五輪の他にIBAF(国際野球連盟)が主催する「IBAFインターコンチネンタルカップ」が有ります。これは、1938年に米英の対抗戦という形で発足し、後にキューバなど中米諸国が参加国の中心となり同地域で開催されておりましたが1974年のアメリカ大会を皮切りに、1978年にイタリア、1980年に日本で開催され国際大会として発展していきました。
日本は1972年のニカラグア大会から参加しておりますが米国と同様に、プロの一流選手が国内のペナントレースを重視して殆んど参加しなかったためプロリーグの無いキューバの独壇場となり36回のうち24回も優勝をしております。
そのため、米国の優勝も僅か2回に留まり、アジアでの優勝は1982年の韓国の1回のものみで、日本は14回参加しながら1982年に決勝に進出して韓国に敗れての2位が最高の成績となっております。
このような情勢のもとで、米国は五輪、IBAFに代わる野球の国際大会を米国主導のもとで開催することを目論み、MLBのパド・セリグコミッショナーが発起人となり、ヤンキースオーナーのスタイン・ブレナーの反対を押し切って選手会の了解を取り付けてIBAFのワールドカップとは別に、MLB選手の出場を前提とした真の世界一決定戦となる国際大会(ワールド・ベースボール・クラシック、略称WBC)の2005年春の開催を日本、韓国等に提案してきました。
しかし、この提案内容は殆んどの利益を米国に吸い上げるという不公平なものであったため、日本、韓国の猛反発を受け、2006年の春の開催に修正されました。その後もMLB主導の大会運営に対する日本側の猛反発が続いたものの、MLB側が参加の回答期限を2005年6月末まで譲歩したことなどで日本野球機構 (NPB) も渋々折れ、更に、開催時期がオープン戦を行いながら調整することもあって最後まで参加を拒否していた日本プロ野球選手会も、NPB側が出場手当や故障時の年俸補償といった条件が見直されたことからNPBの説得に応じたことから正式に日本の大会参加が決定しました。
しかし、まだまだ問題は残っております、最大の問題はキューバの参加可否です。米財務省は昨年12月中旬、国交がなく、経済封鎖中のキューバの入国を拒絶すると発表しました。その主な理由が大会出場国に分配金が支払われることにあったため、キューバは分配金を昨年8月末、米南部を襲ったハリケーン「カトリーナ」の被災者に寄付すると明言したことを受けてMLB側が再度、キューバ代表の入国を政府に要請したものの進展を見せていないからです。
そこで、IBAFのノタリ会長は「オリンピック憲章」を引き合いに出して、「政治や人種、宗教に基づく(国や個人に対する)差別は受け入れられない」と表明して「IBAFはそうした五輪精神を尊重しない大会を認めることはできない」と厳しく米国を批判し、もしキューバが参加出来ない場合は、国際大会としての認可を取り消し加盟国にWBC大会への不参加を命じる可能性が有ることを示唆しました。米国を含めた16の国と地域は全てIBAFの加盟国ですのでこの命令が発動された場合は事実上、WBC大会の開催は事実上不可能となります。
1次リーグの暫定メンバー30人を登録する期限は1月17日で、右頁に示すように3月3日には東京ドームで日本や韓国などアジアの4チームによる1次リーグA組もスタートしますので、この問題を米国の責任に於いて登録期限までに解決する必要が有ります。更に、松井、井口等MLB選手の出場辞退による戦力と結束力の低下が問題となります。また、決勝戦が米国で3月20日に行なわれるため、3月25日から始るパ・リーグの開幕に相当支障を与える恐れが有り、特に主力選手を8人も出しているロッテとしては忌々しき問題になりかねません。米国の身勝手な企画に振り回されているのが実態です。 |