−日記帳(N0.1491)2006年01月13日−
野州高校物語(3)
(決勝戦までの戦跡を辿る)
−日記帳(N0.1492)2006年01月14日−
野州高校物語(4)
(高校サッカー史に残る名勝負の決勝戦)

1回戦修徳(東京B)戦(○2-0 修 徳)
初戦の固さから前半は攻めあぐねたが23分にMF楠神が右サイドをドリブル突破し、相手DFに当たったこぼれ球をMF乾が決め先制、後半は持ち前の速いドリブルや小刻みなパスを駆使して完全にペースをつかみ17分、MF平原のパスを受けたFW青木が得意の左足で決めて2:0で初戦突破。
(画像はゴールを脅かす野洲FW青木)

2回戦(○3-2四日市中央工)戦
38度の熱で完調にはほど遠い平原から出されたノールックパスを青木が同点ゴール、更に1点づつ取り合った同点の後半38分、再び平原からパスを受けた青木がペナルティーエリア内で強烈シュートしGKが弾いたところをMF乾が押し込み勝ち越しゴール。この試合が野州にとって最も苦しかった。
(画像は喜ぶ野州の乾(右)と青木)

3回戦(○4-0高松商)
野洲は前半5分、FW青木の3試合連続ゴールで先制、2回戦で鳴りを潜めた速いドリブルが復活して高松商ゴールに迫り、同25分に相手DFのクリアミスによるオウンゴールで追加点、後半は2トップに切り替た高松商の攻撃に苦しむもGK下西が好セーブでしのぎ終了間際にMF楠神と平原が得点して突き放した。
(画像は強烈なシュートを放つDF荒堀)

準々決勝(△1-1(PK3○1)大阪朝鮮)
野洲は大阪朝鮮の速いプレスに押し込まれ、後半15分に失点したが、その後は持ち前のパスワークを取り戻し同32分、左サイドからのボールをFW瀧川がゴール前に滑り込んで押し込み同点に追いついた。PK戦はGK下西が1本止めるなどして競り勝った。
(画像は抱き合って喜ぶ選手たち)

準決勝戦(○1-0多々良学園)
野洲は後半5分、右サイドを巧みに突破した楠神のクロスを滝川が頭で決めて先制。絶好機のシュートミスもあり追加点は奪えなかったがパスワークで上回って優位に立ち終盤のピンチもしのいだ。多々良学園は前半15分の石田のシュートがゴールバーに当たるなど運がなかった。
(画像は決勝ゴールしたFW滝川)


「こんな素晴らしいサッカーを高校生たちがやってくれた!」国立競技場のピッチに「ピー ピー」と長い笛の音が響き渡った時そんな思いで胸が一杯になりました。喜び合う野州高イレブン、頭を抱えてピッチに座り込む鹿児島実業イレブン、好対照の光景の中にも何か清々しい雰囲気が漂っているように感じられてなりませんでした。自信をもって臨んだ個人技能を伴ったフィジカルが野州に通じず、攻めても攻めてもゴールを奪えないまま延長後半7分、恐らく彼等が見たこともないいうな美しい決勝ゴールを見せつけられた鹿児島実業イレブンは一瞬、異次元の世界にいるのではと錯覚したのではないでしょうか。

野州高は1回戦から、パスワークとドリブルによる個人技で得点を重ねてきました。確かに華麗なパスワークとドリブル突破で1回戦、2回戦を勝ち抜いてきましたがその時点ではまだ野州高のサッカーがこれまでと違っていることは意識されていなかったように思います。しかし3回戦で高松商を4−0と圧倒した試合後のインタビューで、野洲高の山本佳司監督が「セクシーサッカーで日本の高校サッカーを変えたい」と発言したのを契機に、だ野州高のサッカーがこれまでと異なることに周囲が気付き始め、メディアもこれを「セクシーサッカー」と呼ぶようになりました。 私はサッカーのプレーの技術については門外漢ですので、この意味を正しく理解することは出来ませんが、敢えて間違いを犯すことを覚悟した上で次のように考えてみました。

トーナメント方式の高校サッカーは一発勝負のため失点を恐れるあまり攻撃よりも守備に重点を置きます。その結果、自陣でのパス回しからセット攻撃を組み立てていくと、その過程でボールを取られた場合に決定的なピンチを招く恐れが有ることからロングフィードする場合が多く見られます。ところが、野州高はあまりロングフィードせずに、パス回しをしながらドリブルで相手陣内に入りここでヒールによるバックパスも交えながらパスを美しく連鎖させクロスを上げて押し込むスタイルをとっております。ボールとボールが線で繋がりアーチ型の軌跡を描いてゴールに吸い込まれていく様子が美しく、その様子はあたかも女性が裸体をチラリと見せる、あのスリル大胆さに共通するものが有るからではないでしょうか。

第84回全国高校サッカー選手権は1月9日、東京・国立競技場で45分ハーフの決勝を行い、野洲(滋賀)が、連覇を狙う鹿実(鹿児島)を延長戦の末2―1で破り初優勝しました。野洲は前半23分、DF荒堀謙次(2年)のゴールで先制しましたが、鹿実は後半34分にFW迫田亮介(3年)が同点弾。野洲は延長後半7分にFW滝川陽(3年)が決勝点を挙げました。関西勢としては北陽(大阪)以来32年ぶり、滋賀県勢として初の優勝を勝ち取りました。 延長後半7分、野洲のDF田中から約50mのレーザービームによりサイドチェンジして送られたボールは右サイドでMF乾に受け止めらてドリブルで中央に突破され、更に高校生の発想とは思えない驚愕のヒールパスで平原から右サイドに突破されてからMF中川にパスされ、中川からクロスされて綺麗な弧を描いて、ゴール前に詰めたフリーの瀧川の前に届くや瀧川の右足で跳ね返されてごーる左隅に矢のような飛跡を描いて吸い込まれていきました。まさに美しいパスの連鎖と弧と直線の幾何学的美しさでセクシーサッカーは結実して野洲に歴史的な勝利を与えたのでした。


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