−日記帳(N0.1497)2006年01月19日−
新年会でもライブドアが話題に
−日記帳(N0.1498)2006年01月20日−
ITは虚業の意見に反論する


今晩、名古屋市内の居酒屋で大学時代の友人3人と新年会を開きました。彼らは経済的には恵まれておりますので、株式投資などは無縁だろうと思い、昨日のライブドア騒動には触れずに、お互いの近況の情報交換を話題の中心にしようとしたのですが、のっけからライブドアの話題で持ちきりで、結局2時間の殆んどをライブドア問題と株式投資に費やすことになってしまいました。

3人とも株式投資に興味有るどころか、実際にインターネットで売買をしているとのことでしたが、現物取引しかしていないのと、始めてまだ日も浅いこともあって今回のライブドア暴落の実態を理解していなかったようですので、自分もまだ初心者であることを忘れて、何故あのような全銘柄にまで暴落が波及したかのを得々と説明してしまいました。そこで私の勉強も兼ねてその時の説明を、株マニアや専門家の方には笑われそうな内容ですが恥を忍んで以下に纏めてみました。

暴落の初動要因
16日にライブドアの系列会社の粉飾決算の疑いが浮上したとして東京地検特捜部がライブドア、関連会社及び堀江社長等幹部の自宅等への家宅捜査がが行なわれたことから17日はライブドア及びIT関連の同類業種の株を中心に朝方から売り注文が殺到し結局この日は462.08円安の15805.95円で終りました。 特に他に悪材料が出なければ暴落はこの日だけに限定されるはずでしたが別の悪材料が売りを加速して出て翌18日は史上稀に見るジェットコースター暴落を招きました。

暴落の第一加速要因
株の売買には現物取引と信用取引が有ります。現物取引は全て自己資金で、信用取引は証券会社から株やお金をを借りることで信用供与を得て売買します。借りるにはそれに見合う担保を証券会社に差出す必要が有りその担保を持株にする場合が一般的でその担保価値は証券会社によって異なりますが80%前後が多いようです。ただその担保の銘柄の株価が大幅に下がって当初設定した担保価値が目減りした場合はその目減り分を現金や証券等で追証として2営業日以内に証券会社に差出さねばなりません。差し出さないと口座を凍結されたりして大変な事態になりますので万難を排して差しださねばなりません。

ところが、ある証券会社がライオブドアとその関連会社の担保価値をゼロと発表したため、該当する株を担保にしている投資家は他の銘柄を叩き売るしかなくその結果、それらライオブドアとは関係ない銘柄の株価も暴落することになります。「追証」がかかっていない他の投資家たちも、そのような暴落を見越してライオブドアとは関係ない銘柄の持株を売ろうとします。いわゆる狼狽売りです。この狼狽売りが売りを売りを呼んで殆んどの銘柄の株に広がっていくくことにんさり、これが今回の暴落の第一加速要因です。

暴落の第二加速要因
株式の売買は証券会社を通して最終的には東証などの証券取引所に集約されコンピューター処理されます。その殆んどは東証で処理されますが、その処理能力は約定件数で約400万件とされ通常の取引ではこの処理能力をオーバーすることはまず有り得ません。ところが、このように売買が膨らんだ上、ライオブドア株は1株が売買単位のため注文が細分化され、かつ最近はデートレードと言って、1日に何回も売買を繰り返すことも急増して処理能力オーバーし全ての株が売買停止になる恐れが出たため東証は18日の午後にその警告を出しました。

第一加速要因によって売り急いでいた投資家にとっては、もし売買停止になれば売りたい株が売れなくなりますので確実に売れるように低めに指値しますので、益々株価は下落していきます。これが、暴落の第二加速要因で18日に午後になって一時株価が700円を越す暴落を示したのはこのためです。

暴落の第三加速要因
このところ、米国の株価は比較的堅調な上、日本の株価との連動性が薄れておりましたので、ここ暫くは米国の株価の影響を受けることはありませんでしたが、たまたま16日にインテルとヤフーの業績が予想を下回ったことからIT関連の銘柄が失望売りされて下落しました。ライブドアも同じIT関連ということで、この「インテル・ヤフーショック」に連想売りに拍車がかかってしまいました。これが暴落の第三加速要因ですが、前二者に較べればその影響は小さいもののIT関連銘柄に暴落が集中する要因にはなりました。


今回のライブドア騒動に際して、あるテレビ番組でその道では高名なA氏が「やはり、車とかテレビとか、目に見えるモノを作って売る会社こそ健全で、ITみたいな目に見えないわけの判らんモノを売っている会社は虚業で不健全そのものです。その代表が今回のライブドアです。」と得意げに解説をしておりました。>
多分、ご本人はITの意味は充分知りながらもつい口が滑ってしまったことと好意に解釈しますが、このような誤解を招く発言が公のメディアに登場しますと、今回のライブドア暴落で見られたようなIT銘柄の連想売りを助長しますので見過ごすことは出来ません。

この発言の誤りは IT企業≒虚業 という図式です。>
ITは、「Imformation Technology」の略語で「情報技術」と和訳されております。ITには、携帯、パソコン、プリンター、スキャナー、デジカメ等の情報機器を製造販売するハード部門とコンピュータソフトの製造販売、インターネット接続、ポータルサイトの運営等のソフト部門が有ります。ハード部門の会社にはソニー、松下、日立、東芝、シャープ等の世界的メーカーが居並んでおり、IT企業≒虚業とするならばこれらの会社も虚業と言うことになってしまいます。

そして、問題の目に見えないモノが多いソフト部門ですが、まずコンピュータソフトこそ、その実体は全く目に見えません。しかし、もしこれが無かったら我々の現在の生活は成り立ちません。飛行機、船舶、鉄道等の乗り物や機械部品の製造、自動車等の組立てなどはコンピューターで制御されております。列車、航空機、観劇等のチケット販売、出入国手続き、銀行業務、会計業務、株式売買等も然りで、その制御は全てコンピューターソフトで行なわれており、我々の生活の隅々まで入り込んでおります。いくら立派なコンピュータが有っても、ソフトが無かったら何の役にも立ちません。

それでは、問題のライブドア、楽天、ヤフーなどが手がけている仮想空間のポータルサイトはどうでしょうか。殆んどは無料サイトで画面上に表示される広告料金が主な収入源です。パソコンの画面上に見えますがその実体はやはり目に見えないコンピュータソフトです。確かにこれが無くても日常の生活に支障を来たすことは有りません。しかし、判らないことを検索したり、欲しいもの安く購入するためにネットオークションや通販に参加したり、生活に役立つ情報を得るのにポータルサイトは大変便利な存在です。この分野での利用者は殆んどが若い人たちですので、年配の方々には虚業と思われてもしかたない面も有りますが、ネット社会では不可欠な存在となっており決して虚業ではありません。

次にソフトバンクが企画して子会社のヤフーに運営させているADSL等のインターネットの高速接続事業や今後同社が進出する第三世代の携帯事業の実体は目に見えない電波ですが、これも虚業でしょうか。かって日本のインターネット接続は高くて遅かったため韓国やシンガポールに遅れをとりインターネット後進国になりさがってしまいましたが、ヤフーが価額破壊を起してADSLを定着させることで漸くインターネット先進国になりました。しかし、日本の携帯の料金はドコモなどの既存会社の既存権益に守られて世界一高い状態にあります。これをソフトバンクやイーアクセスなどが進出することで、インターネット接続の場合のように、安くて速い携帯を実現してくれたら社会への貢献は大なるものが有ります。

以上のようなIT事業の中には虚業らしきものは一切有りません。多分、A氏はM&Aや3万分割にも及ぶ異常な株式分割などによって自社及び系列会社の株価を吊り上げてきたライブドアの経営戦略を糾弾したかったものと思います。そして、ライブドアの本業がポータルサイト運営のIT企業に属していたため、このような経営戦略をIT企業に共通する戦略と誤解されたのではないかと思います。しかし現実には、今回のライブドア騒動でIT≒虚業との思いが投資家の脳裏を掠めており、ソフトバンク、楽天、ヤフー、日本オラクル、NTTデータ等の正真正銘のIT企業の株価はそのために連れ安しており、そうした企業やその株主にとっては甚だ迷惑なことであり、社会的地位の高いA氏の公の席でのこのような発言は企業や投資家に損害を与えかねず自重して頂きたいものです。


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