−日記帳(N0.1505)2006年01月27日−
京大生の不祥事件に思う(1)
−日記帳(N0.1506)2006年01月28日−
京大生の不祥事件に思う(2)


京大アメリカンフットボール部監督水野彌一氏

国立大学が全国規模のスポーツ大会で優勝することは極めて珍しいことです。例えて言うならば東大が野球で全国優勝するようなものです。もっとも、野球創生期の明冶初頭、日本最初の野球チームは東大の前身の開成学校であり、日本最初の野球の国際試合は東大の前身の旧制一高と横浜在住の外人クラブであったり、ボート競技で東大や一橋大が全国制覇したりしておりますが、太平洋戦争後に主なスポーツ競技で国立大学が全国制覇した事実は殆んど知られておりません。

ところが、ひとつ例外が有ったのです。日本では野球、サッカー、ラグビーほど全国的な人気はないもの米国では野球を凌ぐほどの人気の高いアメリカンフットボールで、東大のライバル的存在の京大が全国制覇(ライスボール)を4回もしているのです。その京大の全国制覇を支えているのが京大アメリカンフットボール部監督の水野彌一氏(66)です。

氏は防衛大から京大工学部鉱山学科入学しなおして卒業後 トヨタに入社してから1971年にコロラド・スクール・オブ・マインズ大学院に留学し、帰国後 株式会社スズキインターナショナル入社するという変わった経歴の持ち主で、現在は同社役員、(株)修英役員、(有)アクト代表取締役、関西学生アメリカンフットボール連盟理事を務めるかたわら、1980年から京大アメリカンフットボール部監督として京大の全国制覇に貢献しております。

その京大のアメリカンフットボール部「ギャングスターズ」の元部員から昨年12月下旬、性的暴行を受けたとして、女子学生2人が京都府警に被害届を出していた事件で、府警捜査一課と川端署は昨日、集団女性暴行の疑いで、元部員の京大生3人を逮捕し自宅を捜索していたことが判りました。 府警によれば3人は共謀して昨年12月23日未明、3人のうち1人が住む左京区のマンションで、「鍋パーティー」に参加した女子学生2人に焼酎などを一気飲みさせ、泥酔した2人に性的な暴行を加えた疑い。3人は焼酎の瓶をルーレットのように回し、瓶の飲み口が向いた人に一気飲みさせるゲームをしていたとのことですが、彼等は合意の上またはその事実はなかったといずれも容疑を否定しているようです。


京大対東大のアメリカンフットボール試合風景

私が敢えて京大生の不祥事をここで採り上げたのは、何も彼らが一流の国立大学の学生だからではありません。東大生を含む国公私立の一流大学の学生の不祥事はこれまでに少なからず報道されておりますし、昨年末の同志社大生による女子小学生の殺人事件もまだ記憶に新しいものが有ります。私が、ここで強調したかったのは彼らが水野監督の薫陶を経た元アメリカンフットボールの有力選手だったからです。

アメリカンフットボール(以下アメフトと略)は、考えられる全ての条件を把握しておいて一瞬にしてその中から最適の行動を判断して実行するスポーツであるが故に、判断力、行動力、体力を一体にする、まさに心技体が揃うことが要求されるスポーツでもあります。勿論、チームプレーが要求される野球、サッカー、ラグビーでも同様のことが言えますが、アメフトの場合は連続プレーの中でボールを確保して次の行動に移すまでに許される時間が極めて短いために一瞬の判断と行動が要求されるわけです。

例えば、野球の場合、打席に立つ打者には、アウトカウント3通り、ボールカウント11通り、走者の数と塁の組み合わせ7通りからなる231通りの場面が有りますので、その場面での最適の行動を得点差、走者の脚力、投手のクセと決め球を考慮して次の投球に対して最適の判断をして行動に移すことになります。野手や投手も同様に次の打者の行動に対して最適の判断をして行動に移すことになります。しかし、アメフトのように連続プレーの中の判断ではなく、投手が捕手とサイン交換して投球動作をする間が不連続となり、この間に選手は緊張感を高めて最適判断を予測することが出来ます。

しかし、アメフトの場合にはその間が殆んど無いために連続プレーの中で一瞬の判断と行動を強いられることになります。そこで、水野監督は部員達に全ての場面を織り込んだビデオを選手たちに何回も、何回も観させて一瞬に判断できる集中力を身につけさせたと述べております。体力や運動神経で京大生がライバルの関学、日大、法政大などの学生に対抗できるとはとても考えられません。その京大がこうした大学や実業団に伍して4回も全国制覇できたのは、水野監督のこのような指導によって頭の良さをフルに活用して集中力を高めることが出来たからに他なりません。

中日ドラゴンズの監督だった星野さんがチームの不成績により中日を追われるようにして退団したことがありました。その時のドラゴンズの選手たちの場面を考えずにプレーする集中力の欠如に腹が立った私は、当時星の監督が運営していたホームページにこのことをやり玉にあげて星野監督に、京大の水野監督を招聘して集中力を高めるトレーニングをするようにアドバイスしたことが有りました。野球を知らない戯言とばかりに烈火のごとく怒った星野監督は私に退場命令を下し、アクセス禁止処分を受け二度とそのホームページにアクセスすることは出来ませんでした。まさにスパム投稿の禁止処分でした。

私は、この水野監督によって鍛えられたアメフト選手だった容疑者たちがこのような破廉恥な行為をすることが残念でならないのです。与えられた場面でベストの行動をすることで集中力を高めてきた結果がこれでは教えた水野監督は勿論、京大のアメフト選手だけでなくライバル校の選手たちも悔しい思いをしていることと思います。

ただ、一昨年に京大・大学院生の金子雅礼容疑者(当時25歳)が女性の下着窃盗、昨年京大2年生の大谷昭宏容疑者(当時20歳)が覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで夫々逮捕され、更に昨年の暮れに京大アメフト部の名QBだった川並仁(22歳)君が自殺するなど暗い事件が続発しており、更には水野監督がアメフト本来の理論的なトレーニングではなく、留年することを前提に「アメフト至上主義、大学の授業は捨ててもよい。」などの勝手な精神論で京大アメフト部を運営していることが今回の事件の温床になっているとの指摘も有ることから、大学側も毅然たる態度で水野監督及びアメフト部に臨むことが必要だ思います。


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