−日記帳(N0.1545)2006年03月10日−
びっくり仰天の買収3件
−日記帳(N0.1546)2006年03月11日−
金融緩和解除に思う


ピルキントン法の製造モデル図(赤い部分が溶融錫)

ネパールから1週間振りに帰国してびっくり仰天したことが有りました。それも同時に同じことが三つも重なっておりましたから驚きも3倍でした。その最たるものが日本板硝子による英国最大の硝子メーカーのピルキントン社の買収でした。私はかって特殊ガラスの研究開発をしておりました関係でこの2社をよく知っているだけにその合併が、私にはまるで子会社が親会社を買収するようなものと思えました。

板ガラスはガラスの用途の中で最大のシェアを占めており、次のシェアの瓶ビンが紙容器やアルミ・スチール容器、更にはペットボトルの出現で次々に瓶ビンメーカーは姿を消していく反面、板ガラスは建築用の窓ガラスに加えて自動車用ガラスの需要が急増したため日本では、旭硝子、日本板硝子、セントラル硝子の三大ガラスメーカーが飛躍し、特に旭硝子はダントツのシェアを誇っておりました。

昭和40年代の自動車の急増により自動車用ガラスの需要が急増しました。ところが、この自動車用ガラスには高い平面精度による透視性、採光性が要求されるため従来のロールアウト法で作られた板ガラスの両面を機械的に磨く必要が有りコスト高になるという問題が有りました。そこで、これを見越して日本板硝子は昭和39年(1964)に英国ピルキントン社からフロートプロセスを日本で最初に技術導入して同社舞鶴工場に新設しました。

フロートプロセスは、ロールアウト法が溶融ガラスを金属板の上に流し込んでロールアウトするのに対し、溶融した金属錫の表面に流し込んでロールアウトする方式を採っております。するとガラスより重い溶融錫の平滑な表面を溶融ガラスが接触しながら進んでいくため溶融錫との接触面には高い平面精度が得られるため磨く必要がなくなりその分コストダウン出来るというメリットが有ります。この方式は英国ピルキントン社が世界に先駆けて開発して特許を独占したため、当時の世界各国のガラスメーカーは挙ってピルキントン社から技術導入をせざるを得なくなり、日本でも旭硝子が鹿島にフロートプロセスを新設するなどしてフロートプロセスはロールアウト法に代わって板ガラスの製造法として発展していきました。

こうして、ピルキントン社は莫大な特許料を獲得して、米国のPPG、フランスにサンゴバンとともに当時世界の三大ガラスメーカーとして揺るぎない地位を得ておりました。しかし、その後英国自動車業界の衰退、サンゴバン等の欧州大陸のガラスメーカーとの競合で苦戦を余儀なくされひと頃に勢いを失ってしまいました。一方、旭硝子は日本の自動車業界の発展に伴って飛躍し、ついにガラスメーカーとして世界のトップに立ちました。

しかし、日本第2位の住友系の日本板硝子は三菱系の旭硝子に一時は売上高で1/4以下と大きく引き離されたため、住友としての意地もあり、このままでは半永久的に旭硝子に追いつくことは出来ないとの判断からか、言わば子会社が親会社を買収するような形で住友の総力をあげてピルキントン社の買収に踏み切ったものと思われます。

米・ウエスチングハウス社は米・GEと並んで原発のプラントメーカーで日本でも東芝、日立、三菱重工などの技術導入先でもあります。その言わば、先生のウエスチングハウス社を生徒の東芝が買収するというのですから、これまたびっくり仰天です。更に、ソフトバンクがボーダフォンを買収するのは武富士が三井住友銀行を買収するようなもので、これまたびっくり仰天で、まさに3倍びっくり仰天しました。


量的緩和解除を発表される日銀・福井総裁/u>

何のことかさっぱり判りません。もっともらしい解説がマスコミで示されているのですが何度読んでも私には判りません。「これまでのゼロ金利政策をやめる」と言うならば判るような気もしますが、量的緩和を解除しても当面ゼロ金利政策は族けると言うのでこれまた判らなくなってしまいました。

つまり、これまではゼロ金利と量的緩和の二つの対策が実施されていたと考えれば、今回はそのうちの量的緩和という対策をやめただけであってゼロ金利はやめないと考えれば判るような気がしますが、それでも量的緩和という意味は依然として判らずじまいです。量的緩和とは日銀が市中銀行に殆んど無利子でお金を貸し出して銀行が企業に融資しやすい環境を作って経済を活性化すると説明されております。

つまり、銀行は我々や日銀からゼロ同然の利子でお金を借りて、企業、各種ローンに2%以上の利子を付けて貸すのですから儲けて当たり前で、現に今期のメガバンクは史上空前の利益を上げております。しかも不良債権の処理に当たっては莫大な 政府融資、つまり我々の税金を銀行に投入しております。早い話、銀行は我々の税金によって不良債権地獄から救われ、更には150兆円にも上ると言われる我々の預貯金の利子収入を犠牲にする日銀のゼロ金利政策で巨額の利益を上げたことになります。

そして、量的緩和によって銀行から融資を受けるはずの企業は、融資を受けることよりも、スリム化を軸に自助努力による建て直しを選択した結果、多くの企業はそれに成功し、業績を回復し自社の株価上場以来の高値を記録している企業も少なくありません。しかし、企業の業績回復で勤労者の給与所得は依然として低く抑えられたままです。

こうして考えていくとこのゼロ金利と量的緩和は勤労者、年金生活者など国民を犠牲にして、銀行を救済し銀行を儲けさせ、企業の業績回復に手を貸しただけであって国民には何の利益をもたらさなかったことになります。日銀・福井総裁は量的緩和解除を発表後の記者会見で「量的緩和という判り難い政策から金利政策という判りやすい政策に転換することになりました」との主旨の発言をしていましたが、量的緩和と同時にゼロ金利解除が出来なかったことに対する国民への謝罪の気持ちが見え隠れしていたように思えたのは私だけでしょうか。


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