講座集 第2章 資源回収・リサイクルに役立つプラスチックスの知識

(5)全プラスチックスの2/3以上を占める4大汎用樹脂

熱可塑性樹脂は分子が鎖状に連なっており熱が加わるとこの鎖と鎖の間隔が拡がって液状になり常温に戻すとその間隔が狭まって固化し鎖が並行に並ぶと結晶化してより強固になります。
ポリエチレンの透明フィルムを引っ張ると白化するのは引っ張り応力で分子が応力の方向に配向して結晶化するからです。

熱可塑性樹脂の90%以上は次の基本形で共通に表されます。

CH2=CHX  →  −CH2−CHX−CH2−CHX−CH2−
 (モノマー)  重合          (ポリマー)

以上のように n 個のモノマーが重合して(CH2−CHX)n で表されるポリマーになります。

括弧内をビニル基、nを重合度、Xを置換基と言い、Xが変化することにより様々なポリマーが誘導されます。
例えば、次の4種類を4大汎用樹脂と言います。

実はこれだけで熱可塑性樹脂の約80%、更に各々の誘導体も含めますと90%を占めますので、全プラスチックスのほぼ2/3以上が4大汎用樹脂とその誘導体で占められることになります。
そして日常のリサイクルの全ての対象品になりますので、ここではこれを主体に説明することにします。

X=H(水素)        →ポリエチレン(PH)
X=CH3(メチル基)    →ポリプロピレン(PP)
X=CL(塩素)       →ポリ塩化ビニル(PVC)
X=C6H5(フェニル基)  →ポリスチレン(PS)

尚、ポリエチレンは高密度ポリエチレン(HDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)に分かれ、 ポリスチレンは耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、AS樹脂(AS)、ABS樹脂(ABS)に分かれますが 詳細は後で述べます。

括弧内のローマ字は業界で統一された各プラスチックスの略称です。

(6)間違った呼び名の第一号「ビニール袋」

4大汎用樹脂の中で一番早く実用化された樹脂はポリ塩化ビニールで、戦後に急速に実用化されプラスチックス時代の幕開けとなりました。 この樹脂は戦後の物資不足の日本で、クロス、シートなどいろいろな形になるため日常品として 愛用され名前も「塩ビ」と愛称され、更に「ビニール」とも呼ばれるようになり間違いの元になってしまったのです。

何故なら、塩ビに続いてポリエチレンやポリプロピレンと言ったプラスチックスがその後続々登場してきたのですが、 塩ビも含めてこうしたプラスチックスをひっくるめて「ビニール」と呼ぶようになってしまったからです。
塩ビは燃やすとダイオキシンが発生する恐れが有るため燃やしてはいけない典型的なプラスチックス として他のプラスチックスと区分する必要が有るのにこの呼び方では区分できないので問題になるわけです。

勿論、塩ビを特定して「ビニール」と呼ぶ場合は正しい呼び方ですが、世間一般で、「ビニール袋」と呼ぶ場合は塩ビ以外のプラスチックスを含めている場合が殆どですのでその場合がが間違った呼び名としました。

後で出てくる「ポリ袋」も、この場合と同様に塩ビを含めて呼ぶ場合を間違った呼び名としております。
塩ビ製の「ビニール袋」は現在ではわずかにパスポートや免許証入れのカバーに使われている程度で、普段見かけるのはポリエTレンやポリプロピレンで作られたフィルム状の袋の「ポリ袋」が殆どですので「ビニール袋」と呼ばれることは日常では滅多無いはずです。

ところが、この塩ビは安くて作りやすい反面、摂氏5度以下になると脆くなり60度以上になると軟化するため温度変化が激しい用途では他のプラスチックスに代替されるようになりました。
更に、成形性を高めるために添加する可塑剤に発ガン性が有るとの報告が出て食器への使用が控えられ、更には燃えると塩酸ガスが発生することから建築基準法で建材への使用に制限されたり、最近は燃焼の際、条件によってはダイオキシン発生の危険性が指摘されるに至ってその使用量は年々減りつつあります。



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