講座集 第2章 資源回収・リサイクルに役立つプラスチックスの知識

(11)間違った呼び名のスチロール樹脂

日本ではプラスチックスをポリエチレン、ポリスチレンのように英語で呼ぶことになっておりますが、何故かポリスチレンだけはスチロール樹脂、発泡スチロールとドイツ語で呼び名される場合があり、これも間違ったプラスチックスの呼び名のひとつです。

ポリスチレンは意外にもポリエチレンより歴史が古く、既に1930年にドイツのIG社で工業化されており、ドイツ語読みされるのもそのためかも知れません。 その後日本にもドイツから輸入され第二次大戦中は通信機器の基板材等に用いられる戦略物資に指定されていたようですが、英国生まれのポリエチレンには性能的に及ばなかったようです。
漸く1950年代になって旭ダウが米国のダウケミカル、三菱モンサントが米国モンサント社から技術導入してから民需用に本格的に使用されるようになりました。

ポリスチレンの最大の魅力は硬くてクリスタルガラスのような美しい透明性優れた成形性、着色性にあり、TVやラジオの部品、台所用品、文具品、化粧品容器類に使われるようになりましたが、脆いこととシンナー等の有機溶剤に弱いことのために用途は限られておりました。 代表的なポリスチレン製品として知られている、あの透明なカセットケースをシンナーで拭いて逆に汚してしまった経験をお持ちの方もおられることと思います。 そこでスチレンにブタジエンゴムを数%混ぜて共重合することにより脆さを改善することに成功し、大型の成形品にも使用できる「耐衝撃性ポリスチレン」が開発され用途は更に拡大していきました。

またアクリロニトリルと共重合することで有機溶剤に強い「AS樹脂」が開発され、使い捨てライターに大量に使われるようになりました。
更に、ブタジエンとアクリロニトリルの両方で共重合することで「耐衝撃性ポリスチレン」と「ABS樹脂」の長所を兼ね備えたもので、三者の比率を変えることで硬いものから柔らかいものまで作ることができ、現在では自動車の内装部品、電気製品やOA機器のケース等に幅広く使われております。 みなさんがお使いのPC、プリンター、スキャナー等は殆どこのABS樹脂で作られているはずです。

(12)使用済みの処置に困った発泡スチレン

発泡スチレンには次の EPS、PSP、XPSの3種類が有ります。

・EPS:パソコンやデジカメのような電気製品やOA機器の緩衝材
     魚市場などで魚を入れる容器はビーズ法発泡スチレン
・PSP:スーパーなどで生鮮食品の鮮度を保つための容器(トレー)
     はポリスチレンペーパー(PSP)
・XPS:主に断熱建材に使用される押し出しボード

発泡スチロールとも言われますが、ここは英語名のスチレンで統一した方がいいと思います。

発泡スチレンは軽くて保温・保冷性もあり、水を通さない上成形しやすいと言う便利な性質を持っておりますので、クッション材や使い捨て容器として広く使われておりますが、ワンユース(一回だけの使用)のため大量のゴミになってしまう上、燃やすと真っ黒な煤を発生しますので特殊な脱煙装置付きの焼却炉でしか焼却できないと言う問題が発生します。

従って、リサイクルをしませんとゴミが大量に発生して大変なことになりますので、リサイクルがメーカー中心に進められ現在では70%近くまでリサイクルされるようになりました。 リサイクルには、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマリサイクルという3通りがあります。マテリアル・リサイクルは、発泡スチレンをを加工してプラスチックに戻し新しい製品に作り変えること、ケミカルリサイクルとは熱や圧力を加えて、元のモノマーの状態(この場合はスチレン)や基礎化学原料に戻してから再生利用すること、サーマルリサイクルは、燃やした時の高温の熱をエネルギーとして利用し発電(ごみ発電と言います)などを行うものです。

発泡スチレンでは、ほとんどがマテリアルリサイクルとサーマリサイクルその割合は3:2ぐらいになっております。マテリアル・リサイクルの代表例として、以前はプラモデルが有りましたが、最近はVHSビデオのカセットケースなどが多くなっております。こうしたリサイクル製品が黒か灰色になっているのは着色したものを消すことが出来ないので逆に着色剤を入れて補色しているからです。



発泡スチレン製のトレーなどの容器は容器包装リサイクル法により分別収集および再商品化の対象となり右のように表示するこが義務付けられております。ただ、食品用トレーにはこの表示が付けられない場合が多いので発泡スチレンであることを見抜いて自主回収等に協力する必要が有ります。


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