講座集 第2章 資源回収・リサイクルに役立つプラスチックスの知識

(17)紛らわしい呼び方の燃えないゴミ

妻が、プラスチックス製品をゴミ出しする時に、それを「燃えるゴミ」として出していいのかどうかを私に尋ねることがよく有ります。一応、プラスチックスの専門家の私に敬意を表してのことですが、どうしてそのような愚問を発するのか私には当初判りませんでした。いろいろ妻に聞いてみると、以前、市の方からプラスチックス製品は「燃えないゴミ」として排出するように指示されていたと言うのです。

プラスチックスは燃やすと、次のような問題が発生します。

・燃焼時に焼却炉の炉材を損傷。(PE等燃焼カロリー大のもの)
・燃焼時に真っ黒い煤発生。(発泡スチレン等芳香環を持つもの)
・燃焼時に猛毒のダイオキシン発生。(PVC等塩素を含むもの)

そのため、全国の市町村でゴミの分別排出が始まった当初はこのような問題のために、プラスチックスはよく燃えるのに、「燃えないゴミ」の扱いを受けて、世の主婦のみなさんを戸惑わせたため、妻から上述のような愚問が発せられたわけです。「燃やしてはいけないゴミ」と言えば、混乱は避けられたように思います。

ところが、プラスチックスを「燃えないゴミ」にすると、その大半がプラスチックスで占められ、埋め立てようとすると嵩張って効率が悪い等の問題が顕在化しました。そこで焼却炉を改善してプラスチックスを燃やすことが技術的に可能になったことから、プラスチックスを「燃えるゴミ」として扱えるようになりました。ところが、そうするとプラスチックスの廃物は全て燃やされてしまいリサイクルができなくなる恐れが出てきました。そこで、「包装容器リサイクル法」を施行させて、リサイクル表示の付いているプラスチックスは「燃えないゴミ」ではなくて「資源ゴミ」として排出するように消費者に義務付けたわけです。

今後、消費者は次のことを守って廃プラスチックスの正しい処理に協力して頂きたいと思います。

・勝手にプラスチックスを私設の焼却炉等で燃やさない。
・燃やさざるを得ない場合は、PVC、PVDCを除く。
・「燃えるゴミ」「資源ゴミ」を分別して排出すること。

(18)判りやすいプラスチックスの分類と特性

学術的に分類すると判り辛いのでプラスチックスの特性をベースにして分類してみたいと思います。

(1)成形性:
構造用プラスチックスの成形手段として射出成形が利用されますが、この成形特性に優れているのがポリスチレン(PS)、ポリスチレン共重合体(ABS)で、自動車部品、OA、オーディオ部品、電化製品、家庭用品等に幅広く使われております。次いで塩ビ(PVC)が優れ、水道用パイプや波板、サッシュ等の建材等に使用されておりますが、低温で脆弱になる弱点と燃やすとダイオキシンが発生する恐れが有ることから、年々、次に優れているポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)に置き換えられつつあります。コップ、タッパー等の飲食用容器類、洗面器、バケツ、腰掛、洗濯バサミ、ハンガー等の洗面・浴槽・洗濯用品、自動車の外回りの部品、室内競技場等の椅子などに幅広く使用されております。

(2)透明性:
最も透明度に優れているのがポリスチレン(PS)、次いでアクリル樹脂(MMA)、ポリカーボネート(PC)、PET、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)で、フィルム、ボトル、ケース、ディスク等に利用されております。CDやDVDのケースにはPS、ディスクにはPCが利用され、写真・OHPフィルム、磁気テープ、飲料ボトルにはPET、包装・ラッピングフィルムにはPE、PPが利用され、ガラスの代用としてMMAが利用されております。

(3)発泡性:
PSを発泡させた発泡スチレン、発泡ポリウレタンの2種類が利用されております。発泡スチレンは主に、カップ麺に代表される食品包装トレー、トロ箱と運搬時の破損を防ぐためのクッション材が主な用途で、ポリウレタンはクッション材、隙間防止材などに利用されております。

(4)電気絶縁性:

PVCが絶縁テープ、電気機器用の電線被覆、PEがパソコン、電話機等のモジュラーケーブルや海底ケーブルの被覆 に利用されております。

(5)耐食性:
PE、PP、PVCは酸、アルカリ、有機溶剤に対する耐食性に優れるので、化学プラントなどの機器類、配管等に多く使われております。特にテフロン、FEP、テフゼルなどの商品に代表されるフッ素樹脂は耐熱性にも優れておりますので、グラス、琺瑯、ステンレスなどに代わって利用されております。

(6)耐屈曲性:
PPは成形時の樹脂の流れ方向に垂直に折り曲げても容易に切断されない特性、つまり耐屈曲性に優れておりますので、蝶番の無い蓋付きのボックスに利用されます。私は日本で始めてこの箱を試作した経験を持っております。

(7)補強特性:
エポキシ、ポリエステル、フェノールなどの熱硬化性樹脂にグラス、カーボンなどのファイバーを配合することで強度を飛躍的に上げることが出来ます。こうして作られたものを強化オウラスチックス(FRP)と呼んでおります。釣竿、浄化槽、浴槽、ドームの屋根などに利用されております。

(8)繊維特性:
繊維には紡糸、染色が出来ることに加え、強度、耐水性、耐溶剤性、耐候性が要求されます。これらを満たすプラスチックスは、ポリエステル(テトロン等)、ポリアクリロニトリル(ボンネル等)、ポリアミド(ナイロン等)の三大合成繊維で他にポリプロピレン(パイレン等)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、フッ素樹脂(テフロン等)、ポリビニルアルコール(ビニロン等)が特殊用途に使用されます。


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