雑感記 12章 安楽死的死刑について思うこと

昨日、168人が死亡したオクラホマシティーの米連邦ビル爆破事件の実行犯マクベイ死刑囚の死刑が執行されました。
意外だったのは、従来の青酸ガスや電気椅子ではなくて薬物の静脈注射による安楽死的な処刑だったことです。
しかし、1983年から米国で採用されている薬物処刑は今年の2月にオクラホマ州で執行されておりますので、今回がはじめてではありませんが、38年ぶりの連邦政府による死刑執行であり、また被害者の遺族に公開したはじめての安楽死的な死刑だったと言う点でいろいろと問題になっているように思います。。

CNNニュースによれば、薬物注射は3回に分けて行われ3回目に塩化カリウム水溶液が静脈注射されて間もなく 心停止したとのことでした。
この塩化カリウム注射は保健所に引き取られた動物達だけでなく人間の安楽死にも使われることでしばしば物議をかもしており、1991年に東海大学病院で58才の末期ガンの患者に、尊厳死を望む家族の願いを受け入れて注射して安楽死させ裁判になったことや、あのオーム教団が研究していたことでも知られております。
この塩化カリウムは劇・毒物の指定もなく薬局で自由に買えますし、ナトリウムをカリウムに置換して減塩食材の 味噌・醤油、健康ドリンクとして最近話題になっており、血液中にも必要な成分として存在しておりますが過剰に 血液の中に入り込むとナトリウムとのバランスがくずれ心臓を停止させてしまうと言う恐ろしい一面を持ち合わせた不思議な薬物です。

そして、今回の処刑では塩化カリウムは確実に死亡させるための「とどめ」に使われたようです。
同ニュースは1、2回目の注射で死刑囚は苦しむことなく意識不明の状態になったと報じておりますので 多分1回目が麻酔剤、2回目が筋弛緩剤だったと思われます。

そしてこの麻酔剤には全身麻酔によく使われ、オーム教団で自白強制に採用されたことでも知らているチオペンタールナトリウム( 商品名:ラボナール) が採用された可能性が強いようです。
また、筋弛緩剤には今年の1月、仙台市の北稜クリニックで起きた筋弛緩剤殺人・殺人未遂事件で使われた臭化ベクロニウムかまたは同類の臭化パンクロニウムと思われます。
全身麻酔や筋弛緩剤についてはこのHPの「闘病記」で私の体験を通してご紹介しておりますのでご覧頂ければ幸いです。

つまり、最初に麻酔剤を注射して死刑囚の意識をなくして恐怖感を覚えさせないようにしてから、2回目に筋弛緩剤を 注射して心臓以外の臓器の活動を止めて死に至らしめます。
自律神経による肺の呼吸機能が失われることでいずれ死に至るのですが、体質・体力によってはそれまでに時間がかかることが有りますので確実を期すために3回目に塩化カリウムを注射して心停止させ死亡を確認したものと思われます。

ニュースは死刑囚には処刑中苦しんだ様子もなく、どの時点で絶命したのか判らない程の連続的で穏やかな 死亡への経過だったと報じておりますので、まさに至れり付くせりの安楽死的死刑だったように思います。

今回の処刑については被害者の遺族の強い要望が有って、処刑室の窓越しに、また入りきれなかった遺族達 は特別室でのテレビで処刑の様子をリアルタイムで見届けたとのことです。
どんな思いで見届けられたかは判りませんが、本当は苦しむ様子とか表情に表れた死の瞬間を見届けたかったのかも知れません。
また、処刑の公開は見せしめの意味も有りますが、今回はその意味はあまり無いどころか苦しまずに死ねるとの安心感を与えてしまったようにさえ思います。

死刑制度廃止論者や死刑囚の人権への配慮からこのような処刑法が採用されたと思いますが、米国のマスコミで取り上げられた168人の遺族、特に残された幼い遺児たちの姿を見るにつけやり切れない思いに駆られました。

今回処刑されたマクベイ死刑囚は、「連邦ビル爆破は米政府によるセルビアやイラク空爆と、倫理的にも戦略的にも同じで容認できる行為だった」と処刑直前まで堂々主張し全く反省しておりません。
同じ、死刑でも死刑囚の反省の度合によって処刑法を変えたらと、ふとそんなことを思った次第です。
折しも、大阪・池田市での小学生刺殺事件で宅間容疑者が「死刑にして欲しくてやった」と述べたと聞いて益々 その思いが強まりました。

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