年金生活者の確定申告(3)
(年金360万円で6年前まで無税が2年前に9万円に増税された経緯)
年金生活者の確定申告(4)
(年金収入=350±100万円で課税額=5±5万円 給与収入もほぼ同じ)


今日は、昭和13年生まれで、ほぼ標準的な360万円の年金収入で、無収入の被扶養者の奥さんと二人暮らしのAさんを事例にして、平成15年から今年に至るまで、税制の改正でどのようにAさん宅への課税額が変化しているかを検証してみたいと思います。ここで、前提条件は次のとおりです。

・年金収入   =360万円(厚生年金+企業年金)
・社会保険控除額= 50万円(国民健康保険+介護保険)
・生命保険控除額= 5万円(満額)
・損害保険控除額=0.3万円(満額 19年以降1.5万円)
・配偶者控除額 = 38万円(妻=被扶養者=無収入)


昨日までの解説で、被扶養者の奥様と二人暮らしの年金収入360万円の平均的な年金生活者の場合、平成15年以前まで課税額=0だったのに、政府の増税策により、平成18年には実に9.11万円まで増税され、その後は課税率が10%から5%に低減されたことによりほぼ半減して5万円となりました。多分、ここ数年はこの水準が維持されるものと思われます。

そこで上述の条件で、課税額=0になるに年金収入(=X)を算出してみたいと思います。控除額=122.5万円(一定)として、
所得金額=X-120=122.5 より X=122.5+120=242.5(万円)、つまり年金収入242.5万円以下なら課税額=0になることが判ります。

申告
年度
年金
収入
所得
金額
老年
控除
配特
控除

控除
控除
課税
所得
課税
15 360 195 50 38 131.3 219.3 0 0
16 360 195 50 0 131.3 181.3 13.7 1.10
17 360 232.5 0 0 131.3 131.3 101.2 8.10
18 360 232.5 0 0 131.3 131.3 101.2 9.11
19 360 232.5 0 0 132.5 132.5 100.0 5.0
20 360 232.5 0 0 132.5 132.5 100.0 5.0
年金収入 所得金額 控除計 課税所得 課税額
240 120 122.5 0 0
250 130 122.5 7.5 0.375
300 180 122.5 57.5 2.875
350 225 122.5 102.5 5.125
400 262.5 122.5 140.0 7.000
450 304.0 122.5 181.5 9.075
500 346.5 122.5 224.0 12.650


同じ360万円でも、6年前の平成15年では課税額=0だったのに、政府の増税政策により、その3年後の平成18年では、課税額=9.11万円に増額されております。以下、その経緯を解説します。

平成15年まで課税額=0だった理由
上表に示すように、「老年控除=老年者、寡婦、寡夫控除」と「配特控除=配偶者特別控除」の二つの控除で合わせて85万円も控除されていたため、控除額(=219.3万円)が所得金額(=195万円)を上回り、課税額=0となっております。

平成16年に課税額=1.1万円になった理由
「配特控除」がこの年から廃止されたため、控除額が配特控除を僅かに下回ったため。

平成17年に課税額=8.1万円に急増した理由
「配特控除」に続き「老年控除」まで廃止されたため

平成18年に課税額=9.11万円になった理由
年金収入から所得金額への算出式が変わった結果、所得金額が195万円から232.5万円に増え、かつ従来からの定率減税が20%から10%に下がったため8.1万円となるところが9.11万円と前年度より増えた

平成19年に課税額=5.0万円に減額されたた理由
従来の課税率10%が5%に低減されたため、一方で定率減税この年より完全撤廃された。

平成20年の課税額が平成19年と同一の理由
算出条件に変更部分が無かったため


そこで、この条件のもとで、年金収入を250万円から500万円まで変化させた場合の課税額を上表に表わしてみました。奥様の国民保険とご主人の企業年金が加われば年金収入が500万を越えることも有り得ますが、一般的な夫婦二人暮らしの年金生活者の場合は、年金収入=350±100万円 課税額=5±5万円の範囲にあるものと考えられます。 一方、給与生活者についても、給与収入を250万円から500万円まで変化させた場合の課税額を下表に表わしてみました。


給与収入 所得金額 控除計 課税所得 課税額
240 143 122.5 20.5 1.025
250 157 122.5 34.5 1.725
300 192 122.5 69.5> 2.875
350 225 122.5 104.5 5.225
400 266 122.5 143.5 7.125
450 306 122.5 183.5 9.015
500 346 122.5 223.5 12.600


収入から所得額を算出する式の違いで、課税額=0になる限界が年金収入の240万円よりやや低い230万円となりますが、総じて大きな差は有りません。給与収入1,000万の平均的管理職では課税額=100万円、給与収入2,000万円の平均的役員では課税額=280万円、給与収入5,000万の平均的社長で課税額=1500万円 程度となります。年俸5億円野球選手の場合は、その収入の4割弱が課税率となりますので、課税額は2億円近くになるものと考えられます。


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