四川大地震に思うこと(1) (昨年訪れた九賽溝・黄龍の思い出を通して) |
四川大地震に思うこと(2) (中国は世界有数の地震多発国なのに) |
四川省・黄龍の五彩池の美しい石灰棚の風景 (当サイトに掲載予定の「九賽溝・黄龍旅行記」より) |
地質情報機関として世界的に知られている米国の地質調査所(USGS)が世界に先駆けて本日、同所のサイトで同日、中国四川省の省都、成都の92キロ北西の地点を震源とするM7.8の地震が発生したことを公表しました。この時点では日本を始め各国のメディアもこのニュースを大々的にフォローしておりまえんでしたが、その後でこれを裏付けるように、新華社電が同日午後2時28分に四川省東部を震源としてM7.8の地震が発生した影響で北京市内でも揺れが感じられたことが報じられて海外メディアは一斉に大々的に取り上げるようになりました。 |
史上最大の被害を出し中国・唐山地震直後の様子 (人民日報:2006年07月28日の記事より ) |
中国については、誤解されている事実が数多く見受けられるように思います。例えば、「中国は地震の少ない国」との認識もその一つの事例と思います。中国では下の表に示すように、世界最大の被害をもたらした1976年の唐山地震など世界ビッグ10に入る地震が3件も発生している世界有数の地震多発地域ですからこの認識は誤っております。特に、今回の四川大地震が発生した四川省では過去100年間でマグニチュード7以上の大地震が4回も発生しており、中国でも指折りの地震多発地域でもあります。 |
それは、地震の規模がM7.8と大きいこと、震源地から2,000キロ近く離れた北京で揺れが感じられたこと、四川省一帯が地震多発地域でああることから震源地とその周囲では相当の被害が発生していることが想定されたからです。
そして、その想定を裏付けるように新華社電は既に死者が数千人に達することを報道し、世界的な大ニュースとして取り上げられるようになりました。 実は、昨年7月、震源地のブン川県から約200キロ北にある世界遺産・黄龍を観光しました。上の写真は、その折に私が撮影した世にも美しい石灰棚の風景です。この黄龍には成都から、古代の壮大な水利事業として有名な堰が世界遺産に指定されていることで有名な都江堰を経由して長い山道を通っていくのですが、その道が険しくて長距離である上、落石も多いことから2003年9月に九賽溝に空港を開港し重慶や成都から空路で九賽溝に行きここからバスとロープウエーを乗り継いで黄龍に行けるようになりました。この位置関係を下図にて示します。 |
順位 | 発 生 日 | 地 震 名 | 国 名 | M | 死者数(人) |
1 | 1976. 7.28 | 唐山地震 | 中 国 | 7.8 | 242,700 |
2 | 1920.12.16 | 海原地震 | 中 国 | 8.6 | 220,000 |
3 | 1923. 9. 1 | 関東大震災 | 日 本 | 7.9 | 142,000 |
4 | 1908.12.28 | メッシナ地震 | イタリア | 7.1 | 110,000 |
5 | 1927. 5.23 | 古浪地震 | 中 国 | 7.9 | 80,000? |
6 | 1970. 5.31 | ワラス、チンボテ地震 | ペルー | 7.8 | 66,794 |
7 | 1935. 5.30 | クエッタ地震 | パキスタン | 7.6 | 60,000 |
8 | 1990. 6.20 | ギラン・ザンジャン地震 | イラン | 7.7 | 4〜50,000 |
9 | 1939.12.26 | エルジンジャン地震 | トルコ | 8.0 | 32,700 |
10 | 1915. 1.13 | アブェッツァノ地震 | イタリア | 6.9 | 32,610 |
それは、地震の規模がM7.8と大きいこと、震源地から2,000キロ近く離れた北京で揺れが感じられたこと、四川省一帯が地震多発地域でああることから震源地とその周囲では相当の被害が発生していることが想定されたからです。 そして、その想定を裏付けるように新華社電は既に死者が数千人に達することを報道し、世界的な大ニュースとして取り上げられるようになりました。 実は、昨年7月、震源地のブン川県から約200キロ北にある世界遺産・黄龍を観光しました。上の写真は、その折に私が撮影した世にも美しい石灰棚の風景です。この黄龍には成都から、古代の壮大な水利事業として有名な堰が世界遺産に指定されていることで有名な都江堰を経由して長い山道を通っていくのですが、その道が険しくて長距離である上、落石も多いことから2003年9月に九賽溝に空港を開港し重慶や成都から空路で九賽溝に行きここからバスとロープウエーを乗り継いで黄龍に行けるようになりました。この位置関係を下図にて示します。 |
四川大地震の震源地、ブン川とその周辺の地図 |
従って、この空路とロープウエーが無い5年以上前に黄龍に行くのは大変でした。3,000m級の山々を縫うように作られた山岳道路を10時間近くも揺られながらバスで標高3,150mの黄龍の入り口まで辿り着いてから、3,600mの黄龍までの道は板敷き高山病の恐怖に怯えながら歩いていくのは心臓の弱い私には地獄だとの思いから、観光を空路とロープウエーの完成まで控えてきた経緯が有りました。 このツアーには二つのプランが有りました。一つは実際に我々が参加したプランで、重慶から空路、九賽溝空港に飛び九賽溝からバス、ロープウエーで黄龍に行き、九賽溝空港から成都経由で帰路に着くコース、もうひとつは成都から都江堰から左に折れる山道を西に向かって映秀、臥龍、を経て日隆まで行き、途中で時折、バスを降りて四姑娘山(6,150m)を望みながら幻の花ブルーポピーを探すという優雅な旅をしてから再び映秀まで戻り、右に折れる山道を北上して今回の四川大地震の震源地、ブン川を通って松藩経由黄龍まで陸路で行くというコースでした。 旅行社の説明では、空路で一気に3,000mの高度差をクリアーして重慶から九賽溝空港に行くと高山病にかかる恐れが有るためバス移動で長時間かけて3,000mの高度差を徐々にクリアーすれば高山病を防げるのと、四姑娘山、ブルーポピー、臥龍パンダセンターでパンダ見物という楽しみが有るとのことでしたので、このプランに応募しました。ところが、数日後、旅行社から、「映秀、臥龍、を経て日隆に到る山道が落石が多いため落下防止工事を行なうことになったためバスの往復移動にかなりの時間を要するものと思われるがどうされますか?」との連絡が有ったため、このプランから他のもうひとつのプランに変えた経緯が有りました。 今回の地震で四川省の山岳地帯で陸の孤島になった村落が多かったのは、落石対策工事が不充分だったことによるものと思われます。下の写真は九賽溝から黄龍に行く途中、落下防止処置が全く施されないまま山肌が剥き出しになっている光景を垣間見て気になってバスの車窓越しに撮影したものです。大雨や地震で落石が発生する危険が有り、実際に路面に落石が散乱している光景も見ております。今回の地震の被害を大きくしたのは、違法建築やこのような手抜き工事 と考えられ、この点については人災と言っても過言ではないと思います。 |
そこで中国で過去100年間に発生した大地震でマグニチュード7以上、死者1,000人以上の大地震13件を下表にリストアップしてみました。 |
順位 | 発生日 | 地震名 | 省・区 | M | 死者数(人) | 備 考 |
1 | 1976. 7.28 | 唐山地震 | 河北省 | 7.8 | 242,700 | 史上最大 |
2 | 1920.12.16 | 海原地震 | 寧夏 | 8.5 | 22万 | |
3 | 1932.12.25 | - | 甘粛省 | 7.9 | 7万 | |
4 | 1970. 1. 4 | 通海地震 | 雲南省 | 7.6 | 16,000 | |
5 | 1931. 8.11 | 富蘊地震 | 新彊 | 7.8 | 1万 | |
6 | 1927. 5.23 | - | 甘粛省 | 7.9 | 4,000 | 20万人? |
7 | 1966. 3.07 | ?台地震 | 河北省 | 6.8 | 8,100 | |
8 | 1933. 8.25 | - | 四川省 | 7.4 | 6,800 | |
9 | 1939.12.26 | - | 四川省 | 7.3 | 4,800 | |
10 | 1915. 1.13 | 大理地震 | 雲南省 | 7.0 | 3,600 | |
11 | 1973.02.06 | 炉霍地震 | 四川省 | 7.4 | 2,200 | |
12 | 1915. 1.13 | 大関地震 | 四川省 | 7.1 | 1,400 | |
13 | 1975. 2.04 | 海城地震 | 遼寧省 | 7.2 | 1,300 | 予知に成功 |
上表で明らかなように、13件中10件が四川省及び四川省に隣接する省や自治州で発生しており、特に四川省で4回も発生していることが注目されますので、この様子を下図で発生した中国の省・州を赤く塗りつぶすことで識別表示させてみました。 |
(過去100年間で大地震が発生した中国の省・州(赤い部分)) |
上図から、新彊ウイグル自治区から甘粛省、寧夏回族自治区、四川省、雲南省にかけてチベット自治区を取り巻くように地震発生地帯がU字状に連なり、更に四川省、寧夏回族自治区から二つ省を挟んで河北省、遼寧省にかけて西側に地震発生地帯が線状に連なっていることを読み取ることが出来ます。まさに四川省は寧夏回族自治区とともにY字状に分布する中国の地震発生地帯のほぼ中心に在ることが判ります。それでは、何故このような地震地帯が分布するのかを明日の日記で触れてみたいと思います。 |
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