四川大地震に思うこと(3)
(地震をもたら地殻プレートの境界線について)
四川大地震に思うこと(4)
(地震をもたら地殻プレートの境界線について)


世界の地震多発地帯(「The 地震」より引用させて頂きました)

上図は、 東京大学地震研究所の纐纈教授等によって纏められた世界の地震分布図で、中国・四川省を矢印で位置付けしてみましたが、四川省とその周辺地域が地震多発地帯であることが判ります。 ところで、この地震分布は平均的な点分布ではなく部分的な帯状分布を呈しており、その帯は何らかの形の境界に沿っているように思われます。実は、その何らかの形こそが地球上を覆っている岩板(=プレート)と言われるものです。

地球を覆うプレート(「The 地震」より引用させて頂きました)

このプレートは全部で10数枚有り、上図に示すように名前が付けられており、その厚さは100kmにも及びそれぞれ違う方向に動いているためプレートの境界では、プレートが押し合ったり、圧し合ったり、潜り込んだりして活発な地殻活動をしております。この活動によってプレートは歪み、その歪を戻そうとする力が働いて歪エネルギーとして蓄えられていきます。やがてその歪の力がプレートの強さに達するとプレートは破壊され、蓄えられていた歪エネルギーが一気に解放されて振動エネルギーとなってプレートの中をあらゆる方向に伝わっていきます。これが地震の発生メカニズムと言われております。

冒頭の地震分布図の帯状のラインはこのプレートの境界線です。従ってこの境界線に沿って地震が多発しているのは上述の発生メカニズムから当然のこととして理解できます。日本は、この図のように太平洋プレート、ユーラシアプレートに乗っておりその境界線が糸魚川−静岡構造線と呼ばれる断層を形成し、その太平洋プレートは三陸沖で北米プレートと接して日本海溝、フィリピン海プレートと接して伊豆小笠原海溝、そのフィリピン海プレートはユーラシアプレートと接して南海トラフを形成しており、まさに日本とその近辺はプレートの境界だらけになっており、日本が世界一の地震国になるゆえんがここに有ります。

ところで、四川省近辺は上のプレートの分布図から判るように、ユーラシアプレートとインドプレートの境界線の北側に有ります。このインドプレートは数千万年前からユーラシアプレートを圧迫しており、4,000万年前にはユーラシアプレートを押し上げた結果、インド洋の海底があの世界最高峰を擁するヒマラヤ山脈を造っており、現在でも1年間に数cmというスピードで北に動いて中国をはじめとしたユーラシア大陸の大部分が乗ったユーラシアプレートを強く圧迫しております。この影響で四川省近辺の地下では、両プレートの地殻活動が複雑に活動し歪エネルギーが蓄積されやすくなっているものと思われます。いずれ、四川大地震の発生メカニズムについては、中国側から公式発表が出されると思いますので、それを待ちたいと思います。


今日、中国地質調査局は人民日報を通して四川大地震について、インドプレートがアジアプレートの下に潜り込み、チベット高原が急速に隆起したため高原の物質がゆっくり東へ流れ込み、東端の竜門山断層帯に沿って押し出されたものの四川盆地の下の固い断層地塊に遮られ、構造応力エネルギーが長く蓄積し最終的に竜門山北川ー映秀地区で一気に開放され、震源の深さが10〜20キロと浅い上長く続いたため破壊力が大きくなったことが原因との見解を発表しました。

四川大地震の震源域は上図に示すように、ユーラシアプレートとインドプレートという2枚の大陸プレートの衝突の境界付近に在ります。インドプレートは1年間でおよそ5.8cmのスピードで北に動いており、ユーラシアプレートとの衝突はヒマラヤ山脈やチベット高原を隆起させたことでも知られています。ユーラシアプレートに衝突したインドプレートはユーラシアプレートの下に潜り込もうとしますが、ユーラシアプレートに乗っかっているユーラシア大陸があまりにも広大なため容易には潜り込むことができません。

一方、東側には硬い岩盤ブロックが有るためこちらにも進むことができません。その結果余った歪みのエネルギーは,ヒマラヤ山脈の南東で大きく南に回りこんでいます。この力の回り込みに平行、および直交する形で竜門山断層帯が発達し中国内陸部からヒマラヤ山脈東端に掛けての地域に巨大地震が発生し易くなっております。今回の中国地質調査局の発表は、以上の従来の知見を踏襲した形をとっておりますが、根拠となる明確なデータは発表されておりませんので推定の域を出てないようです。

東京大学地震研究所は、地震波形や余震分布などを解析した結果,今回の地震は四川省を北東−南西方向に走る長さ約300kmの巨大な竜門山断層の少なくとも一部が動いたことによるものと推定しております。また筑波大学の八木勇治准教授らは断層が動いたおよそ60秒後に断層の北側で地盤同士が水平にずれており、地震に関連した断層がふたつあった可能性を示唆されております。このような複数の断層がほぼ同時に動いて大規模地震を起こす可能性は,日本でも駿河湾の東海地震と静岡沖の東南海地震、紀伊半島の南海地震で論じられています。

このように、中国と日本には共通する地震発生メカニズムが介在していることから両国がお互いに情報交換して巨大地震発生のメカニズムをより明確化することで地震発生予知に役立たせる必要が有ると思います。従って、日本側が国際救援隊の場合のように中国側に協力を呼びかけ、中国側がこれを受けて日本から調査団が派遣されることを切に願うものです。


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