四川大地震に思うこと(5)
(ヒマラヤ山脈と四川大地震)
四川大地震に思うこと(6)
(世界の地震分布について)


ヒマラヤ山脈の両端が巨大地震の震源地になっている状況の図解

今回の四川大地震とヒマラヤ山脈と関係が有るなど、にわかには信じられませんでしたが、調べていくほどになるほどと思うようになりました。この関係は1960年代後半以降に発展した地球科学の学説「プレート理論」で説明されておりますので、ネット検索で関連サイトを見付けて片っ端から読んでみたのですが、所詮は素人ですから納得するほどに理解することは出来ませんでした。

しかし、そのメカニズムは理解できなくても、何故本来なら平坦でいいはずの地球表面に10,000mを超える日本海溝のような深い溝が海底に在り、8,000mを超えるエベレスト等の高峰を抱くヒマラヤ山脈が大地に聳え立ち、あの大河の黄河がヒマラヤ山脈を敬遠するかのように幾何学模様のを描くように大きく北にコの字型に迂回しているのかなどの疑問が、この理論で見事に説明されるのを知って、「なるほど、なるほど」と頷くばかりでした。

ヒマラヤ山脈がプレート間の衝突により海底が隆起して出来たことを知ったのは、2年前の2006年の2月にネパールに旅行した時でした。旅行前に下調べをしている過程で、鶴がヒマラヤ山脈を苦労して越えていく習性にヒマラヤ山脈の隆起が関係していたことを知ったのがそのきっかけでした。鶴は、インドプレートがユーラシアプレートに潜り込んでヒマラヤ山脈が1年に僅か4mmほど隆起しているのを知らないまま子孫代々にわたって飛び続けていくうちに8,000mを越えられる習性が身に付いてしまったのでした。このことは、2005年10月14日付けの日記「ツルのヒマラヤ越えの謎」で触れております。その日記の最後の方に次のような記述が有ります。

「今回のパキスタンで起こった大地震が、このヒマラヤ山脈隆起の原因となったインド・オーストラリアプレートとユーラシアプレートのせめぎあいでその南麓に沿って生成した帯状に2,000kmも続く世界最大級の活断層によるものと知ってロマン気分は吹き飛んでしまいました。」

今回の四川地震の引き金になった竜門山断層帯を南に延長していくと、この世界最大級の活断層とほぼ直交する形で交わります。あのパキスタン地震も凄い地震と思っていたのですが、まさかその2年後にヒマラヤの北側で今回の四川大地震が起ると誰が予想し得たでしょうか。


(「The 地震」より引用させて頂きました)

上図は世界の地震分布図で、赤点が無いか、有ってもポツリポツリともまばらに有る程度の部分が上の定義による地震の無い地域です。これに該当する地域は、スカンジナビア半島、ロシア西部、アフリカ北部、オーストラリア大陸の大部分、インドシナ−マレー半島、北米大陸の東北部となります。

アジアでは韓国と中東の一部を除いて殆どの国々が地震国であるのに対して、欧州ではポルトガル、スペイン、トルコ、ギリシャ、イタリアを除いて殆どのの国が地震の無い国になっていることは案外知られておりません。また北中南米もカナダ、アメリカ、メキシコ、ペルー、チリなど太平洋に面する国以外の殆どの国、アフリカも東部を除く殆どんどの国がそれぞれ地震の無い国となっております。

エジプトに旅して感じたのは、もしエジプトが地震国だったら、あのピラミッドや王家の谷の絢爛たる王墓、壮大なアブシンベル神殿も地震によって崩壊し現状をとどめていなかっただろうとの思いでした。また、今年北イタリアに旅して思ったのは、北イタリアが地震地域だったら、ピサの斜塔もヴェネチアの街も存在すらしていないとの思いでした。

地震はその国の建築様式にに大きな影響を与えております。地震が有る日本には木造建築、地震の無い欧州には石造建築、地震が無い上、雨が少ないエジプトには日干し煉瓦建築がそのいい例だと思います。法隆寺や東大寺、興国寺などの神社仏閣の主なものは、木材を複雑に組み合わせて強度を保持し、一定の遊びを持たせることで地震の揺れに対して柱や梁が滑ることで倒壊を防いでおります。

日本と同じ、地震国で有りながら中国では、建築に耐震設計の考え方があまり反映されておりません。今回の四川大地震でも、日本のように耐震設計が学校や民家に取り入れられていたら、これだけ多くの人命が失われることは無かった思います。中世ヨーロッパのように鉄骨や鉄筋無しに石を積み重ねるだけで造られた建造物では、日々地震の恐怖に怯えて暮らすしかありません。

中国民族は、万里の長城造営に見られるように、元々て国家100年の計を立てて事を運ぶ民族のはじです。 ただ、このところ近代化を急ぐあまり、目先のことに拘って、将来の国家のあるべき姿が見えてきません。今回の四川大地震を教訓にして、こころ広く悠然と構える本来の中国民族に戻ることをこころから願うものです。


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