インフルエンザってなに?
NHK '04/1/17 放送

山口県の養鶏場(ニワトリを飼って卵を産ませる場所)で、ニワトリが大量に
鳥インフルエンザで死亡しました。被害が広がらないように、山口県庁は、同
じ養鶏場で飼われていたニワトリ全部を処分して、これ以上広がらないように
対策に懸命です。

鳥インフルエンザは、鳥がかかるインフルエンザで、鳥インフルエンザウイルス
によって起きる病気です。ウイルスというのは、1ミリの1万分の1というとっ
ても小さなもので、電子顕微鏡という特別な顕微鏡でないと見えません。
ウイルスは、自分で仲間を増やすことができません。ウイルスは、自分の体につ
いているギザギザ(突起)でニワトリの細胞にとりつき、細胞の中に入り込んで、
とりついた細胞に、自分の仲間のコピーをつくらせるのです。自分の仲間を大量
に増やすと、やがて細胞をこわして、別の細胞にとりつくために散らばっていき
ます。仲間をつくるスピードはとても速く、1個のウイルスが、24時間で100万個
にもなってしまいます。こうやってウイルスに細胞をこわされるため、ニワトリ
は病気になってしまうのです。

日本国内で鳥インフルエンザが発生したのは79年ぶりのことです。最近はまっ
たく発生していなかったのです。では、どうして発生したのでしょうか。
いろいろな考え方があります。ひとつは、外国から渡り鳥によって日本にウイルス
が運ばれてきたのではないかという見方です。

この鳥インフルエンザウイルスは、ほかの鳥にもうつります。また、同じ鳥でも
カモは、このウイルスが体に入っても、病気にはなりません。現在、日本の隣の
韓国で、ニワトリの間でインフルエンザが流行しています。韓国でインフルエンザ
にかかったニワトリの近くにいたカモにウイルスが入り、このカモが日本に飛んで
きて、山口県の養鶏場の近くに来て、ウイルスが、この養鶏場のニワトリに感染し
たのではないか、という可能性が考えられるというわけです。

また、養鶏場に出入りしている人やトラックに付いていたり、ニワトリのエサにつ
いていたりした可能性がある、という専門家もいます。
どうして日本にこのウイルスが来たのかはまだはっきりしていませんが、この鳥
インフルエンザが大きなニュースになるのは、鳥インフルエンザウイルスが、人間
に感染することがあるからです。東南アジアのベトナムでは、鳥インフルエンザに
かかった4人が死亡しています。

そもそも人間の間で広がっているインフルエンザも、もともとは鳥の病気だったも
のが人間にうつり、人間の間で流行するようになったものだと考えられています。
今回の鳥インフルエンザは、ニワトリから人間にうつった例はありますが、人間か
ら人間にうつった例はありません。しかし、人間にうつったウイルスが、万が一、
人間の体の中で、ほかの人間にうつる力を持ってしまったら大変なので、専門家が
心配しているのです。

インフルエンザウイルスは、生き物の細胞の中で大量に自分のコピーをつくります。
このとき、コピーミスが起きることがあります。コピーミスの結果、ほかの動物に
もうつるものになってしまうことがあるのです。

また、鳥から人間にうつるようになるとき、豚が間に入る可能性もあります。
鳥インフルエンザは、豚にもうつります。人間のインフルエンザも、豚に入ります。
両方のウイルスが、豚の体内で交じり合って、別のウイルスが生まれる可能性もあ
ります。以前には、こうして生まれたウイルスがあったと考えられています。

もし、新しいインフルエンザウイルスが生まれると、これまでに人間がかかったこ とがないので、人間の間で広がり始めたら、大勢の犠牲者が出る恐れがあります。 それが心配されるので、大きなニュースになっているのです。 でも、いまのところ、そんなウイルス発見の報告はありません。 また、鳥のインフルエンザが人間にうつる可能性はありますが、ニワトリの肉や卵を 食べて人間がインフルエンザにかかった例はありません。 専門家の人たちは、新しいウイルスが生まれる可能性を監視すると共に、もし発生し たときにどんな対策をとればいいか、準備をしているのです。 鳥インフルエンザも心配ですが、むかしから人間の間で広がっているインフルエンザも、 この冬、流行し始めています。インフルエンザウイルスが持っているギザギザには脂肪 があるので、石鹸で洗えば、ギザギザをとってしまうことができます。ですから、 外から帰ってきたら、石鹸で手を洗ったり、うがいをしたりすることが大切なのです。
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