我が闘病記
第5章 同部屋の人たちのこと:
結局、彼は選手生活を続けることを選んで敢えて手術を受けて成功し美談とされました
が、椎間板ヘルニア手術の問題点がクローズアップされ波紋を投じたのです。
現在は、MRIによる精密検査、人工骨、麻酔技術、顕微鏡等の発達で失敗する確率は
低くなっております。
この報道が契機になったか否かは判りませんが、その後は椎間板ヘルニアの手術を避
ける傾向が整形外科医学界に出て今日に至っているように思います。
病室は10人収容の大部屋で、交通事故で骨折した骨をチタンボルトによる固
定手術を受けた若者二人、頸椎や腰椎の整形手術を受け
た3人の中年男性、椎間板ヘルニアの手術待ちの3人、そして私の計9名が同部屋の
仲間でした。
この手術待ちの4人は術前で自由歩行が出来ることもあって、喫煙コーナー
でお茶を飲んだり、喫煙したりしながら情報交換しているうちに大の仲良しになってしま
いました。
しかし手術によって最悪の場合、誓約書のように車椅子の生活になる危険が有るの
で出来るだけ手術のことは話題にしないようにし看護婦の品定めや自分の趣味の話
をするようにしておりました。
特に、大手電機メーカーの課長さんのKさんの場合は病状が酷かっただけに仲間が心
配のあまりつい口を滑らしてしまうことが有りました。
彼は大のゴルフ好きでハンデイ8のシングルプレーヤーですが、日頃の猛練習が祟っ
て、5個の腰椎のうち2個の椎間板がすり減ってしまったので、これを腰椎の一部を削
り取って得られる円盤に取り替えるという大手術が待っていたのです。
通常の椎間板ヘルニアはこの椎間板がはみ出たり、変形したりするのでこれを元の位置
に戻したり形を整形する程度ですが、彼の場合は代用椎間板を自分の骨から作ると
いう工程が余分に加わるため大手術になるわけです。
その彼の手術日がやってきました。
午後1時から始まった手術は予定の9時を過ぎても終わらず、結局付き添いの奥さんは
病院に寝泊まることになってしまいました。